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猫手水晶

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第3話

第3話 出発 (12)

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 彼女は私を広場の隅にある女子トイレまで案内した。
 この監獄は広く、トイレも広いものだと私は思い込んでいたが、実際はとても狭く、私は彼女に追い詰められてしまった。

 しまった。これでは逃げ場がない。

 私はとたんに恐ろしさを感じ、ただ怯えてひざをつく事しかできなかった。
「さっきお前は軍人についていき、生きてここまで戻ってきた。しかも無傷だ。なにか話をしたのか?」
 女性は銃を私に向けてそう言った。
「それは...」
 私は生きる為に白状するしかないと思い、震え声で真実を言おうとした。元々はイリーア達にだけ伝えるつもりだったが、この状況ではどうすることもできない...
 イリーア達をより不利な状況にしてしまう事が恐ろしいし、イリーアは私が裏切ったと思うかもしれない...
「どうなんだ、早く言ってっくれ。でないとお前は命を落とすことになるぞ。」

 すると、一瞬彼女の後ろにイリーアの人影が見えたと思ったら、途端にその人影は彼女の頭上に跳び、空中で体を回転させ、伸ばした足を彼女の頭に当てた。



 跳び蹴りだ。

 それは一瞬の出来事で、音すらしなかった。
 しかもそれが起こるまで全く気配を感じなかった。
 先程まで私の前で堂々と立ちふさがっていた女性は、あっけなく横に倒れてしまった。
 女性は気絶しているようだ。
 私は倒れた女性から目を上にやると、やはりイリーアの姿があった。

 イリーアは私を守ってくれたのだ。
 私は彼女を信頼して良かったと思った。

 私とイリーアは看守達に見つからないように気絶した女性を運び、トイレの横にある部屋に忍びこんだ。
 この部屋はもう使われなくなって鍵はかかっておらず、イリーア達が自由時間の間に自由に行動できる場所になっていた。
 薄暗いこの部屋は、もう使われなくなっており、ただ椅子や机が煩雑に置かれているだけだった。
 イリーアは椅子に彼女を座らせ縛り付け、私は他の仲間を広場から呼び、合流した。

 合流した後、仲間の一人のリディグは、女性に首輪をつけた。
 おそらく発信器のようなものだろう。

 イリーア曰く、今の自由時間は、囚人がバスケットボールをしたり乱闘を繰り広げており、看守も囚人全員をすべて見張れてはいないので、こうして陰で行動する囚人は多いそうだ。
 中からは鍵をかけられるようになっていたので、中から鍵をかけ、私達は気絶している女性に向かい合った。

「おーい、大丈夫かー?」

 イリーアはそう言って、気絶した女性を起こした。
 そしてイリーアは銃を向け、女性にこう言った。

「お前は一体何者なんだー?」
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