―RUBER異譚― 金色の貴方

桃井すもも

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金髪眼鏡。
フレデリックに初めて会った時にそう思った。

金髪、眼鏡、萌え。

イーディスは金髪が好物だ。眼鏡は更に大好物だ。目の前に座った兄の友人が金髪な上に眼鏡男子だった事に、イーディスは歓喜した。歓喜のあまり心の中で連続前転をした。

普段は唐変木で木偶の坊な兄を見上げる。
兄、グッジョブ。

「妹のイーディスだ」

前言撤回。もっとまともな紹介をしろ。

「妹のイーディスです」

いや自分。もっとまともな紹介をしろ。

そんな阿呆な兄妹をどう思うのかフレデリックは、

「友人のフレデリックです」

と、もっとまともな紹介が出来ないのかねと思う自己紹介をした。


イーディスが眼鏡男子好きなのには理由がある。
幼い頃に亡くなった父が眼鏡男子だった。父親が大好きだったイーディスは、雛鳥が刷り込みをされる様に、大好き=眼鏡男子になった。金髪好きは絵本で読んだ憧れの王子様が金髪だからだろう。

真っ赤な髪の兄と違って母親譲りのブルネットのイーディス。日の光を受けて赤々と燃える様な兄の赤髪が目に痛くて、思わずフレデリックを見た。金髪、眼鏡、萌え。

そんなこんなでイーディスはフレデリックと知り合った。そういう理由でフレデリックに恋をした。
どういう理由かは不明だが、恋とはある日突然降って来る。
ひと目会ったその日から、恋の花は満開だった。


イーディスは子爵家の子女である。母は子爵家の当主で、入婿であった父が亡くなった後、年下の貴族令息を婿に迎え入れた。

義父は悪い男ではないが少しばかりウザかった。

「見たよ、イーディス。君が恋に堕ちるとこ」
「へえ」
「父親にその言い様は頂けないね」
「何処が父親よ。去年まで私の隣りの席に座っていたくせに」

義父のヘスターは、イーディスの学園時代の同級生だ。どうして母はこんな若いツバメに手を付けたのか。態々わざわざ十八も年下の男爵家の味噌っカスに手を付けなくても。
ヘスターもヘスターだ。態々十八も年上の女子爵に一目惚れなんてしなくても。

母は幼い頃から厳しい当主教育を受けて、貴族学園には入らずに学者紛いの教師達から教えを受けて学んだ後に、十五で父と婚姻を結んだ。
イーディスが八歳の年に父が亡くなり、それから十年、兄とイーディスを育てながら子爵家当主として孤軍奮闘して来た女傑である。

艶々のブルネットの髪に濃い翡翠の瞳。イーディスの髪色は母譲りである。すっきりと背筋が伸びて知的で強くて優しくて、兎に角、完全無欠な母の初恋がヘスターだった。

なんだそれ。父があまりに不憫。
政略結婚の父を母は「それなりに」愛していたと宣った。

イーディスの貴族学園の卒業式に参席して、母はイーディスの同級生であったヘスターに恋をした。
面倒だったのは、そのヘスターもまた、ひと目会ったその時にイーディスの母と恋に堕ちたのだった。


「君には幸せになって欲しいんだ。なにせロレインの娘なのだから」

どの口が言う。この世の春を謳歌して絶賛ラブラブ中なヘスターの言葉はイーディスの胸に響かない。

「眼鏡男子、好きなんだろう?金髪、好きなんだろう?」

胡散臭いペテン師の様な台詞を吐くヘスターを睨み付ける。顔だけは綺麗な顔をしやがって、自慢の母を堕としてしまった美丈夫め。あれ?これって褒め言葉ではないか?

何処に弱点があるのだろう。目の前の同い年の義父を、イーディスは目を糸の様に細めて眺めた。


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