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第3話
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「っ!」
マレリアの薄布を取った下から現れた美貌、それを目にして聖マリフィナ王国国王、サーダン・マリフィナは言葉を失った。
それは国王であるサーダンでさえ、初めて目にするような美しさで、マレリアが美しいことなどありないと思い込んでいたサーダンは驚愕を隠すことができなかった。
何せサーダンは聖マリフィナ王国内の、聖マリフィナ王国の人間は優遇種であるという選民思想を色濃く受け継いだ国王だったのだから。
……けれども、マレリアの美貌を目にした時、サーダンはその選民思想のせいで彼女を醜女だと思い込んでいたそとを酷く後悔することとなった。
今までサーダンは政務は全て宰相であるマーゼブルに任せ、愛人と遊びながら暮らしてきた。
けれども目の前のマレリアはその愛人など足元にも及ばないような、そんな美貌を誇ってきたのだ。
好色で知られるサーダンはこの美人、それも自分の妻である人間をこの時まで放置していたことに後悔を抱いたのだ。
けれども、その後悔とともにサーダンの胸にはこれからへの生活への期待も感じていた。
たしかに今までこれだけの美女に気づかなかった自分の不手際はどれだけ後悔してもしたりない。
けれども、彼女は自分の妻で今からでも手遅れではないのだ。
そう考え、サーダンは未来に待つ薔薇色の生活を想像してその口元にいやらしい笑みを浮かべる。
もう、サーダンの頭には聖マリフィナ王国の危機なんて無かった。
ただ、マレリアとともに過ごすこれからのことだけをサーダンは考えていて。
「御託はいいのでさっさと離縁してください旦那様」
「………え?」
………次の瞬間、サーダンの未来予想はがらがらと音を立てて崩れていった。
◇◆◇
「ま、待ってくれ!」
マレリアの言葉に一瞬硬直したサーダン。
けれどもすぐに彼はマレリアを引き留めようとするかのように口を開いた。
「何が不満なのだ!」
「全てですが」
「今からは聖マリフィナ王国で夢のような暮らしができるぞ!」
「セルシフォアには遠く及ばない程度で私を引き止めようと」
「くっ!」
……けれども、サーダンの説得はどれもこれも失敗に終わる。
しかし、それは当たり前の結果だった。
何せ今まで聖マリフィナ王国の人間はマレリアを冷遇してきたのだ。
今更対応を変えると言われたところで頷くわけがない。
………けれども、何故かここでサーダンはマレリアは何か望みがあるに違いないと思い込んでいた。
たしかに聖マリフィナ王国はセルシフォアの経済力に少し劣るかもしれない。
けれども、サーダンは聖マリフィナ王国はセルシフォアとは比べものにならない選ばれた国で、だからこそマレリアが本気で嫌がっていると思えなかったのだ。
……実際は経済力は天と地ほどの差がある上、選民思想で凝り固まった聖マリフィナ王国はセルシフォアどころか、他の小国と比べても有数の居心地の悪い国だったりするのだが。
「そうか!」
しかしそんなこと考えもしないサーダンは無駄に思考を迷走させ、架空のマレリアの望みを作り出す。
それはもしかしたらマレリアは自分の寵愛を受けたいがゆえに、ここまでの騒ぎを起こしたのではないかという妄想。
もう一度言う。それはただの妄想だ。
「それなら、私がお前のそばにいてや……」
……けれども、現実と妄想の区別がつかなくなったサーダンは迷うことなく、マレリアに笑いかけ、愛を囁き出し。
「ぐぇっ」
「気持ちが悪い」
……次の瞬間、嫌悪感を隠そうともしないマレリアの拳がサーダンの意識を奪った。
マレリアの薄布を取った下から現れた美貌、それを目にして聖マリフィナ王国国王、サーダン・マリフィナは言葉を失った。
それは国王であるサーダンでさえ、初めて目にするような美しさで、マレリアが美しいことなどありないと思い込んでいたサーダンは驚愕を隠すことができなかった。
何せサーダンは聖マリフィナ王国内の、聖マリフィナ王国の人間は優遇種であるという選民思想を色濃く受け継いだ国王だったのだから。
……けれども、マレリアの美貌を目にした時、サーダンはその選民思想のせいで彼女を醜女だと思い込んでいたそとを酷く後悔することとなった。
今までサーダンは政務は全て宰相であるマーゼブルに任せ、愛人と遊びながら暮らしてきた。
けれども目の前のマレリアはその愛人など足元にも及ばないような、そんな美貌を誇ってきたのだ。
好色で知られるサーダンはこの美人、それも自分の妻である人間をこの時まで放置していたことに後悔を抱いたのだ。
けれども、その後悔とともにサーダンの胸にはこれからへの生活への期待も感じていた。
たしかに今までこれだけの美女に気づかなかった自分の不手際はどれだけ後悔してもしたりない。
けれども、彼女は自分の妻で今からでも手遅れではないのだ。
そう考え、サーダンは未来に待つ薔薇色の生活を想像してその口元にいやらしい笑みを浮かべる。
もう、サーダンの頭には聖マリフィナ王国の危機なんて無かった。
ただ、マレリアとともに過ごすこれからのことだけをサーダンは考えていて。
「御託はいいのでさっさと離縁してください旦那様」
「………え?」
………次の瞬間、サーダンの未来予想はがらがらと音を立てて崩れていった。
◇◆◇
「ま、待ってくれ!」
マレリアの言葉に一瞬硬直したサーダン。
けれどもすぐに彼はマレリアを引き留めようとするかのように口を開いた。
「何が不満なのだ!」
「全てですが」
「今からは聖マリフィナ王国で夢のような暮らしができるぞ!」
「セルシフォアには遠く及ばない程度で私を引き止めようと」
「くっ!」
……けれども、サーダンの説得はどれもこれも失敗に終わる。
しかし、それは当たり前の結果だった。
何せ今まで聖マリフィナ王国の人間はマレリアを冷遇してきたのだ。
今更対応を変えると言われたところで頷くわけがない。
………けれども、何故かここでサーダンはマレリアは何か望みがあるに違いないと思い込んでいた。
たしかに聖マリフィナ王国はセルシフォアの経済力に少し劣るかもしれない。
けれども、サーダンは聖マリフィナ王国はセルシフォアとは比べものにならない選ばれた国で、だからこそマレリアが本気で嫌がっていると思えなかったのだ。
……実際は経済力は天と地ほどの差がある上、選民思想で凝り固まった聖マリフィナ王国はセルシフォアどころか、他の小国と比べても有数の居心地の悪い国だったりするのだが。
「そうか!」
しかしそんなこと考えもしないサーダンは無駄に思考を迷走させ、架空のマレリアの望みを作り出す。
それはもしかしたらマレリアは自分の寵愛を受けたいがゆえに、ここまでの騒ぎを起こしたのではないかという妄想。
もう一度言う。それはただの妄想だ。
「それなら、私がお前のそばにいてや……」
……けれども、現実と妄想の区別がつかなくなったサーダンは迷うことなく、マレリアに笑いかけ、愛を囁き出し。
「ぐぇっ」
「気持ちが悪い」
……次の瞬間、嫌悪感を隠そうともしないマレリアの拳がサーダンの意識を奪った。
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