61 / 83
第61話 敬語を使え、棒読みでもいいから
しおりを挟む
「出現物っていうのは」地球が答えた。「要するに、化合物だよ」
「化合物?」鯰が甲高い声で繰り返す。
「そう。水素とか窒素とか酸素とかが、鉱物のイオンとくっついたり離れたり、酸化還元してできたもの」
「それが、あたしをあの洞窟まで引きずり出したっていうわけ?」
「結果として、そういうことなんだろうね」
「なんでそんなことができちゃうの? あいつら、生き物なの?」
「うーん」地球は答えにくそうだった。「生物ではないけど、出現物なんだよね」
「生きてないの?」
「人間と同じようには生きていないんだけど、存在はしてる……今までもずっと、存在してきてた」
「何、幽霊なの?」
地球はしばらく置いて「そうかも」と自信なさそうに答えた。
「幽霊のくせにあたしを引っ張って行ったの?」
「うん」地球は長引く質疑応答に少し疲労してきたようだった。「そういうこと」
「なんで?」鯰の問いかけは永遠に続きそうだった。
「進化したのかもね」地球は簡単に話をまとめた。「幽霊が」
◇◆◇
「開かないわね」磯田社長がきょろきょろとエレベータの中を見回す。「ちょっと、どういう事?」作業上着のポケットからスマホを取り出し操作して耳に当てる。「あ、相葉さん? ちょっとトラブル」電話の相手はすぐに出たようだった。
――てことは、俺ら側の座標は変わってないってことか。
伊勢はそう考え、社の者に伝えた。
「そう。開かないのよドアが。ボタン押しても動かないし」磯田は片手でエレベータのパネルを操作するが、彼女の言葉通りドアの開閉も箱自体の上下動もまったくなかった。「カナヤマホールディングスに連絡して。そう。田中さん」
――出現物が、またどこか深海底に引っ張って行きやがったわけか。
伊勢は苦虫を噛み潰したような顔で――磯田には見られないように注意しながら――エレベータ内を見回した。
――お前、何やってやがるんだよ。
伊勢は心の中でまたそう毒づいた。社の者たちにも、それは伝わった。
――まだ起きてないのかよ。
「磯田源一郎さん」結城は姿の見えない出現物に呼びかけた。「俺ら帰りたいんすけど、エレベータってどっちにありますかね?」
「エレベータ?」出現物の磯田は不審げな声で問い返した。「なんじゃそりゃ」
「昇降機の事だ」時中が呟くように答え、
「昇降機のことっす」結城が大声で返答し、
「昇降機というのですか」本原が確認した。
「昇降機?」出現物の磯田は再度問い返し、「昇降機の場所を聞いてどうするんだ」と追加した。
「だからー」結城は首を大きく縦に振ってゆっくりと答えた。「帰りたいんですー。わかりますかー。帰宅っすー。おうちにー、かえりますー」
「貴様儂を馬鹿にしとるのか」出現物の磯田はかんかんになった声で怒鳴った。「ぶん殴るぞこの野郎」
「あーいえいえそんなつもりじゃないですすいません」結城は手をぶんぶんと振り大声で詫びを入れた。「失礼しました」
「失礼にも程がある。無礼千万じゃ」出現物の磯田はまた怒鳴った。「そんな態度で物を訊ねられて、答える者がおるか。馬鹿たれ」
「すいませんでしたあ」結城は頭を深く下げながら叫んだ。
「そんな簡単な言葉で謝ったうちに入るか。馬鹿たれ」出現物の磯田は繰り返し怒鳴った。「正しい日本語で正式に謝罪しろ」
「正しい日本語で」結城が頭を下げたまま復唱し、
「正式に謝罪」時中が復唱し、
「そうすれば昇降機の場所を教えていただけるのでしょうか」本原が確認した。
「おう、いいだろう」出現物の磯田は請け負った。「ちゃんと正しく謝ることができたら、昇降機のある場所を教えてやろう」
「本当すか」結城ががばっと起き上がって叫び、
「本当か」時中が呟き、
「本当なのですか」本原が確認した。
「ああ。嘘は言わん」出現物の磯田は再度請け負った。「だがきちんと謝罪しない限り、お前たちをここから出すことは出来ん。よし、五分待つ。きちんとした言葉、正しい敬語、ぴしっとした姿勢、態度。そういうものが全部完璧に揃った、心のこもった謝罪をせい。わかったな」そして出現物の声はそれきり途絶えた。
「うひー」結城が頭頂に両手を置き嘆いた。「条件厳しいなまた」
「しかし考えてみれば、これで漸くここから出られる事が保証されたという事だ」時中が顎に指を当てる。
「後は正しい言葉ときちんとした態度で謝りさえすればいいだけという事でしょうか」本原が確認する。
「依代、か」ぽつんと呟いたのは、天津だった。
「ん?」酒林が訊き返す。
「はは」天津は、声だけながらも気弱げに笑った。「なくなってみると、不便な感じがするよね」
「ああ……うん」酒林も、苦笑まじりに同調する。「最初は、あれだったのに、な」
「ははは」天津はまた笑う。「抵抗あったよね」
「だな」酒林は声だけながら頷く。「何この、うねうね動く奴! とかね」
「言える」大山が割り込む。「でも今となってはもう、ね」
「なくてはならぬもの、と化しているな」石上も同意を示す。
「慣れって、怖いっすね」住吉も言う。「もしかして俺ら……」
「ん?」酒林が訊く。「俺ら、何」
「人間化、しかけてたりして」住吉が続きを言う。
神たちは一斉に笑ったが、すぐにそれは止んだ。
「哀しい」呟いたのは、木之花だった。「といえば、哀しいのかも知れないわね」
「咲ちゃん」天津が呼びかける。
「あたし達が最初に目指していたものは、とっくに手に入ったっていうのにね……今この場では、それは何の役にも立たないなんて」
神たちは、しばし誰も反論できずにいた。この地球において、彼らが手に入れようと最初に目論んだもの――確かにそれは、洞窟の中に持ち込むことすらできないのだった。あれほどまでに、神たちが焦がれ求めた、何よりも心鎮まる依代であるのに。
「俺らは、いつになったら“あの依代”の中に納まって、ゆっくりのんびり寛ぐことができるのかね」大山が言った。
神たちは皆一斉に、ふう、と溜息をついた。
「正しい言葉って、何なんだろ」結城が、頭の上に両腕を組み合わせて乗せ、他の二人に目を向け問う。「昔風かな? 何々奉り、とか、何々ゆえ、とか使う感じのかな」
「何々せしむとかも言うのでしょうか」本原が問う。
「そうだね。あと、何々しぬる、とか」結城が答える。
「しぬれども、とかも言うのでしょうか」本原がさらに問う。
「うわー活用形難しいな。申し訳、ござりませぬるん」結城が例を挙げる。
「何だその卑猥な謝り方は」時中が批判的質問をする。
「古式ゆかしい謝り方だよ。申し訳ござりませぬるるん」結城が再度例を挙げる。
「何のローションだ」時中が再度批判的質問をする。
「俺達は、のんびりと過ごしていた」か細い声が聞えた。
三人ははっと息を呑み、それぞれ周囲を見回した。周囲には誰の姿もなかった。
「化合物?」鯰が甲高い声で繰り返す。
「そう。水素とか窒素とか酸素とかが、鉱物のイオンとくっついたり離れたり、酸化還元してできたもの」
「それが、あたしをあの洞窟まで引きずり出したっていうわけ?」
「結果として、そういうことなんだろうね」
「なんでそんなことができちゃうの? あいつら、生き物なの?」
「うーん」地球は答えにくそうだった。「生物ではないけど、出現物なんだよね」
「生きてないの?」
「人間と同じようには生きていないんだけど、存在はしてる……今までもずっと、存在してきてた」
「何、幽霊なの?」
地球はしばらく置いて「そうかも」と自信なさそうに答えた。
「幽霊のくせにあたしを引っ張って行ったの?」
「うん」地球は長引く質疑応答に少し疲労してきたようだった。「そういうこと」
「なんで?」鯰の問いかけは永遠に続きそうだった。
「進化したのかもね」地球は簡単に話をまとめた。「幽霊が」
◇◆◇
「開かないわね」磯田社長がきょろきょろとエレベータの中を見回す。「ちょっと、どういう事?」作業上着のポケットからスマホを取り出し操作して耳に当てる。「あ、相葉さん? ちょっとトラブル」電話の相手はすぐに出たようだった。
――てことは、俺ら側の座標は変わってないってことか。
伊勢はそう考え、社の者に伝えた。
「そう。開かないのよドアが。ボタン押しても動かないし」磯田は片手でエレベータのパネルを操作するが、彼女の言葉通りドアの開閉も箱自体の上下動もまったくなかった。「カナヤマホールディングスに連絡して。そう。田中さん」
――出現物が、またどこか深海底に引っ張って行きやがったわけか。
伊勢は苦虫を噛み潰したような顔で――磯田には見られないように注意しながら――エレベータ内を見回した。
――お前、何やってやがるんだよ。
伊勢は心の中でまたそう毒づいた。社の者たちにも、それは伝わった。
――まだ起きてないのかよ。
「磯田源一郎さん」結城は姿の見えない出現物に呼びかけた。「俺ら帰りたいんすけど、エレベータってどっちにありますかね?」
「エレベータ?」出現物の磯田は不審げな声で問い返した。「なんじゃそりゃ」
「昇降機の事だ」時中が呟くように答え、
「昇降機のことっす」結城が大声で返答し、
「昇降機というのですか」本原が確認した。
「昇降機?」出現物の磯田は再度問い返し、「昇降機の場所を聞いてどうするんだ」と追加した。
「だからー」結城は首を大きく縦に振ってゆっくりと答えた。「帰りたいんですー。わかりますかー。帰宅っすー。おうちにー、かえりますー」
「貴様儂を馬鹿にしとるのか」出現物の磯田はかんかんになった声で怒鳴った。「ぶん殴るぞこの野郎」
「あーいえいえそんなつもりじゃないですすいません」結城は手をぶんぶんと振り大声で詫びを入れた。「失礼しました」
「失礼にも程がある。無礼千万じゃ」出現物の磯田はまた怒鳴った。「そんな態度で物を訊ねられて、答える者がおるか。馬鹿たれ」
「すいませんでしたあ」結城は頭を深く下げながら叫んだ。
「そんな簡単な言葉で謝ったうちに入るか。馬鹿たれ」出現物の磯田は繰り返し怒鳴った。「正しい日本語で正式に謝罪しろ」
「正しい日本語で」結城が頭を下げたまま復唱し、
「正式に謝罪」時中が復唱し、
「そうすれば昇降機の場所を教えていただけるのでしょうか」本原が確認した。
「おう、いいだろう」出現物の磯田は請け負った。「ちゃんと正しく謝ることができたら、昇降機のある場所を教えてやろう」
「本当すか」結城ががばっと起き上がって叫び、
「本当か」時中が呟き、
「本当なのですか」本原が確認した。
「ああ。嘘は言わん」出現物の磯田は再度請け負った。「だがきちんと謝罪しない限り、お前たちをここから出すことは出来ん。よし、五分待つ。きちんとした言葉、正しい敬語、ぴしっとした姿勢、態度。そういうものが全部完璧に揃った、心のこもった謝罪をせい。わかったな」そして出現物の声はそれきり途絶えた。
「うひー」結城が頭頂に両手を置き嘆いた。「条件厳しいなまた」
「しかし考えてみれば、これで漸くここから出られる事が保証されたという事だ」時中が顎に指を当てる。
「後は正しい言葉ときちんとした態度で謝りさえすればいいだけという事でしょうか」本原が確認する。
「依代、か」ぽつんと呟いたのは、天津だった。
「ん?」酒林が訊き返す。
「はは」天津は、声だけながらも気弱げに笑った。「なくなってみると、不便な感じがするよね」
「ああ……うん」酒林も、苦笑まじりに同調する。「最初は、あれだったのに、な」
「ははは」天津はまた笑う。「抵抗あったよね」
「だな」酒林は声だけながら頷く。「何この、うねうね動く奴! とかね」
「言える」大山が割り込む。「でも今となってはもう、ね」
「なくてはならぬもの、と化しているな」石上も同意を示す。
「慣れって、怖いっすね」住吉も言う。「もしかして俺ら……」
「ん?」酒林が訊く。「俺ら、何」
「人間化、しかけてたりして」住吉が続きを言う。
神たちは一斉に笑ったが、すぐにそれは止んだ。
「哀しい」呟いたのは、木之花だった。「といえば、哀しいのかも知れないわね」
「咲ちゃん」天津が呼びかける。
「あたし達が最初に目指していたものは、とっくに手に入ったっていうのにね……今この場では、それは何の役にも立たないなんて」
神たちは、しばし誰も反論できずにいた。この地球において、彼らが手に入れようと最初に目論んだもの――確かにそれは、洞窟の中に持ち込むことすらできないのだった。あれほどまでに、神たちが焦がれ求めた、何よりも心鎮まる依代であるのに。
「俺らは、いつになったら“あの依代”の中に納まって、ゆっくりのんびり寛ぐことができるのかね」大山が言った。
神たちは皆一斉に、ふう、と溜息をついた。
「正しい言葉って、何なんだろ」結城が、頭の上に両腕を組み合わせて乗せ、他の二人に目を向け問う。「昔風かな? 何々奉り、とか、何々ゆえ、とか使う感じのかな」
「何々せしむとかも言うのでしょうか」本原が問う。
「そうだね。あと、何々しぬる、とか」結城が答える。
「しぬれども、とかも言うのでしょうか」本原がさらに問う。
「うわー活用形難しいな。申し訳、ござりませぬるん」結城が例を挙げる。
「何だその卑猥な謝り方は」時中が批判的質問をする。
「古式ゆかしい謝り方だよ。申し訳ござりませぬるるん」結城が再度例を挙げる。
「何のローションだ」時中が再度批判的質問をする。
「俺達は、のんびりと過ごしていた」か細い声が聞えた。
三人ははっと息を呑み、それぞれ周囲を見回した。周囲には誰の姿もなかった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる