Delution;Days-電脳の地獄-

柘榴

文字の大きさ
3 / 9

第3話 電脳の地獄『妊婦の刑』Ⅰ

しおりを挟む
「うん? 姫、どうしたのそんな真っ青な顔して」
 夢人……いや、木村は私の顔を覗き込む。 
 こんな麗しいアバターの中身には、あの小太りの醜い男が。
 記憶が蘇る……あの日、校舎裏での悪夢。
「ううん、私もそのツール欲しいなぁーって。夢人君、私のアカウントにもインストールしてくれない?」
「あ、うん」
 夢人が目の前でタッチ操作をすると、すぐに私のアカウントにも不正ツールはインストールされた。
「ありがと。これで……昔の借りも返せるようになった」
 私は、この時すでに決意していた。
 この不正ツールでのチート行為を行い、この3時間の内に奴ら3人に復讐すると。
 この電脳世界でしかできない、残酷な方法で。
「昔?」
「私、昔ね……強姦されたの」
「ぇ……っ」
 木村の顔が露骨に強張った。
 自分に心当たりがあるのだから、当然の反応だ。
「そ、そうなんだ」
 しかし木村は知らないふりをする。
 ここで私の怒りは更に昂ぶった。
「相手は3人で、何時間も何時間も……ずっと。何度も助けてって叫んだ、けれど助けてくれなかった」
「ひ、どいね……姫にそんなことが」
「うん、そいつらの顔は絶対に忘れない。死ぬまで、いや死んでも忘れない。たとえ地獄に落ちてもあいつらだけは……絶対に許せない」
「……っ」
 木村の顔が更に強張る。
 まさかこの電脳世界で、自分が強姦した相手と遭遇するとは考えなかったのだろう。
 だが、これは運命だ。現実では救ってくれなかった神様が、電脳世界では私を救ってくれた。
 ログアウト不能、運営部の停止による無法地帯化、そしてチート能力……すべては神の与えてくれた恵み。
「……ねぇ木村君、私の身体はそんなに綺麗だったかな」
「う、うわああああ」
 私は満面の笑みで木村に詰め寄る。
 木村はその気迫に押され、尻餅をつく。
「ああ、私も自己紹介しなきゃね。私の本当の名は藤ヶ谷 飛鳥。知らないはずないよね? だって、君が強姦した相手だもん」
「ち、ち、違うんだっ……あれは、桐ケ谷が勝手に!」
 木村は土下座のような体制で私にすり寄る。
 この期に及んで、醜い男だ。
「ん? でも君は止めるどころかそれに加わった」
「そういう振りをしないと僕があいつに酷い目に遭わされるんだよ! あれは、あれは演技だったんだ……」
「へぇ……あんな脂ぎった汚い笑顔も、全部演技?」
 私の身体を見て、触ったときの薄汚い笑みは紛れもなく本物だった。
 それは、あの場にいた私が直接肌で感じ取った。
「し、信じて……! 君を傷付けるつもりは無かった……本当に!」
「……この世界って、便利だと思わない?」
「へ……」
 私の突然の発言に木村は言葉を失う。
「だって、この世界で何をしても現実には何の影響も起きないわけで。裏を返せば、この世界なら何をしても良いってことだよね」
「な、なにを考えてるの姫」
「……姫じゃない。私は……私は、藤ヶ谷 飛鳥だ!」
 私は目の木村を容赦なく蹴り飛ばす。
 現実じゃ、足の動かない私にはできない芸当だ。
 そして、私はすぐに不正ツールでチートを起動させ、それをタッチで操作する。
 すると、私の後方から突風の様にナイフが飛んできて木村の手足に次々と突き刺さる。
「がっ……!」
「へー! すごいねこのソフト。レアアイテムも使い放題。チートなんてもんじゃない、これさえあれば何でもできる」
「な……っ、痺れ」
 木村の身体は魚の様に痙攣し、その場に倒れ込む。
「それは麻痺属性の武器。まだ実装前の開発段階みたいだけど……対モンスター用の代物を対人に使えるのはチートのおかげ」
「なにを……する気だ」
 木村は私を睨み付けながら言う。
 アバターのせいか、現実より生意気に見える。
「そんな怖がらないでよ。私も木村君の気持ちになって考えてみたいだけ」
 そう言いながら私は更にメニューを表示させ、追加操作を行う。
「ちょっと手が滑って~、チートが暴走しちゃって木村君が酷い目に遭うの。けど悪く思わないでね、私の本意じゃないの」
 まるっきり木村の発言だ。
 自分はそんなつもりはなかった、仕方なかった、悪くない。
 そんな気持ちを、今ここで確かめてみようじゃないか。
 私が指を鳴らす。それと共に空間が裂け、次々とゲーム内のCPU、つまりクエストに出現するモンスターの一種・ゴブリン達がゾロゾロと出現する。
「な、な、なんだこいつら……CPUのゴブリン?! 何でこんな数?!」
「ごめーん、手が滑って沢山召喚し過ぎちゃったみたい。これから、木村君の相手をしてくれるんだから、数は多い方が良いでしょ?」
「相手……?」
 木村は理解できていなかったようだが、徐々にその顔は色を失っていった。
「このゴブリンはね、両性って設定なの。つまり、オスでもメスある。考えようによっちゃ全員女の子ってことにもなるよ」
 ゴブリン達が身動きの取れない木村の元へと歩み始める。
「っひ! や、やめろ! 近寄らせるな! 今すぐ消せ!」
「こうとも考えられる。オスでもメスでもあるなら……『木村君を孕ませる事』も、『木村君が孕ませる事』も……できるってね」
 私は木村へ笑いかける。
 木村の表情は、死人の様に青かった。
「電脳世界(ここ)でしか味わえない地獄を、ごゆっくり」
「うああああああああああああああああああああ!」
 木村にゴブリン達が群がり始める。
 私は目を背け、テレポートの機能を使ってその場を後にした。
 木村がゴブリンに強姦される様など、見たら嫌でも忘れられないだろう。
 夢にまで出て来られたら、本当に笑えない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ワシの子を産んでくれんか

KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。 「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。 しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。 昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。 ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。 救いのような笑顔と、罪のような温もり。 二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。

処理中です...