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第28話 利用
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「……っ!」
少し経って、夢とは思えないアルフォートの身体の温かさに、ようやく私は自分がアルフォートに抱きしめられていることに気づく。
その瞬間、私の頬に血が上り私は急いでアルフォートを自分の身体から離そうとする。
「ぅぁ、」
しかし、その私の試みが成功することはなかった。
今まで睡眠不足で疲れ切った身体が、アルフォートの身体の温かさで忘れていたその疲れを思い出し、急激な睡魔が私を襲ったのだ。
何かがおかしい、そう分かりながらもそれでも私はその睡魔に身体を委ねようとして。
「っ!」
……けれどもその瞬間目の前にチラついた悪夢の残滓に私は身体を震わせた。
未だ私の目の前では家族が、私を嘲っていて、その姿に私の目にまた涙が浮かぶ。
「大丈夫だ」
「ぅぇ?」
ーーー けれども硬い何かに私は押し付けられた。
何が起きたのかわからないまま、呆然とした私の耳にアルフォートは囁く。
「君が私を利用した?それなら私はどれだけ君を利用したことになるんだ」
そしてそのアルフォートの言葉が聞こえた瞬間、何が起きたかわからないまま、それでも私は口を開いていた。
「そんなことはないです!」
頭は上手く働かない。
硬い何かに頭を抱えられて、とくん、と酷く私を落ち着かせる音が響いていて、私の眠気を誘い、頭が動かないのだ。
けれども、アルフォートの言葉だけは否定しなければならないと私は叫ぶ。
「私はそんなこと思ってない!」
その私の言葉に何故か酷く嬉しそうにアルフォートは笑った。
その振動が私に伝わってきて、今更ながらに私はアルフォートの胸に頭を押し付けていることに気づく。
「だったらそれはレシアス、君も同じだ」
しかしそのことに私が羞恥を覚える前に笑いながらアルフォートはそう告げた。
「私は君がいくら利用しようとしても気にしない。
いや、私は君に利用してほしいんだよ」
「………え?」
アルフォートの逞しい腕が私の身体を持ち上げ、彼の整った顔が私の両目を射抜く。
そのアルフォートの視線は真剣そのもので、私の意識が一瞬覚醒する。
それはほんの一瞬のこと。
「私には君が必要だ。それに私は君を裏切らない」
「ーーーっ!」
ーーー けれどもその一瞬をまるで待ち望んでいたようにアルフォートはその言葉を告げた。
その瞬間、私は何故か自分以外の時が止まったような、そんな錯覚に陥った。
アルフォートの言葉、それは私が今までずっと待ち望んでいたはずの言葉だった。
でも、私の存在を望む人間なんて今までいなかった。
どれだけ私がその人に尽くしても、居なくて、だから私は目の前のアルフォートを見ながらもあることを悟って居た。
そう、今は夢の中であることを。
あのアルフォートが私にそんな言葉を告げてくれるわけがないことぐらい私は分かっていて。
「うぐっ」
ーーー なのに何故か涙が止まらなかった。
あり得ない、そう理解しているのにどうしようもなく喜びが心から溢れ出してきて、どうしても私は涙を止めることができなかった。
そしてそんな私を見て、アルフォートは小さく笑声を上げ、私をゆっくりと抱きしめて耳元で囁いた。
「おやすみ」
その声を最後に私の意識は薄れていく。
もう少しこの温かい夢に浸りたい、なんて思いが浮かんで、そして私は意識を手放した。
「あぁ、もう自分でも抑えられないな」
最後に、そんなアルフォートの呟きが聞こえた気がした……
少し経って、夢とは思えないアルフォートの身体の温かさに、ようやく私は自分がアルフォートに抱きしめられていることに気づく。
その瞬間、私の頬に血が上り私は急いでアルフォートを自分の身体から離そうとする。
「ぅぁ、」
しかし、その私の試みが成功することはなかった。
今まで睡眠不足で疲れ切った身体が、アルフォートの身体の温かさで忘れていたその疲れを思い出し、急激な睡魔が私を襲ったのだ。
何かがおかしい、そう分かりながらもそれでも私はその睡魔に身体を委ねようとして。
「っ!」
……けれどもその瞬間目の前にチラついた悪夢の残滓に私は身体を震わせた。
未だ私の目の前では家族が、私を嘲っていて、その姿に私の目にまた涙が浮かぶ。
「大丈夫だ」
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何が起きたのかわからないまま、呆然とした私の耳にアルフォートは囁く。
「君が私を利用した?それなら私はどれだけ君を利用したことになるんだ」
そしてそのアルフォートの言葉が聞こえた瞬間、何が起きたかわからないまま、それでも私は口を開いていた。
「そんなことはないです!」
頭は上手く働かない。
硬い何かに頭を抱えられて、とくん、と酷く私を落ち着かせる音が響いていて、私の眠気を誘い、頭が動かないのだ。
けれども、アルフォートの言葉だけは否定しなければならないと私は叫ぶ。
「私はそんなこと思ってない!」
その私の言葉に何故か酷く嬉しそうにアルフォートは笑った。
その振動が私に伝わってきて、今更ながらに私はアルフォートの胸に頭を押し付けていることに気づく。
「だったらそれはレシアス、君も同じだ」
しかしそのことに私が羞恥を覚える前に笑いながらアルフォートはそう告げた。
「私は君がいくら利用しようとしても気にしない。
いや、私は君に利用してほしいんだよ」
「………え?」
アルフォートの逞しい腕が私の身体を持ち上げ、彼の整った顔が私の両目を射抜く。
そのアルフォートの視線は真剣そのもので、私の意識が一瞬覚醒する。
それはほんの一瞬のこと。
「私には君が必要だ。それに私は君を裏切らない」
「ーーーっ!」
ーーー けれどもその一瞬をまるで待ち望んでいたようにアルフォートはその言葉を告げた。
その瞬間、私は何故か自分以外の時が止まったような、そんな錯覚に陥った。
アルフォートの言葉、それは私が今までずっと待ち望んでいたはずの言葉だった。
でも、私の存在を望む人間なんて今までいなかった。
どれだけ私がその人に尽くしても、居なくて、だから私は目の前のアルフォートを見ながらもあることを悟って居た。
そう、今は夢の中であることを。
あのアルフォートが私にそんな言葉を告げてくれるわけがないことぐらい私は分かっていて。
「うぐっ」
ーーー なのに何故か涙が止まらなかった。
あり得ない、そう理解しているのにどうしようもなく喜びが心から溢れ出してきて、どうしても私は涙を止めることができなかった。
そしてそんな私を見て、アルフォートは小さく笑声を上げ、私をゆっくりと抱きしめて耳元で囁いた。
「おやすみ」
その声を最後に私の意識は薄れていく。
もう少しこの温かい夢に浸りたい、なんて思いが浮かんで、そして私は意識を手放した。
「あぁ、もう自分でも抑えられないな」
最後に、そんなアルフォートの呟きが聞こえた気がした……
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