ヒビキとクロードの365日

あてきち

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7月

7月13日『盆迎え火』

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クロード「はぁ、お腹がすきました。今日の夕飯は何でしょう……ふむ? 何やら少々煙たいような……?」

 ヒビキ「けほ、けほ。うっかり煙を直に浴びちゃった。けほ、けほ」

クロード「ヒビキ様、家の前で火など焚いて何をなさっているのですか?」

 ヒビキ「あ、クロード。今日7月13日は『盆』の初日だからね。『迎え火』を焚いていたんだよ」

クロード「ぼん? むかえび? 何の記念日ですか?」

 ヒビキ「日本には『お盆』といって、夏のこの頃になると先祖の霊を祀る風習があるんだよ。ご先祖様の霊が年に一度、故郷へ帰ってくるといわれているんだ」

クロード「ほぉ? ヒビキ様の故郷ではそのような信仰があるのですね。ですが、それとこの火と何の関係が?」

 ヒビキ「これは『迎え火』といって、ご先祖様を迎え入れるための目印なんだ。ご先祖様達は子孫が焚いたこの火を目印に故郷へ帰ってくるのさ」

クロード「先祖と子孫の心がひとつに繋がるようで、なかなか風流というか、風情のある風習ですね。ですが、せっかく迎え入れるのですから朝のうちに初めておいた方がよかったのではありませんか?」

 ヒビキ「一応、今日の夕方に火を焚くっていうのが一般的な風習なんだよ」

クロード「……なぜ夕方なのでしょう?」

 ヒビキ「うーん。細かいことは分からないけど、日暮れとか夜の方が幽霊っぽいからじゃない? ほら、『黄昏時』なんていかにもそんな感じだし」

クロード「たそがれどき?」

 ヒビキ「語源は『誰(た)そ、彼は』。夕方薄暗くなり、人の顔の見分けづらくなる時間帯のこと。要するにその辺を歩いている人達とご先祖様の霊の見分けがつけにくくなり始める時間ってことだね。人ごみに紛れてそっと帰れるようになった時間に『迎え火』を焚くようにしている……んじゃないかと、俺は思ってる」

クロード「あくまでヒビキ様の私見ですか?」

 ヒビキ「お盆は明確な起源が分かっていないくらい古くて、はっきりした説明は難しいんだよ。時代の変遷とともに色々と変化してるし。元々お盆は旧暦7月15日に行われる風習だったけど、明治に入って新暦(グレゴリオ暦)が採用されてからは新暦7月15日や8月15日に行われる行事になったりもしてるしね」

クロード「新暦7月15日はともかく、8月15日というのはなぜなのでしょう?」

 ヒビキ「今日『迎え火』をしてるけど、今は8月15日の方がお盆としては一般的になってるね。地域によってお盆を行う時期がずれているんだ」

クロード「地域で時期がずれるのですか?」

 ヒビキ「旧暦と新暦で微妙に季節が合わなくなったことが原因だね。新暦7月15日が農繁期にあたる地域ではお盆をやってる場合じゃなかったんだと思うよ」

クロード「それでお盆の時期を一ヶ月遅らせたのですね」

 ヒビキ「8月13日は『月遅れ盆迎え火』をする日とも言われているから、その認識で合ってるんじゃないかな。さ、説明はこのくらいにして『迎え火』に集中しよう」

クロード「はい。……とはいえ、ここで火を焚くことに意味があるのでしょうか?」

 ヒビキ「どうして?」

クロード「ここはヒビキ様にとっては異世界ですし、私にしてもこの家は特に実家というわけでもありませんので……先祖の霊など来るとは思えないのですが……」

 ヒビキ「……」

クロード「……」





★★★★★
その他の記念日『日本標準時制定記念日』
※1886年7月13日。統計35度を日本標準時と制定した。

 ヒビキ「……まあ、あんまり深く考えるのはやめておこうか」
クロード「……そ、そうですね。こういうのは気持ちが大事ですからね」
  理神「ただいまー! ヒビキ、夕飯よろしくー♪」
 ヒビキ「姉さん!? 何し来たの?」
  理神「一応私、故人だし? 『迎え火』もあるしせっかくだから来ちゃった♪」
 ヒビキ「いや、まあ、間違ってはいない、のかな……?」
  理神「あといくら待ってても全然出番ないから我慢できなくて」
クロード「本題はそっちっぽいですね……」


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