生贄令嬢は竜神に溺愛される

影茸

文字の大きさ
25 / 36

第24話 変わった人間(アルフォート目線)

しおりを挟む
 助けたはずの拒絶されてからずっと、私はこの家に閉じこもっていた。
 自分は誰にも受け入れられない悪魔だから。
 ここに閉じこもっておけば孤独でも、少なくても人に拒絶されることはないから。

 だから私はレシアスが魔境に迷い込んだのを見つけた時も深く関わる気なんて無かった。
 ……そう、彼女が国王が告げていた私への花嫁であることを悟りながらも。
 深く関わっても最後に待っているのは拒絶なのだ。
 この力を見て、私を恐れ無かった人間はいない。
 けれども何故かレシアスはこの家に残ることを望んだ。
 何故レシアスがそんなことを望んだのか私にはわからない。
 何せここは私という存在を抜きにしてもおぞましい魔境の中に建てられた家なのだ。
 普通の人間ならばこんな場所に残ることをよしとはしない。
 だから私は突っぱねていればレシアスもいつのまにか根を上げるだろうと思っていた。

 だが、何故かレシアスは頑として諦めようとはしなかった。

 そしてそのレシアスの姿に何故か私は彼女を家に置くことに決めていた。
 レシアスの態度を見て、彼女を追い出すことが出来なかったのだ。

 ……けれども、少しして僕はその自分の決断を後悔することになった。

 私は敢えてレシアスに好印象を植え付けないように振舞っていた。
 過ごす時間は必要最小限にして、敢えてレシアスの行動に反応しなかった。
 ……けれどもそんな私の試みはあまりうまくかなかった。
 何せ初日の掃除の際に既に私はぼろを出してしまったのだ。
 レシアスの掃除の後、家は見違えたように綺麗になっていた。
 そしてその家を見て私は無反応を装うことが出来なかったのだ。
 けれどもレシアスに心を許してはならない、と私はそう自分を戒めて、けれどもそれは無理だった。

 レシアス、彼女はあまりにも魅力的な少女だったのだから。

 レシアスは酷く心優しく、そして気遣いのできる少女だった。
 もちろん、私が竜神であることに気づいていないからなのだろうが、それでもそのレシアスの態度に私はどんどんと彼女の存在に心を許していった。
 今まで一人で孤独に過ごしていた私にとって、レシアスと過ごすひと時ははあまりにも甘美なものだった。
 決して私はレシアスに恋愛感情を抱いたわけでもなかった。
 けれどもレシアスは厄介な人間から、私にとってかけがえのない存在へと変わっていった。

 ……レシアスも私が竜神だと知ったら離れていくことを知りながらも。

 そんな自分に私は危うさを感じていた。
 この先未来レシアスは私の正体に気づいて私を拒絶する。
 そしてそうなれば私は立ち直れるのだろうかと。
 だから私は強引に彼女を家に送り返そうとした。
 突然呼び出し、家に帰るように言いつけた。

 ……そして、その私の言葉に反発してくれたレシアスの姿に黙ったままでいるのが耐えきれなくなって、私は言わないと決めていたはずの自分の正体を語った。

 その時、私はレシアスに自分の正体を語りながら、自分をあざ笑っていた。
 最後まで隠し通せたら、レシアスは少しくらい私のことを良く思ってくれていたかもしれないのに、何をしているのだろうと。
 そして私は、最悪の悪魔だと、今まで親切にしてくれたレシアスが自分に怯えた視線を上げるだろうとそう思っていた。

 「本当にありがとうございます!」

 ーーー けれども、その時彼女が口にしたのはそんな、感謝の言葉だった。

 そして、その時私は初めて自分が人に認められたことを悟った……






 ◇◆◇





 

 「……本当にレシアス嬢は物好きだな。こんな悪魔に感謝するとは」

 レシアスの感謝の言葉を思い出した私は呆れたようにそう漏らした。
 ……けれども、口調に反して私の口元は緩みは隠しきれていなかった。
 今まで私はレシアスを追い出そう何て考えていたが、けれども今私はそんなこと一切考えていなかった。
 それよりも、今は頼み込んでこの位にいて欲しいくらいで……

 「……今から頼み込むか」

 私は気づけばそう呟いて歩き出していた。
 今はもう深夜で、そんな時間から女性の部屋に尋ねるなど普通に考えれば非常識極まり無い行動だ。
 けれども今の私はどうしてもこらえることが出来なかった。
 どうしようもなく胸が踊り、レシアスと共にこの家に入れると考えるだけで口元が緩む。

 「ぅぁっ!」

 「ーーーっ!」

 ……けれどもレシアスの部屋から響いた呻き声らしき音に私の顔から笑みは消えた。

 「レシアス嬢!」

 次の瞬間、私は扉を開き彼女の部屋に飛び込んでいた……
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな

みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」 タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

処理中です...