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察するマリア (マリア視点)

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「常識? 一番それから遠い方が一体なにを言われているんですか?」

「いや、そんなこと……」

「黙っていてください。執事服を身につけた状態で、なにを言っても説得力はないです」

 私の言葉に、アルフォード様が言葉を失う。
 そんなアルフォード様を睨みつける私の頭には、もはや相手が王子と言うことも頭から消え去っていた。
 ただ、怒りのこもった目でアルフォード様を睨みつける。
 そんな私の視線に耐えかねたように、アルフォード様は頭を下げた。

「悪かった。謝るから、その目は止めてくれ……」

「発言に気をつけてくださいね」

「……一応言っておくが、俺は王子なんだが」

 アルフォード様は、ぼそりとそう言葉を漏らす。
 しかし、私がじろりと目を向けると、あからさまに目をそらしてしまう。
 そんな姿を見ながら、私は思わずには居られない。
 このやさしすぎる態度がなければ、もう少しサーシャリア様とも距離を詰められたかも知れないもに、と。

 決して、そのアルフォード様の優しさは欠点ではない。
 むしろ、使用人さえ尊重するその姿に、理想の王子様だと色めき立つ侍女達も、私は知っている。
 実際に、私も少し前まではアルフォード様のことを理想的な人だと思っていた。

 ……けれど、こうしてサーシャリア様に使えるようになり、その優しさも裏目に出ることを私は知った。

 今、アルフォード様がサーシャリア様にアピールをかける気がないのも、一重に優しさなのだろう。
 だが、サーシャリア様の内心をしる私からすると、それはあまりにももどかしかった。
 なんとか、できないものかと考え……ふと私が違和感に気づいたのはその瞬間だった。

「あれ? 恋愛的に意識してもらう気がないなら、なぜあんなことをしたんです?」

「あんなこと?」

「サーシャリア様に、果物を食べさせたりしていることですよ」

 そう、それは明らかに友人としては度の越えた行動だった。
 事実、サーシャリア様は明らかにその行為を意識している。
 そして、王族として生きてきたアルフォード様が、貴族のその決まりを知らぬ訳がないのだ。

「……ああ、普通はなそうだよな」

「分かっているならどうして……て、どういたしましたか?」

 アルフォード様の表情から、生気が抜け落ちていったのは、そう私が話す最中だった。
 思わぬ反応に動揺する私に、ほの暗い表情のままアルフォード様は告げる。

「……学生時代、ことあるごとにサーシャリアにそうやってアピールしていたんだが、全部無視された」

「え?」

 思わず呆然とした声を上げる私に、アルフォード様は顔を覆って告げる。

「それどころか、俺の気持ちにさえ気づいてくれなかった」

「あ……」

 私が、アルフォード様の暴走のきっかけをほのかに察したのは、その瞬間だった。
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