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第3話
第3話 出発 (13)
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私は橙色の丸い物体を頬張っていた。
その物体は、温かく柔らかい生地で、頬張るほどに口いっぱいに小麦と呼ばれる植物の香ばしい香りが広がる。
初めて食べる事に幸福感を感じた。
男曰く、その橙色の丸い物体は、昔、「パン」と呼ばれており、人々の腹を満たし、かつ、人々を幸せにさせた食べ物らしい。
彼はその「パン」を作るために研究を積み重ねた科学者らしい。
「パン」と呼ばれている食べ物は、かつては「小麦」と呼ばれる植物を原料にしていたらしい。
だが、この工場で埋め尽くされてしまったこの大地では、もはや土すらなく、「小麦」という植物はとうてい育ちそうもないし、種も残されていない。
そこで彼は、工場の幾多のパイプを流れる液体から、無害で、食用として使える成分を取り出し、その成分をどうすれば「パン」という食べ物に近づける事ができるのか研究し、実現に向けて尽力していた。
まず工場の幾多のパイプを流れる液体を採取し、その液体を濾過したり、煮沸したり、薬品を加えたりして、試行錯誤を繰り返し、「パン」の材料にできる限り近づけた物質をつくり、それを元に「パン」というものを作る。もちろん、その材料から「パン」を作り出す事にも様々な研究を重ねていたのだろう。
「食べる事はかつて、遠い昔は楽しいものだったらしい。その幸せを現在でも再現し、この工場の大地で迷ってしまった人々や飢えてしまっている人々にふるまいたいんだ。まぁ、親父には反対されているが...」
男は苦い顔をしてそう言った。
なぜ彼の父は彼のする事に反対しているのだろうか。
私は疑問に思った。
「なんで良いことをしているはずなのに、反対されているの...?」
私は「パン」を食べながら、男に聞いてみた。
男は私の質問に応えようとしたが、突然、「時の狭間」のほうから、「ドン!」という大きな衝撃音が鳴り、男の言おうとした言葉を遮った。
一体何が起こったのだろう。
衝撃音が鳴ってすぐ、ちょうど私がパンを食べ終わると、私達が今いるテントに来客があった。
「ザック、またこんな危険な場所で『レストラン』とやらを開いているのですか。この場所で生身の人間が生還するのは難しいのですよ。私はもう誰も失いたくはないのです...。せめてここではなくもっと安全な場所で店を開くか、安全な場所から無人でロボットに食物を運ばせるという手段を選ぶ事を強く推奨いたします...。」
入ってきた人物は冷静沈着に、穏やかな声で男にそう言った。
彼は男同様に白衣を着ており、変わったかぶりものをしていた。まるでそれは昔の人物が宇宙空間での活動のために着ていた宇宙服の首から上の部分のようなもので、彼の顔はわからなかった。首は何やら何本ものコードが束ねられているようであり、腕も機械でできていた。
まるで身体を改造したサイボーグのようだった。
彼は一体何者なのだろう。
おそらく男と関係のある人物であると予想できるのだが...。
「あ!こんな所をお見せしてしまい申し訳ございません。私は科学者のクレッチュマーと申します。彼は私の息子のザックで、私と同じ科学者でございます。」
テントに入ってきた人物は私の存在に気付くと、焦った様子で私に自己紹介をした。
彼の名はクレッチュマー博士といい、先程まで私に「パン」を振る舞っていた男は、ザックという者だったらしい。
ザックの命の心配をしている所には、クレッチュマー博士の父としての優しさを感じた。
なにせここは、「時の狭間」のすぐ近くであり、クレッチュマー博士の話によると、その空間は、時空の歪みによって空間がめちゃくちゃになっていて、人類にとって敵対的な行動をとる危険なロボットも存在している。
先程もクレッチュマー博士は、「時の狭間」にいる巨大なロボットと激闘を繰り広げていたらしい。
その物体は、温かく柔らかい生地で、頬張るほどに口いっぱいに小麦と呼ばれる植物の香ばしい香りが広がる。
初めて食べる事に幸福感を感じた。
男曰く、その橙色の丸い物体は、昔、「パン」と呼ばれており、人々の腹を満たし、かつ、人々を幸せにさせた食べ物らしい。
彼はその「パン」を作るために研究を積み重ねた科学者らしい。
「パン」と呼ばれている食べ物は、かつては「小麦」と呼ばれる植物を原料にしていたらしい。
だが、この工場で埋め尽くされてしまったこの大地では、もはや土すらなく、「小麦」という植物はとうてい育ちそうもないし、種も残されていない。
そこで彼は、工場の幾多のパイプを流れる液体から、無害で、食用として使える成分を取り出し、その成分をどうすれば「パン」という食べ物に近づける事ができるのか研究し、実現に向けて尽力していた。
まず工場の幾多のパイプを流れる液体を採取し、その液体を濾過したり、煮沸したり、薬品を加えたりして、試行錯誤を繰り返し、「パン」の材料にできる限り近づけた物質をつくり、それを元に「パン」というものを作る。もちろん、その材料から「パン」を作り出す事にも様々な研究を重ねていたのだろう。
「食べる事はかつて、遠い昔は楽しいものだったらしい。その幸せを現在でも再現し、この工場の大地で迷ってしまった人々や飢えてしまっている人々にふるまいたいんだ。まぁ、親父には反対されているが...」
男は苦い顔をしてそう言った。
なぜ彼の父は彼のする事に反対しているのだろうか。
私は疑問に思った。
「なんで良いことをしているはずなのに、反対されているの...?」
私は「パン」を食べながら、男に聞いてみた。
男は私の質問に応えようとしたが、突然、「時の狭間」のほうから、「ドン!」という大きな衝撃音が鳴り、男の言おうとした言葉を遮った。
一体何が起こったのだろう。
衝撃音が鳴ってすぐ、ちょうど私がパンを食べ終わると、私達が今いるテントに来客があった。
「ザック、またこんな危険な場所で『レストラン』とやらを開いているのですか。この場所で生身の人間が生還するのは難しいのですよ。私はもう誰も失いたくはないのです...。せめてここではなくもっと安全な場所で店を開くか、安全な場所から無人でロボットに食物を運ばせるという手段を選ぶ事を強く推奨いたします...。」
入ってきた人物は冷静沈着に、穏やかな声で男にそう言った。
彼は男同様に白衣を着ており、変わったかぶりものをしていた。まるでそれは昔の人物が宇宙空間での活動のために着ていた宇宙服の首から上の部分のようなもので、彼の顔はわからなかった。首は何やら何本ものコードが束ねられているようであり、腕も機械でできていた。
まるで身体を改造したサイボーグのようだった。
彼は一体何者なのだろう。
おそらく男と関係のある人物であると予想できるのだが...。
「あ!こんな所をお見せしてしまい申し訳ございません。私は科学者のクレッチュマーと申します。彼は私の息子のザックで、私と同じ科学者でございます。」
テントに入ってきた人物は私の存在に気付くと、焦った様子で私に自己紹介をした。
彼の名はクレッチュマー博士といい、先程まで私に「パン」を振る舞っていた男は、ザックという者だったらしい。
ザックの命の心配をしている所には、クレッチュマー博士の父としての優しさを感じた。
なにせここは、「時の狭間」のすぐ近くであり、クレッチュマー博士の話によると、その空間は、時空の歪みによって空間がめちゃくちゃになっていて、人類にとって敵対的な行動をとる危険なロボットも存在している。
先程もクレッチュマー博士は、「時の狭間」にいる巨大なロボットと激闘を繰り広げていたらしい。
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