よくある脱出ホラーですが

旧校舎編(第１章)

朝日、訪れる休息の時

青い数珠を手に廊下を忍び歩きで移動する
階段まで着いた時には
もう汗でびしょびしょだった
たった数メートルの歩行だったのだが
それが気の遠くなるほどの時間に感じられて
それでも今後の策を講じるために口を開く
「これから、どうするんだ？」
これからどうするのか
そんなの聞かれても答えは１つだ
ここから逃げ出したい
そんな質問をなぜしたかって？
人間は無音に弱い
時にはそれは精神にも害を与えるものである
だからこそ、静寂を無理に破ってでも
小さな、それでも２人に聞こえる声を
音を響かせる必要があったのだ
だからそれに反応した２人は
「そんなの、ここから逃げるに決まってるじゃないですか」
やはり、予想と同じ返答をしてくれた
「なら、玄関の鍵を探さないとな」
まだ、脱出劇始まったばかり
ここまで色々なことがあったがそれも
少しは安心できそうだと感じたのだ
何故ならそれは……


「ねぇ、あれ見て！」
青い数珠が白く、いや、オレンジに染まる
それは霊の出現でもなく
太陽の、朝日による安堵の色であった
朝には霊は活動ができない
だからその場に留まり夜をじっと待つらしい
そう、本格的に全てを調べるなら
朝から夕方までが格好の時なのだ
しかし、疲れてしまったのか
２人は仲良く肩を並べて座ったまま
廊下で、寝ていたのだ
「ふふっ、こんな状況の中で……」
２人の寝顔にあまりにも癒され
生徒会長である東雲水咲が
思わず、笑顔になったのは言うまでもない