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第二章
森へ向かって
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俺は自分の部屋に戻り、なけなしの金を使って出発する用意をしていた。
「ふぅ…こんなもんで十分かな?」
俺が用意したのはナイフを数本、(ワンパンされるから)あまり意味はないが回復薬、攻撃力を強化する鬼人薬などのバフ系のアイテム、あと腹が減るかもしれないので携帯食料を買ってきた。
まあこれくらいで十分なのではないだろうか。他にも買いたいものがないわけではないが、有り金がもうあまりない。
俺は買ってきたものを袋に入れて準備を整える。その時チラっと掲示板の方を見てみる。一応臨時で仲間募集の紙を貼っておいたが反応はないらしい。やはりハイエルの言っていたことは正しかったようだ。
それに若干悲しい気持ちを感じつつ、それを振り払うように駆け出していく。
「おい待てお前」
そしてそんなところで待ったがかかってしまう。俺はその声の方へ振り向くと、そこにはギルドマスターであるハイエルが立っていた。
「お前、本当に行くのか?」
「…今更止めに来たんですか?」
「んな野暮なことは言わねぇよ…ホレ」
ハイエルは手に持っていた袋を渡して来た。
「…まぁ俺からのささやかな贈り物だ、ありがたく受け取れ」
そう言ってハイエルは頭を掻きながら言ってくる。おそらくまたフィリーナさんに何か言われてやってきたのだろうが、俺はありがたくそれを受け取ることにした。
中を開けてみると、小瓶が1つと謎の豆が大量に入っていた。
「…あの、これは何ですか?」
「あぁ、それは俺の家に突然生えてきた毒豆とメチャクチャ臭い謎の草だ」
本当にささやかすぎないだろうか。俺はすぐにツッコミを入れたくなるが、…いや、だがもしかしたら使えるところがあるから渡したのかもしれない、と思い、聞いてみた。
「…でも使えるものだから渡したん…ですよね?」
「あ?使えるわけねぇだろ、豆だってそんなに毒は強くねぇし、その草だってメチャクチャ臭くて腐敗能力が強いぐらいだ」
俺はわずかな希望にかけて聞いてみたが、それはあっさり打ち砕かれてしまった。ていうかなんでそんなもの渡したんだあんた。
「…つまりあんたはゴミを渡してきたってことですか?」
「まぁそうだな」
ハイエルは何食わぬ顔で言ってきた。
なんだこの人、俺が少しでもフォローしようとしていたのが馬鹿みたいになってくるじゃねえか。
俺はハイエルに対して、この人はダメだ、と絶望を抱き、それと同時に怒りが湧いてきた。そんな感情を抑えれず、俺は出発する前に一言『ファック』とだけ言って出て行くのだった。
○●○
俺はギルドを出ると、まっすぐ東の森へと進んでいっていた。
「…今思ったけど、さすがにハイエル嘘の場所を言ってるってことはないよな?」
俺の中でハイエルへの信用はほぼゼロになっていた。それにしても1日で知り合った人からの信用をゼロにするって、逆に才能ある気がする。…決して褒めてはいないが。
(…でもこんなことを考えても仕方ないしな、クラリスを助ける方法でも考えたほうがよっぽどいいよな)
俺はハイエルへの不満はまだ消えないが、頭を切り替えて、作戦を練り始めた。
(廃墟だったら隠れるところはあんまりなさそうだから、こっそり後ろから…なんてことは無理だよな。だったら…)
と俺はゲームの知識を総動員して、戦略を考えようとするが、
(あー、くそ!ゲームじゃ弱いキャラが強いキャラを倒す、なんてものはないから全然参考にならねぇじゃねえか!)
俺は基本的にRPGとかその辺しかやらない、格闘ゲームとかも一応やるが、今の状況ではあまり役に立たない。
今だけはなんかゲームがなんの役に立たないものに思えてきてしまう。
(まぁ、とにかく!ゲームみたいに単純じゃないしターン制なんかもないわけだから、読めない動きとかそういうのをしなきゃいけないよな…)
そうして歩きながら考えていた。
(相手は多分魔法士だから、それに対抗してナイフでも投げる?いや、ナイフには限りがあるし、避けやすいだろうし、よくないな。だったらー)
と、そうした時、俺はあることを思いついた。
「だったらナイフにロープでもつけてやれば良いんじゃね?」
ナイフに限りがあり、投げるだけじゃ動きが単純なので、ロープをつけてみては?という思考に至った。
うん、俺にしては良い考えではないのだろうか。
そう思って俺は店を探し、ロープを見つけて、それをナイフに、振り回しても離れないくらい強く結んだ。
「よし、これでいい感じなんじゃないのか?」
俺はロープを振り回し、木に向かって投げたりしてみた。
(おお!これはいいぞ!ロープをつけたから単純に射程が伸びるし、ロープはしなるから木に当ててから曲がったナイフで後ろから攻撃、なんてこともできる!)
それは使い勝手もよく、俺は、あれ?ひょっとしてメチャクチャ強い武器作っちゃったんじゃない?なんてことを考えていた。
しかし、そんな時、俺は集中を欠いてしまったのか、ナイフのキャッチに失敗した。
「あ、やべ…」
そして俺の体にナイフがぶすりと刺さり、俺の体力を削っていった。
そして俺の体力は一瞬にして削られ、地面に倒れてしまう。
(…なにやってんだ俺、アホみたいな死に方しちまったな)
そうして視界が暗転していった。
○●○
俺は目が覚めると教会にいた。
「…誰か俺を教会に運んでくれたのか?」
「うん、僕がここに運んだんだよ」
「そうなんですか、わざわざありがー」
そこで声が止まった。その理由は声の方へ振り返るとひとりの男が立っていて、その男は赤銅色のローブを羽織っておりどこか見覚えがあったためだ。
「…お前がリュークか?」
「おや、よく知ってるね。もしかして僕のことよく調べてくれたのかな?」
「そんなことはどうでもいい、なんで俺を助けた?」
「なんだい?助けなくても良かったのかい?」
なんだこいつは、話が全然進まねぇ。こいつの行動も全然読めねぇし。
「…あんたはクラリスさをさらった男だ。俺を助ける必要がないはずだろ」
「あぁ、そのことかい」
リュークは納得したようにして、一拍おいてから、
「僕は君と遊ぶつもりだったんだけどさ、それが見てみたら道中で死んじゃってるもんだから、生き返らせたんだよ。ほら、ずっとワクワクしながら待ってたのにそれが叶わないなんて嫌じゃない?」
リュークの口調は軽いが、そのフードで隠された顔には狂気とも言えるような笑みを浮かべていた。
「…クラリスをさらった理由は?」
「実験だよ。とある実験の、ね」
それだけ言って、リュークは話を打ち切った。
「そんなことはどうでもいいじゃないか。さあ、早く遊ぼうよ」
そう言ってリュークは不気味な笑みをさらに深めた。
「ふぅ…こんなもんで十分かな?」
俺が用意したのはナイフを数本、(ワンパンされるから)あまり意味はないが回復薬、攻撃力を強化する鬼人薬などのバフ系のアイテム、あと腹が減るかもしれないので携帯食料を買ってきた。
まあこれくらいで十分なのではないだろうか。他にも買いたいものがないわけではないが、有り金がもうあまりない。
俺は買ってきたものを袋に入れて準備を整える。その時チラっと掲示板の方を見てみる。一応臨時で仲間募集の紙を貼っておいたが反応はないらしい。やはりハイエルの言っていたことは正しかったようだ。
それに若干悲しい気持ちを感じつつ、それを振り払うように駆け出していく。
「おい待てお前」
そしてそんなところで待ったがかかってしまう。俺はその声の方へ振り向くと、そこにはギルドマスターであるハイエルが立っていた。
「お前、本当に行くのか?」
「…今更止めに来たんですか?」
「んな野暮なことは言わねぇよ…ホレ」
ハイエルは手に持っていた袋を渡して来た。
「…まぁ俺からのささやかな贈り物だ、ありがたく受け取れ」
そう言ってハイエルは頭を掻きながら言ってくる。おそらくまたフィリーナさんに何か言われてやってきたのだろうが、俺はありがたくそれを受け取ることにした。
中を開けてみると、小瓶が1つと謎の豆が大量に入っていた。
「…あの、これは何ですか?」
「あぁ、それは俺の家に突然生えてきた毒豆とメチャクチャ臭い謎の草だ」
本当にささやかすぎないだろうか。俺はすぐにツッコミを入れたくなるが、…いや、だがもしかしたら使えるところがあるから渡したのかもしれない、と思い、聞いてみた。
「…でも使えるものだから渡したん…ですよね?」
「あ?使えるわけねぇだろ、豆だってそんなに毒は強くねぇし、その草だってメチャクチャ臭くて腐敗能力が強いぐらいだ」
俺はわずかな希望にかけて聞いてみたが、それはあっさり打ち砕かれてしまった。ていうかなんでそんなもの渡したんだあんた。
「…つまりあんたはゴミを渡してきたってことですか?」
「まぁそうだな」
ハイエルは何食わぬ顔で言ってきた。
なんだこの人、俺が少しでもフォローしようとしていたのが馬鹿みたいになってくるじゃねえか。
俺はハイエルに対して、この人はダメだ、と絶望を抱き、それと同時に怒りが湧いてきた。そんな感情を抑えれず、俺は出発する前に一言『ファック』とだけ言って出て行くのだった。
○●○
俺はギルドを出ると、まっすぐ東の森へと進んでいっていた。
「…今思ったけど、さすがにハイエル嘘の場所を言ってるってことはないよな?」
俺の中でハイエルへの信用はほぼゼロになっていた。それにしても1日で知り合った人からの信用をゼロにするって、逆に才能ある気がする。…決して褒めてはいないが。
(…でもこんなことを考えても仕方ないしな、クラリスを助ける方法でも考えたほうがよっぽどいいよな)
俺はハイエルへの不満はまだ消えないが、頭を切り替えて、作戦を練り始めた。
(廃墟だったら隠れるところはあんまりなさそうだから、こっそり後ろから…なんてことは無理だよな。だったら…)
と俺はゲームの知識を総動員して、戦略を考えようとするが、
(あー、くそ!ゲームじゃ弱いキャラが強いキャラを倒す、なんてものはないから全然参考にならねぇじゃねえか!)
俺は基本的にRPGとかその辺しかやらない、格闘ゲームとかも一応やるが、今の状況ではあまり役に立たない。
今だけはなんかゲームがなんの役に立たないものに思えてきてしまう。
(まぁ、とにかく!ゲームみたいに単純じゃないしターン制なんかもないわけだから、読めない動きとかそういうのをしなきゃいけないよな…)
そうして歩きながら考えていた。
(相手は多分魔法士だから、それに対抗してナイフでも投げる?いや、ナイフには限りがあるし、避けやすいだろうし、よくないな。だったらー)
と、そうした時、俺はあることを思いついた。
「だったらナイフにロープでもつけてやれば良いんじゃね?」
ナイフに限りがあり、投げるだけじゃ動きが単純なので、ロープをつけてみては?という思考に至った。
うん、俺にしては良い考えではないのだろうか。
そう思って俺は店を探し、ロープを見つけて、それをナイフに、振り回しても離れないくらい強く結んだ。
「よし、これでいい感じなんじゃないのか?」
俺はロープを振り回し、木に向かって投げたりしてみた。
(おお!これはいいぞ!ロープをつけたから単純に射程が伸びるし、ロープはしなるから木に当ててから曲がったナイフで後ろから攻撃、なんてこともできる!)
それは使い勝手もよく、俺は、あれ?ひょっとしてメチャクチャ強い武器作っちゃったんじゃない?なんてことを考えていた。
しかし、そんな時、俺は集中を欠いてしまったのか、ナイフのキャッチに失敗した。
「あ、やべ…」
そして俺の体にナイフがぶすりと刺さり、俺の体力を削っていった。
そして俺の体力は一瞬にして削られ、地面に倒れてしまう。
(…なにやってんだ俺、アホみたいな死に方しちまったな)
そうして視界が暗転していった。
○●○
俺は目が覚めると教会にいた。
「…誰か俺を教会に運んでくれたのか?」
「うん、僕がここに運んだんだよ」
「そうなんですか、わざわざありがー」
そこで声が止まった。その理由は声の方へ振り返るとひとりの男が立っていて、その男は赤銅色のローブを羽織っておりどこか見覚えがあったためだ。
「…お前がリュークか?」
「おや、よく知ってるね。もしかして僕のことよく調べてくれたのかな?」
「そんなことはどうでもいい、なんで俺を助けた?」
「なんだい?助けなくても良かったのかい?」
なんだこいつは、話が全然進まねぇ。こいつの行動も全然読めねぇし。
「…あんたはクラリスさをさらった男だ。俺を助ける必要がないはずだろ」
「あぁ、そのことかい」
リュークは納得したようにして、一拍おいてから、
「僕は君と遊ぶつもりだったんだけどさ、それが見てみたら道中で死んじゃってるもんだから、生き返らせたんだよ。ほら、ずっとワクワクしながら待ってたのにそれが叶わないなんて嫌じゃない?」
リュークの口調は軽いが、そのフードで隠された顔には狂気とも言えるような笑みを浮かべていた。
「…クラリスをさらった理由は?」
「実験だよ。とある実験の、ね」
それだけ言って、リュークは話を打ち切った。
「そんなことはどうでもいいじゃないか。さあ、早く遊ぼうよ」
そう言ってリュークは不気味な笑みをさらに深めた。
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