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第三章

さて、これならどうかな?

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さて、このハーブをどう使う?

効果を見ても一瞬で相当強いとわかる。20倍だぞ、20倍。

これをうまく使えばアイツにも勝てるかもしれない、そう思えるほどだ。

俺は手持ちのアイテムを見てみる。
・鬼人薬
・回復薬
・硬化薬
・強走薬
・小型ナイフ
・ロープ

…あとハイエルからもらった毒豆か。

このハーブと合わせるとなると、鬼人薬で攻撃力を上げるか、硬化薬で防御力を上げるか、強走薬で足の速度を上げるか、だな。

だが、鬼人薬を使っても攻撃が当たらなければ意味がないし、硬化薬を使ってもアイツを倒せなければ意味がない。強走薬なんてこんな狭いところではあまり意味がないだろう。

…詰まる所決定打がない。

「…くそっ、何か良いものはねぇのか。『鑑定』、『鑑定』!」

俺は何度も手持ちのアイテムを鑑定していると、

幻惑の豆
・これを食した者を見た者に対して幻惑の効果
・現在は邪気を纏い、毒の効果が存在。環境の悪い土地で育ったことがうかがえる。

ハイエルからもらった豆から画面が表示された。

てゆうかなんだこの2つ目の文。これアレだろ、ハイエルが適当に栽培してたら生えてきちゃいました、みたいな感じだろ。うん、絶対そうだ。

俺が大きなため息を吐いたその時、カツンカツンと足音が聞こえてきた。間違いなくリューク。

くそっ、アイツが来た。どこに逃げる…上に通気口、よし、ここだ!

俺は数秒で判断して逃げていった。おそらく見つかってないだろう。

「あれー?どこにいったんだろ?」

と、登っている途中に下からそう聞こえてきた。よし、見つかってない。

「…『鑑定』」

俺は小声で先程の豆に『鑑定』を使い、出てきた情報を再度見てみる。

・現在は邪気を纏い、毒の効果が存在。

豆が変異したんなら、わざわざなんて言うだろうか。それに変異したなら別の効果が現れてもおかしくないし元の素材の情報なんて書くだろうか。なら何かを使えば『幻惑の豆』に戻るんだよな?

そう考えながら通気口を通っていくと、広いスペースに出た。

邪気を払う……聖水とかか?ここは教会だし聖水ぐらいあるよな?

とりあえずリュークに見つからないように聖水を探すことにした。

【20分後】

全っ然見つかんねぇ!!この辺りをくまなく探したはずなのに見つからないっておかしいだろ!

リュークがいないか気を張りながら探してたから十分に探せたとは言えないが、流石に見つからなさすぎる。他に探す場所とかあるか?

そう思って、とにかく探してない場所、と動き回っていると、

「あれ、最初の所に戻ってきた?」

俺が落ちた所へ戻ってきていた。上を見ると光が差し込んでいる。

上にならあるだろうか?…ありそうだよな、うん。よくよく考えればここは地下だし、上は教会だしありそうだ。

そうして俺は壁の出っ張ってる所に手をかけ、上へと登った。

…扉がいくつもある。1つ1つ見てくか。

俺は扉を開けていって中を確認していくと、一番奥の部屋に聖水が大量に置かれていた。

「よし、これを使ってー」

「何をするんだい?」

「ッ!?」

後ろにはリュークが立っており、俺はとっさに距離をとった。

…全然気づかなかった。一体いつからいたんだ?

「…どうやって後ろに?」

「別にどうってことはないよ。ちょっと気配を消して近づいただけさ」

そうリュークは何食わぬ顔で言ってくる。

…おかしい、周りには注意を払ってはいたんだが。それでも気づかれずに近づいてくるなんて相当の手練れってことじゃねぇか。今更すぎるが、勝てるか?…いや、諦めるな。リュークはまだ俺を殺そうとはしないはずだ。

俺は自分を奮い立たせ、逃げる事に専念した。

そうして走り出そうとした時、目の前で爆発が起きた。

「……な」

振り向くとリュークが爆撃魔法を打っていた。

「今のは警告。次は、狙うからね♡」

その顔はまっすぐ俺を見据えていた。

…嘘、だよな?
今の俺には勝算なんて全然ないし、そんなところで急に真面目になられても困るんだけど!

「おかしいだろ、って顔してるけど、僕もう疲れてきたんだよ。まぁでも良かったら最後くらい魅せてほしいね?」

そう言って腕を前に構えた。

俺はそれに反応してとっさに前に飛び込むと、俺がさっきいた所から爆発が起きた。

おい!爆発の衝撃で地面に穴空いてんぞ!?

こいつはやばい!早く豆を聖水に!

そう思って俺はとっさに豆を聖水の中に入れる。すると何かが表示された。

3:00

その表示が2:59、2:58と減っていく。残り3分ということだろう。

おい、ふざけんな!時間ねぇんだぞ、もっとパッとできねぇのか!?

俺は声を荒らげたくなる衝動に駆られる。当たり前だ、1分1秒が生死を分けるような状態なんだぞ。

「どこを見てるんだい?よそ見していると死ぬよっ!」

「くっ…」

俺の気持ちなんてつゆ知らず、リュークは魔法を打ってくる。本当にギリギリ避けるのが精一杯だ。

残り2:40

よし、落ち着け俺、焦る気持ちはわかるが今は考える時だ。…まずどうやって3分生き延びるか。逃げ続けても体が持つかどうかわからん。だったら、話で時間を稼ぐしかねぇか。

俺は1つ深呼吸をして、

「…なぁ、クラリスを攫ったの、理由教えてくれよ」

関係のないことを話した。

「それなら言っただろう?実験だって」

「その内容だよ。別に教えてくれたっていいじゃねぇか、冥土の土産にでもよ」

「冥土の土産?そんなことを言うのは止めてくれよ。まだ僕は君を殺す気はないんだから」

「…さっきもう飽きたとかいってただろうが?」

「ふふ、それもそうだね。…『ブレイズ』!」

「おわぁ!?」

突然リュークが魔法を撃ってきやがった。この不意打ちに俺は反応が少し遅れ、髪が焦げそうなくらい近くを炎が通っていった。

「殺す気は無いって今言ったろ!?」

俺はリュークを睨みつける。

「あはは、ごめんごめん。でも君も冥土の土産にーとか何とか言って、避けてたしおあいこじゃないかな?」

とか言ってリュークは笑ってくる。…足下見てくるなコイツ。

俺はチラッと時間を見ると、

残り1:30と示されていた。

折り返しまで来たか…このままいけるか?

「…お前つくづく見通してくるよな。なんなんだ?心を読む魔法でも持ってんのか」

「ふふ、そんな魔法なんて存在しないよ。ただ表情や口調から予想してるだけだよ。それにさっきから色々とうそぶいているようだけど…こういう茶番はあんまり好きじゃないんだよね」

「…はは、茶番?なんのことやら」

俺は嫌な汗をかきつつ、乾いた笑いを見せた。…このまま会話を終わらせる訳にはいかないのだから。

「顔が引きつってるよ?少しは茶番に付き合ってあげたけど、そろそろ限界じゃない?」

時間は…残り50秒。

俺はとっさに逃げようとした、その時、

「『フリーズ』」

リュークは氷の魔法を唱えて俺の足を凍らせる。俺はそのせいで体制を崩し、床に倒れてしまった。

残り40秒。

「君は逃げるのが得意なようだからね、それに極端に体力も低い。だからこうさせてもらったよ」

俺は懐からナイフを取り出し、氷を砕こうとする。

「おっと止めておいた方が良いよ、うっかり体に刺してしまったら死んじゃうじゃないか。僕が虚しくなるだろう?」

リュークがそんなアホみたいなことを言ってくる。しかし今の俺にはそんな声は聞こえない。

「クソッ、クソクソクソクソクソッ!!!なんで全然壊れねぇんだよ!!」

俺はナイフで氷をガンガンと殴っているが、そんな行動も虚しく、全く壊れる気配がしない。

「…君と過ごした時間は短かったけど、案外楽しかったよ」

リュークがそう言って一歩一歩近づいてくる。

「やめろ…くるな、来るなぁぁぁ!!!」

俺はナイフを夢中で振り回しながらそう叫んだ。

「アハハ!とうとう壊れたかい?良いね!凄く良いよ!」

俺は頭が錯乱して、視界すらも歪んでいたー。

そんな時、ポーンと軽やかな音が鳴り、俺は一気に現実に戻された。

…それは豆の浄化が完了した音だった。

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休んでいて申し訳ありませんでした!!!
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