最強の魔術師ですが、勇者に妬まれパーティーから追放されました

影茸

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 「シュエラ・マーセル!貴様は誇りあるこの勇者のパーティーの一員としてふさわしくない!よってこのパーティーから追放させてもらう!」

 そんな風に魔術師である僕、シュエラ・マセールが勇者ラードに一方的に告げられたのは魔族の軍を追い払った直後のことだった。
 艶やかな金色の髪を風になびかせながら、神のごとく整った容貌に勝ち誇ったような笑みを浮かべ、ラードはなにも答えられない僕へとさらに言葉を重ねる。

 「なにが起きたかわからない、そんな顔をしているなシュエラ。だがこれは当然の結果だぞ。はっきり言わせてもらおう。シュエラお前は足手まといだ!」

 「ーーーっ!」

 そしてそのラードの言葉に今まで無反応だった僕は驚愕に目を見開いた。

 「………斬新な切り口だな」

 ………けれどもその後僕はそんな言葉を漏らす異常の反応をとることはなかった。
 ラードが先ほどの勝ち誇ったような笑みから反転、忌々しげにこちらを見てきているのに気づきながらもなお。

 何せこのようにラードが僕にパーティーからの追放をほのめかしてくるのはいつものことであるのだから。

 つまるところ、僕は決して勇者パーティーの中のお荷物ではない。
 それどころかラードよりもふつうに強い。
 つまり僕が足手まといだというラードの言葉は僕を責めるための口実でしかない。
 というのも、ラードは自分よりも評判が高い僕を目の敵にしていて時々このように嫌がらせをしてくるのだ。
 ………僕の評判の高さは勇者だからと好きかってするラードの尻拭いに走り回った結果だったりするのだが、ラードは自身の行いを改めようとはせず僕に怒りをぶつけてくるのだ。
 明らかに無駄でしかないのにも関わらず。
 だから僕はいつからかラードの言葉を無視するようになっていた。
 そしてラードと僕のこのやりとりは僕の方が反応しなくなったせいで、もはや茶番以外の何者でもなく、このパーティーの中、唯一の常識人である赤髪でグレマーな身体が特徴である美貌の女戦士、アラカナが溜息をもらすのが見える。
 ………しかしこの茶番の無意味さに気づいているのは僕とアラカナだけだった。

 「あんた!ラード様が役立たずだって言っているのになんでなにも反応しないの!」

 アラカナにも負けない美少女であるレーナが、ラードの罵倒にもはや言葉さえ帰さなくなった僕へと怒りを露わにする。

 「………はぁ」

 ………けれどもそのレーナの言葉にも僕は嘆息を漏らすだけで言葉を返すことはなかった。
 これがもしアラカナのような必死にがんばっている人間からの言葉であれば僕も思うところがあったかもしれない。
 けれどもレーナにはなにを言われたことでどうでもよかった。
 なぜならレーナはその美貌から勇者に見初められパーティーに入っただけの元村人、つまり彼女こそがこ真のパーティーのお荷物なのだ。
 がんばって何かしているのは夜、ラードのテントの中だけだろう。
 そんな相手に役立たずと罵られても呆れる以外の反応を僕は思いつかない。
 そう僕は判断して僕の反応に騒ぐレーナを無視することに決める。

 「シュエラ、あなたが魔術師ありながら近接先頭を行うなんて馬鹿な行動をしているのは事実でしょう!なのに何でそんな態度をとれるのですか!」

 すると今度は修道服に身を包んだ美女、聖女シルエが僕に向かって怒声をあげた。
 彼女は神の祝福を得たとされるラードに心酔していて、僕の態度が我慢できなかったのだろう。

 「あ?」

 「ひっ!」

 ーーー そしてそのシルエの言葉に僕の中で何かが切れる音がした。
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