煙の世の獣村

猫手水晶

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第一話 ムラサメ

第一話 ムラサメ (1)

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煙の世の獣村
第一話 ムラサメ
 それを見たとき、私はそれが現実であるかどうかを疑い、しばらく池の水面を見続けていたり、自分の手を見たりしたが、やはり毛に覆われており、それにしか見えず、これが現実だという事を痛感した。
 私は狐になったのだ。
 これからこの竹林でどうすれば生きていけるのだろうか?
 今までは工場の煙で病気になってしまうリスクがありながらも、あの化け物には、頼ることのできる機械や技術があり、仕事もあった。
 だが、ここは空気がおいしく、景色も生き生きとしているが、機械などの自分の代わりに何かをしてくれるものがない。
また、人間から見れば未都市伝説のような未確認の存在となってしまった私が、人間の、ジャーナリストの仲間の元に戻ってまた共に仕事をする事もできないのだ。
私はしばらく獣道を歩き続けた。
すると、何か変わった空間があるのを見つけた。
地面が黒く、灰色の霧のようなものが一面にかかっており、黒い竹が生えていて、使われなくなったと思われる機械がいくつも積まれていた。
本能的に「あの空間は危険だ。」と察した私は、その空間には入らず、踵を返して立ち去った。
しかし歩き出してまもなく、私は違和感に気付いた。
周りの竹や草を押しのけるような、ガサガサと音が聞こえる
私が振り向くと、遠方からすごいスピードで、何かが近づき、私に追いついてしまった。
それは火炎放射器のような形をした機械が上についている、大きな黒いドロドロの、四メートル程の大きさの、巨大な化け物だった。

化け物は、私に向かって火炎放射器を向け、その先から黒い泥を、銃弾のような勢いで放出した。
私は反射的によけ、逃げ出した。
私は恐ろしく思った。
この世界にはどんな生物や物体があるのか全く不明だ。
それは記者として好奇心をそそるものだが、今の状態ではそうとはいえない。
「自分にとって恐るべき存在もまだ知らない」という事なのだ。
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2024.01.04 ユーザー名の登録がありません

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