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3 (最終話)
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「ーーーなっ!」
今まで僕を縛り付けていた紋章、それが霧散したという意味が分かったのはアラカナただ一人だった。
ラードとその取り巻きたちは今に僕が取り乱し、パーティーに入れてくれと言ってくるとでも思っているのかその口元には嘲笑が浮かんでいた。
けれども僕はそのどの反応も無視して、空を見上げていた。
今まで僕はラードの行動で何度もしに死にかけている。
根拠のない自信で魔族の大軍につっこみ当たり前のように負け、ラードが逃げるための囮にされたことなんて数え切れないほどあるし、さらには村娘を襲いその罪を僕にかぶせてリンチしたこともある。
だから僕は今までラードのことを憎んでいた。
けれども今、僕は初めてラードに感謝していた。
「シュエラ、お前何でなにも反応………」
「なあラード、本当にありがとう。ーーー底なしの馬鹿でいてくれて」
だから僕はその感謝を伝えるべく、ようやく僕が追放されても対して動じていないことに気づいたラードに笑いかける。
「だから、とりあえず一発にしといてやるよ」
「………は?」
そして次の瞬間僕は、未だ反応できていないラードの方へと拳を固めて踏み出した。
地面に足がのめり込むほど強く。
勇者パーティーを示す紋章には様々な制限があり、それらに僕はいつも忌々しさを感じていた。
そしてその中に仲間を傷つけることが出来ないと言う制限があり、そのせいで今まで僕はラードに怒りをぶつけることは出来なかった。
けれどももうその戒めはない。
ーーー つまりもう僕がラードに溜まりに貯まった憎しみをぶつけることを遮るものはなにもないのだ。
次の瞬間僕はラードの顔面へと全力で拳を振り下ろしていた。
「ぶえっ!?」
僕の拳を受け、奇声とともにラードは吹っ飛び、回転しながら飛んでいく。
それから最終的に何度もバウンドしたラードの身体は数十メートルほど吹っ飛びそれからぴくりとも動かない。
そしてそのラードの様子に僕は晴れやかな笑みを浮かべて口を開いた。
「すっきりした!」
その言葉を最後に、僕はその場から背を向け悠々と歩きだす。
………そしてその僕の姿に、後に残された人間は誰一人として声をかけることは出来なかった。
「………この馬鹿勇者が。最大戦力をみすみす捨てやがって」
最後に僕の耳にアラカナが勇者に向けて吐き捨てたらしき言葉が入る。
立ち去る僕の背後には、先ほどの戦闘中に僕が魔法を使った余波で出来た、町一つほどの大きさを有するクレーターが広がっていた………
今まで僕を縛り付けていた紋章、それが霧散したという意味が分かったのはアラカナただ一人だった。
ラードとその取り巻きたちは今に僕が取り乱し、パーティーに入れてくれと言ってくるとでも思っているのかその口元には嘲笑が浮かんでいた。
けれども僕はそのどの反応も無視して、空を見上げていた。
今まで僕はラードの行動で何度もしに死にかけている。
根拠のない自信で魔族の大軍につっこみ当たり前のように負け、ラードが逃げるための囮にされたことなんて数え切れないほどあるし、さらには村娘を襲いその罪を僕にかぶせてリンチしたこともある。
だから僕は今までラードのことを憎んでいた。
けれども今、僕は初めてラードに感謝していた。
「シュエラ、お前何でなにも反応………」
「なあラード、本当にありがとう。ーーー底なしの馬鹿でいてくれて」
だから僕はその感謝を伝えるべく、ようやく僕が追放されても対して動じていないことに気づいたラードに笑いかける。
「だから、とりあえず一発にしといてやるよ」
「………は?」
そして次の瞬間僕は、未だ反応できていないラードの方へと拳を固めて踏み出した。
地面に足がのめり込むほど強く。
勇者パーティーを示す紋章には様々な制限があり、それらに僕はいつも忌々しさを感じていた。
そしてその中に仲間を傷つけることが出来ないと言う制限があり、そのせいで今まで僕はラードに怒りをぶつけることは出来なかった。
けれどももうその戒めはない。
ーーー つまりもう僕がラードに溜まりに貯まった憎しみをぶつけることを遮るものはなにもないのだ。
次の瞬間僕はラードの顔面へと全力で拳を振り下ろしていた。
「ぶえっ!?」
僕の拳を受け、奇声とともにラードは吹っ飛び、回転しながら飛んでいく。
それから最終的に何度もバウンドしたラードの身体は数十メートルほど吹っ飛びそれからぴくりとも動かない。
そしてそのラードの様子に僕は晴れやかな笑みを浮かべて口を開いた。
「すっきりした!」
その言葉を最後に、僕はその場から背を向け悠々と歩きだす。
………そしてその僕の姿に、後に残された人間は誰一人として声をかけることは出来なかった。
「………この馬鹿勇者が。最大戦力をみすみす捨てやがって」
最後に僕の耳にアラカナが勇者に向けて吐き捨てたらしき言葉が入る。
立ち去る僕の背後には、先ほどの戦闘中に僕が魔法を使った余波で出来た、町一つほどの大きさを有するクレーターが広がっていた………
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