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猫手水晶

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第3話

第3話 出発 (11)

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 「結論から言おう、囚人番号125番、ミサ。」

 「お前、俺達の軍に入らないか?」

 私が椅子に座ると、強化ガラスの向こうの二人の軍人のうちの一人が、間を置いてそう言った。

 「我々と、お前がいるコルートという国は対立していて、裏切ることにはなってしまうだろう。だが、我々の国はお前の国より豊かだという自信がある。食料は人工の固形食で、水分も限られてはいる。だが、きちんと兵糧は管理されているから切らすことはなく、ある程度の地位も保証される。」

 「我が軍に入れば、ここから出られる。どうだ?乗ってみないか?」

軍人は私にそう問いかけた。

 「そんなのお断りだ。私には仲間がいる。」

 私はそう言って断った。コルートの首相として国民を裏切る訳にはいかないし、相棒のカンフィナと縁を切るなんて事は私には到底できない。
 この監獄では、イリーア達に出会う事ができた。

 だから、仲間達を裏切る事は決してできなかった。

 「そうか、残念だ。だが内容は伝えておく、この作戦で我々と協力してくれたら、正式に我々の軍の一員として認めよう。」

 話は予想外にも穏便に進んだ。ここに連れてこられて、ここでは私は逃げる事は困難で、実力行使をするには好都合の場所なので、私は怖さを感じていたが、ひとまず安心した。

 軍人は話を続けた。

 「具体的な日時は未定だが、近いうちにこの監獄の囚人とコルートの軍を戦わせる。」
私はそれを聞いてぞっとした。本来罪を償うべき囚人を戦地に送るなんて事はあってはならない。
 私はイリーア達にそれを伝えて、彼女らを守らなくてはと思った。
 「この監獄の近くに要塞があって、そこで作戦を実行する。その時にお前は我々の指示に従ってほしい。その指示に関しては実行している時に逐次伝える。それにお前が従えば、我々に協力したとみなす。」

 「以上だ。この話は決して他言してはならない。ドアの前で待機している者が案内するからついていき、自由時間に戻っていいぞ。」

 軍人はそう言って、部屋から立ち去った。

 イリーア達に伝えたとしても、誰かが裏切り、情報がもれてしまうおそれがあるので、それを言うのはイリーアだけにしようと思った。

 幸い彼女と私は同じ部屋で、同姓なので、部屋にいる間やシャワーの時間に、看守の目を盗んで知らせれば良い。

 私は部屋を去り、先導する軍人についていき、バスケットボールのコートのある広場に戻り、イリーアの達の元へ向かおうとした。

 すると一人の囚人の女性が、私を呼びとめた。

 「私はイリーアの仲間の一人だ。都合により彼女とは別行動で、名前も明かす事はできないが、私から内密に話がしたい。ついてきてくれ。」
 そう言って私を女性トイレに連れて行った。

 別行動で、名前も明かさないなんて怪しすぎるので断ろうとも思ったが、彼女を怒らせてしまい、ここで戦う事になったら、ここの囚人達は大盛り上がりで私達の戦闘を見物するだろう。
 そんな事になったら、勘の良い彼女の仲間の囚人が、その事を調べて、私達の事について知られてしまうのは良い事ではない。
 なので、彼女に従い、ついていく事にした。
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