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滞る捜索 (伯爵家当主視点)
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第三王子の去っていた姿、それを見て私は思う。
本当にこれでよかったのかと……しかし、すぐに私は愚問だとその考えを頭から振り払った。
なんとか辺境泊にすがりついても、今までのような権限を握られる訳ではないことは分かり切っていた。
だとしたら、一番の理想はサーシャリアに新しく商売を行わせることだ。
そうすればサーシャリアの人脈を使えるし、不正をしたところで誰もとがめる者はいない。
そう考えつつ、私の胸によぎるのは安堵だった。
それから目をそらすように、私は笑う。
「あんな逃げ出した娘も思いやるとは、私も心が広いな! まあ、辺境泊の娘になっても、待っているのは精々次期当主の妾だろうし、サーシャリアも感謝することだろう!」
けれど、それでも胸中に浮かんだ思いは消えることはなかった。
……すなわち、サーシャリアが辺境泊に取られていたら、伯爵家は終わっていたかという思いが。
これではまるで、第三王子の言っているように、私がサーシャリアを頼りにしてるようではないか。
そこまで考え、私は首を振って思考を振り払った。
今はそんなことを考えている暇はないと、そう思いなおして。
「まあ、あいつが多少有能なのは確かだし、早く見つけないとな!」
見つかりさえすれば、後はどうとでもなる。
その思いを胸に、私は侍女に命じた。
「早くサーシャリアを見つけてこい! 金に糸目はつけん!」
……けれど、それから数日してもサーシャリアが見つかることはなかった。
◇◇◇
「……くそ、くそ! どうして見つからない!」
どうしようもない怒りをぶつけるように、私は机をたたきつける。
そんな部屋の中、妻が駆け込んでくる。
「あ、貴方! アメリアはまだ見つからないの!?」
その言葉に、私は思わず舌打ちしそうになる。
実は、第三王子がきた翌日、アメリアも屋敷から姿を消したのだ。
……危機を察知して逃げたのかと、わめきたくなったことも記憶に新しい。
なにせ、サーシャリアを探す金がつきてきたところだったので、いい婚姻にでも出そうと思っていたところの逃亡だったのだから。
とはいえ、その行方を探す気は私には微塵もなかった。
「うるさい! 今の私は忙しいんだ!」
「アメリアを婚約にやろうとしていたからじゃないの!」
「娘をどうしようが、私の勝手だろうが!」
思わずかっときて、私はそう叫ぶ。
部屋の扉がノックされたのは、そんな喧嘩をしていたときだった。
「旦那様、アルフォード様がまたいっらしゃいました」
本当にこれでよかったのかと……しかし、すぐに私は愚問だとその考えを頭から振り払った。
なんとか辺境泊にすがりついても、今までのような権限を握られる訳ではないことは分かり切っていた。
だとしたら、一番の理想はサーシャリアに新しく商売を行わせることだ。
そうすればサーシャリアの人脈を使えるし、不正をしたところで誰もとがめる者はいない。
そう考えつつ、私の胸によぎるのは安堵だった。
それから目をそらすように、私は笑う。
「あんな逃げ出した娘も思いやるとは、私も心が広いな! まあ、辺境泊の娘になっても、待っているのは精々次期当主の妾だろうし、サーシャリアも感謝することだろう!」
けれど、それでも胸中に浮かんだ思いは消えることはなかった。
……すなわち、サーシャリアが辺境泊に取られていたら、伯爵家は終わっていたかという思いが。
これではまるで、第三王子の言っているように、私がサーシャリアを頼りにしてるようではないか。
そこまで考え、私は首を振って思考を振り払った。
今はそんなことを考えている暇はないと、そう思いなおして。
「まあ、あいつが多少有能なのは確かだし、早く見つけないとな!」
見つかりさえすれば、後はどうとでもなる。
その思いを胸に、私は侍女に命じた。
「早くサーシャリアを見つけてこい! 金に糸目はつけん!」
……けれど、それから数日してもサーシャリアが見つかることはなかった。
◇◇◇
「……くそ、くそ! どうして見つからない!」
どうしようもない怒りをぶつけるように、私は机をたたきつける。
そんな部屋の中、妻が駆け込んでくる。
「あ、貴方! アメリアはまだ見つからないの!?」
その言葉に、私は思わず舌打ちしそうになる。
実は、第三王子がきた翌日、アメリアも屋敷から姿を消したのだ。
……危機を察知して逃げたのかと、わめきたくなったことも記憶に新しい。
なにせ、サーシャリアを探す金がつきてきたところだったので、いい婚姻にでも出そうと思っていたところの逃亡だったのだから。
とはいえ、その行方を探す気は私には微塵もなかった。
「うるさい! 今の私は忙しいんだ!」
「アメリアを婚約にやろうとしていたからじゃないの!」
「娘をどうしようが、私の勝手だろうが!」
思わずかっときて、私はそう叫ぶ。
部屋の扉がノックされたのは、そんな喧嘩をしていたときだった。
「旦那様、アルフォード様がまたいっらしゃいました」
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