CREATED WORLD

猫手水晶

文字の大きさ
29 / 58
第3話

第3話 出発 (11)

しおりを挟む
 「結論から言おう、囚人番号125番、ミサ。」

 「お前、俺達の軍に入らないか?」

 私が椅子に座ると、強化ガラスの向こうの二人の軍人のうちの一人が、間を置いてそう言った。

 「我々と、お前がいるコルートという国は対立していて、裏切ることにはなってしまうだろう。だが、我々の国はお前の国より豊かだという自信がある。食料は人工の固形食で、水分も限られてはいる。だが、きちんと兵糧は管理されているから切らすことはなく、ある程度の地位も保証される。」

 「我が軍に入れば、ここから出られる。どうだ?乗ってみないか?」

軍人は私にそう問いかけた。

 「そんなのお断りだ。私には仲間がいる。」

 私はそう言って断った。コルートの首相として国民を裏切る訳にはいかないし、相棒のカンフィナと縁を切るなんて事は私には到底できない。
 この監獄では、イリーア達に出会う事ができた。

 だから、仲間達を裏切る事は決してできなかった。

 「そうか、残念だ。だが内容は伝えておく、この作戦で我々と協力してくれたら、正式に我々の軍の一員として認めよう。」

 話は予想外にも穏便に進んだ。ここに連れてこられて、ここでは私は逃げる事は困難で、実力行使をするには好都合の場所なので、私は怖さを感じていたが、ひとまず安心した。

 軍人は話を続けた。

 「具体的な日時は未定だが、近いうちにこの監獄の囚人とコルートの軍を戦わせる。」
私はそれを聞いてぞっとした。本来罪を償うべき囚人を戦地に送るなんて事はあってはならない。
 私はイリーア達にそれを伝えて、彼女らを守らなくてはと思った。
 「この監獄の近くに要塞があって、そこで作戦を実行する。その時にお前は我々の指示に従ってほしい。その指示に関しては実行している時に逐次伝える。それにお前が従えば、我々に協力したとみなす。」

 「以上だ。この話は決して他言してはならない。ドアの前で待機している者が案内するからついていき、自由時間に戻っていいぞ。」

 軍人はそう言って、部屋から立ち去った。

 イリーア達に伝えたとしても、誰かが裏切り、情報がもれてしまうおそれがあるので、それを言うのはイリーアだけにしようと思った。

 幸い彼女と私は同じ部屋で、同姓なので、部屋にいる間やシャワーの時間に、看守の目を盗んで知らせれば良い。

 私は部屋を去り、先導する軍人についていき、バスケットボールのコートのある広場に戻り、イリーアの達の元へ向かおうとした。

 すると一人の囚人の女性が、私を呼びとめた。

 「私はイリーアの仲間の一人だ。都合により彼女とは別行動で、名前も明かす事はできないが、私から内密に話がしたい。ついてきてくれ。」
 そう言って私を女性トイレに連れて行った。

 別行動で、名前も明かさないなんて怪しすぎるので断ろうとも思ったが、彼女を怒らせてしまい、ここで戦う事になったら、ここの囚人達は大盛り上がりで私達の戦闘を見物するだろう。
 そんな事になったら、勘の良い彼女の仲間の囚人が、その事を調べて、私達の事について知られてしまうのは良い事ではない。
 なので、彼女に従い、ついていく事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...