6 / 24
空を覆うのは
しおりを挟む
空を覆い尽くすほどのその数、それは一体どれだけか。
数十や数百ではあり得ない。
……少なくとも、数千や万に届く数の魔妖精が、今上空に存在している。
「なっ! 何が、起きてる?」
それを理解し、私は惚けた声をあげることしかできなかった。
だが、一体誰がそのことを責められようか。
数十の魔妖精が集まっただけで王国史に残るような事件が起きている。
それだけの数で、通常の魔術師は魔妖精をコントロールできなくなるのだ。
それを知るが故に、私は目の前の光景を信じることができなかった。
突然上を見て固まった私に、カシュアもまた異常に気づく。
「カイザード様、一体どう……っ! なに、これ!?」
その声に、私は何も答えられない。
私もまた、何が起きているのかなどわからないのだから。
「……何だこれ!」
「もしかしてこれ全部……!」
けれど、次々に気づいていく広場の人間の声を聞きながら、私は気づいていた。
──この原因として思い至るのは、一人しかいないことを。
その、[声]が聞こえたのは、そのときだった。
[ねえ、こっちみてるよ]
[ほんとだ]
[聖女様を追い出した奴らがこっちをみてる]
脳内に直接響くような、幼児のもののような可愛い声。
それの声の主として考えれるのが魔妖精しかないと理解しながら、私はこの現状を信じることができなかった。
[ねえ、どうする?]
[こらしめてやろうか?]
「……っ!」
しかし、不意に響いた恐ろしい言葉に私は現実から目を逸らす暇さえないことを理解した。
空を覆い尽くす魔妖精、その全てが力を発揮したらその被害は想像もできない。
……最悪、この王国が崩壊してもおかしくないだろう。
絶対に避けなくてはならない、そう思いに顔を青ざめさせながらも私にできることなどあるわけがなかった。
一体の魔妖精が声を発したのは、そのときだった。
[だめだよ、聖女様がだめだっていってた]
[えー、でも]
[怒られてもしらないよ]
[うー、わかったよー]
その時になれば私も理解できていた。
意味が分からなかったマレシアが去る前に残した言葉。
それは、この魔妖精へと向けられていたのだと。
そう理解しながらも私は、たしなめられ、魔妖精が意見を変える様子を信じられない思いで見ていた。
まさか、マレシアは本当にこの魔妖精達と心を通わせているのかと。
そんな私の内心など知る由もなく、さらに魔妖精達は騒ぎ出す。
[それじゃ、いこっか]
[うん、ここじゃないどこか]
[聖女様のところに]
空を覆い尽くす黒い何かが、急速に動き出したのはその瞬間だった。
「くっ!」
「きゃっ!」
今までとは比較にならない突風が吹き、私は思わず顔を手でかばう。
永遠にも感じられるその突風の中、私は声が聞こえた気がした。
[そういえば、もう聖女様ではないんじゃないの?]
[あれ、そっか? でも、いいんじゃない?]
徐々にその声も遠ざかっていく。
[僕たちにとって、あの人こそが聖女様なんだから]
そしてその声を最後に、風は嘘の様に消えた……。
数十や数百ではあり得ない。
……少なくとも、数千や万に届く数の魔妖精が、今上空に存在している。
「なっ! 何が、起きてる?」
それを理解し、私は惚けた声をあげることしかできなかった。
だが、一体誰がそのことを責められようか。
数十の魔妖精が集まっただけで王国史に残るような事件が起きている。
それだけの数で、通常の魔術師は魔妖精をコントロールできなくなるのだ。
それを知るが故に、私は目の前の光景を信じることができなかった。
突然上を見て固まった私に、カシュアもまた異常に気づく。
「カイザード様、一体どう……っ! なに、これ!?」
その声に、私は何も答えられない。
私もまた、何が起きているのかなどわからないのだから。
「……何だこれ!」
「もしかしてこれ全部……!」
けれど、次々に気づいていく広場の人間の声を聞きながら、私は気づいていた。
──この原因として思い至るのは、一人しかいないことを。
その、[声]が聞こえたのは、そのときだった。
[ねえ、こっちみてるよ]
[ほんとだ]
[聖女様を追い出した奴らがこっちをみてる]
脳内に直接響くような、幼児のもののような可愛い声。
それの声の主として考えれるのが魔妖精しかないと理解しながら、私はこの現状を信じることができなかった。
[ねえ、どうする?]
[こらしめてやろうか?]
「……っ!」
しかし、不意に響いた恐ろしい言葉に私は現実から目を逸らす暇さえないことを理解した。
空を覆い尽くす魔妖精、その全てが力を発揮したらその被害は想像もできない。
……最悪、この王国が崩壊してもおかしくないだろう。
絶対に避けなくてはならない、そう思いに顔を青ざめさせながらも私にできることなどあるわけがなかった。
一体の魔妖精が声を発したのは、そのときだった。
[だめだよ、聖女様がだめだっていってた]
[えー、でも]
[怒られてもしらないよ]
[うー、わかったよー]
その時になれば私も理解できていた。
意味が分からなかったマレシアが去る前に残した言葉。
それは、この魔妖精へと向けられていたのだと。
そう理解しながらも私は、たしなめられ、魔妖精が意見を変える様子を信じられない思いで見ていた。
まさか、マレシアは本当にこの魔妖精達と心を通わせているのかと。
そんな私の内心など知る由もなく、さらに魔妖精達は騒ぎ出す。
[それじゃ、いこっか]
[うん、ここじゃないどこか]
[聖女様のところに]
空を覆い尽くす黒い何かが、急速に動き出したのはその瞬間だった。
「くっ!」
「きゃっ!」
今までとは比較にならない突風が吹き、私は思わず顔を手でかばう。
永遠にも感じられるその突風の中、私は声が聞こえた気がした。
[そういえば、もう聖女様ではないんじゃないの?]
[あれ、そっか? でも、いいんじゃない?]
徐々にその声も遠ざかっていく。
[僕たちにとって、あの人こそが聖女様なんだから]
そしてその声を最後に、風は嘘の様に消えた……。
332
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
婚約破棄をされ、谷に落ちた女は聖獣の血を引く
基本二度寝
恋愛
「不憫に思って平民のお前を召し上げてやったのにな!」
王太子は女を突き飛ばした。
「その恩も忘れて、お前は何をした!」
突き飛ばされた女を、王太子の護衛の男が走り寄り支える。
その姿に王太子は更に苛立った。
「貴様との婚約は破棄する!私に魅了の力を使って城に召し上げさせたこと、私と婚約させたこと、貴様の好き勝手になどさせるか!」
「ソル…?」
「平民がっ馴れ馴れしく私の愛称を呼ぶなっ!」
王太子の怒声にはらはらと女は涙をこぼした。
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。
契約破棄された聖女は帰りますけど
基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」
「…かしこまりました」
王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。
では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。
「…何故理由を聞かない」
※短編(勢い)
魅了から覚めた王太子は婚約者に婚約破棄を突きつける
基本二度寝
恋愛
聖女の力を体現させた男爵令嬢は、国への報告のため、教会の神官と共に王太子殿下と面会した。
「王太子殿下。お初にお目にかかります」
聖女の肩書を得た男爵令嬢には、対面した王太子が魅了魔法にかかっていることを瞬時に見抜いた。
「魅了だって?王族が…?ありえないよ」
男爵令嬢の言葉に取り合わない王太子の目を覚まさせようと、聖魔法で魅了魔法の解術を試みた。
聖女の魔法は正しく行使され、王太子の顔はみるみる怒りの様相に変わっていく。
王太子は婚約者の公爵令嬢を愛していた。
その愛情が、波々注いだカップをひっくり返したように急に空っぽになった。
いや、愛情が消えたというよりも、憎悪が生まれた。
「あの女…っ王族に魅了魔法を!」
「魅了は解けましたか?」
「ああ。感謝する」
王太子はすぐに行動にうつした。
素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる