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第23話 アルフォート(アルフォート目線)
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「ありがとう、か」
レシアスが後にし、一人になった部屋の中私、アルフォートはそう呟き、自分の手へと目を下ろした。
自身の手を目に入れた瞬間、頭にかつての光景が蘇った………
◇◆◇
それは魔境の氾濫と呼ばれた最悪の災害。
今ではもう過去のものとなってしまったせいで知られていないが、あれは下手すれば国どころか大陸中が魔境に変わったかもしれない危機だった。
魔境以外にも魔獣は存在する。
けれども、魔境の魔獣は外の魔獣とは違うものだと区別されている。
そう、それほどまでに魔境の魔獣は強力なのだ。
だから魔境の氾濫の時、人々は絶望して……
ーーー そして私は希望を抱いた。
魔境の氾濫が起きた時私は未だ10歳にも満たない少年だった。
……けれどもその時すでに私はこの忌々しい力に目覚めていた。
人々は私を見て悪魔と恐れた。
その度に私は傷つき、そして魔境の氾濫で活躍すれば悪魔から英雄になれるのではないかなんて淡い希望を抱いたのだ。
だからこそ、私は特権身分の子供でありながら強制的に戦場に出されてもなんの文句を言わなかった。
………けれどもそんな未来が私に訪れることなんてあるはずがなかったことにその時私は気づいていなかった。
私が魔境の氾濫の際、押し寄せる魔獣を先頭で迎え撃つように言われた。
それは未だ子供だった私にはあまりにも酷な要求だった。
確かに尋常ならざる力をその時からすでに私は有していた。
けれども、だからといって魔獣が恐ろしくないわけではないのだ。
しかも魔獣の数は兵士たちよりも遥かに多い。
そんな状況で、私が恐怖を抱かないわけがなかった。
けれども私は必死にその恐怖を押さえ込んだ。
こんな先頭に配属されたのは今まで恐れられてきた自分が期待されていたからだと、そう思って周囲の兵士達が逃げ出す中、必死にその場に留まった。
……けれどもその時の私は気づかなかった。
自分は戦力として有用だから先頭に配置されているわけでハイことに。
本当に重要視されているのならばこんな先頭で使い潰すように扱われることなんて無いのだ。
そう、つまり先頭に配置された理由、それは私の思っていたものとは違ったのだ。
……いや、それどころか逆だったといってもいい。
何せ私が先頭に配置された理由、それはこの魔境の氾濫で殺すためだったのだから。
そう、私はこんな未曾有の危機においても周囲の人間から疎まれていたのだ。
何せ魔境から溢れ出てくる魔獣よりも優先して殺そうとされたくらいなのだから。
「な、何で生きているんだよ、悪魔!」
……そしてその事実に私が気づいたのは無我夢中で魔獣を殺し続けた後、助けたはずの兵士にそう言われた時だった。
その時になってようやく私は気づいた。
私は人から愛を求めてはならない人間だったということを。
いや、私は人とは相慣れない悪魔であったことを。
だから私は魔境の奥深くに魔境の氾濫を未然に防ぐという言い訳で引きこもった。
それからは酷く孤独な日々だった。
けれども、耐えるほかなかった。
何故なら人に期待して裏切られた時の方が孤独よりももっと傷つくものだったから。
「本当にありがとうございます!」
けれども、その私の孤独は突然家に居候を始めた一人の少女によって、崩れ去ることになった……
レシアスが後にし、一人になった部屋の中私、アルフォートはそう呟き、自分の手へと目を下ろした。
自身の手を目に入れた瞬間、頭にかつての光景が蘇った………
◇◆◇
それは魔境の氾濫と呼ばれた最悪の災害。
今ではもう過去のものとなってしまったせいで知られていないが、あれは下手すれば国どころか大陸中が魔境に変わったかもしれない危機だった。
魔境以外にも魔獣は存在する。
けれども、魔境の魔獣は外の魔獣とは違うものだと区別されている。
そう、それほどまでに魔境の魔獣は強力なのだ。
だから魔境の氾濫の時、人々は絶望して……
ーーー そして私は希望を抱いた。
魔境の氾濫が起きた時私は未だ10歳にも満たない少年だった。
……けれどもその時すでに私はこの忌々しい力に目覚めていた。
人々は私を見て悪魔と恐れた。
その度に私は傷つき、そして魔境の氾濫で活躍すれば悪魔から英雄になれるのではないかなんて淡い希望を抱いたのだ。
だからこそ、私は特権身分の子供でありながら強制的に戦場に出されてもなんの文句を言わなかった。
………けれどもそんな未来が私に訪れることなんてあるはずがなかったことにその時私は気づいていなかった。
私が魔境の氾濫の際、押し寄せる魔獣を先頭で迎え撃つように言われた。
それは未だ子供だった私にはあまりにも酷な要求だった。
確かに尋常ならざる力をその時からすでに私は有していた。
けれども、だからといって魔獣が恐ろしくないわけではないのだ。
しかも魔獣の数は兵士たちよりも遥かに多い。
そんな状況で、私が恐怖を抱かないわけがなかった。
けれども私は必死にその恐怖を押さえ込んだ。
こんな先頭に配属されたのは今まで恐れられてきた自分が期待されていたからだと、そう思って周囲の兵士達が逃げ出す中、必死にその場に留まった。
……けれどもその時の私は気づかなかった。
自分は戦力として有用だから先頭に配置されているわけでハイことに。
本当に重要視されているのならばこんな先頭で使い潰すように扱われることなんて無いのだ。
そう、つまり先頭に配置された理由、それは私の思っていたものとは違ったのだ。
……いや、それどころか逆だったといってもいい。
何せ私が先頭に配置された理由、それはこの魔境の氾濫で殺すためだったのだから。
そう、私はこんな未曾有の危機においても周囲の人間から疎まれていたのだ。
何せ魔境から溢れ出てくる魔獣よりも優先して殺そうとされたくらいなのだから。
「な、何で生きているんだよ、悪魔!」
……そしてその事実に私が気づいたのは無我夢中で魔獣を殺し続けた後、助けたはずの兵士にそう言われた時だった。
その時になってようやく私は気づいた。
私は人から愛を求めてはならない人間だったということを。
いや、私は人とは相慣れない悪魔であったことを。
だから私は魔境の奥深くに魔境の氾濫を未然に防ぐという言い訳で引きこもった。
それからは酷く孤独な日々だった。
けれども、耐えるほかなかった。
何故なら人に期待して裏切られた時の方が孤独よりももっと傷つくものだったから。
「本当にありがとうございます!」
けれども、その私の孤独は突然家に居候を始めた一人の少女によって、崩れ去ることになった……
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