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独活の大木、木偶の坊。
言い様なら他にもあるが、イーディスの兄はガタイが良い。その上勤勉で、その上生真面目な上に身体能力にも長けている。どれだけ上を重ねるのか。
背の高い兄を見るのに、首が曲がるほど見上げなければならない。しかも日の光の下だと鮮やかな赤髪がギラギラ燦いて目が痛くなる。
だが、そうしないと仕方が無いので、薄目を開けて兄を見上げた。
「お兄様、フレデリック様から文を頂戴したの」
「うん、知っている。その文をお前に渡したのは私だ」
そうだったかな?
強烈な印象を与えるクセに影の薄い兄をイーディスは時々忘れてしまう。
「それで、フレデリックはなんと?」
そう聞かれて、あれ、お兄様そこにいたの?と思い出した。ジェフリーはずっとイーディスの側にいた。
「観劇のお誘いを受けたの」
観劇に行く感激。
「行ってくればよいだろう」
あれ?お兄様、いつからそこにいたの?
ずっと側にいたジェフリーにイーディスは怪訝な眼差しを向けた。
「いいじゃない、行って来なよ、イーディス。デートだよデート」
お前には聞いとらん。それよりお前もいつからそこにいたんだ。
怪訝な眼差しを胡乱な眼差しにシフトチェンジして、イーディスはジェフリーと並び立ったヘスターを見た。
「ロレインがワンピースを仕立てている。最近の令嬢に人気のドレス店に頼んでいるよ。おめかしして楽しんでおいで」
む!母を名呼びするなど百年早い。ブルック子爵と呼びなさい。
ヘスターは母の最愛であるのに、愛娘には塩対応をされている。
だがしかし。ヘスターは甘い顔に似合わず根性がある。そうでなければ親子ほど年の離れた女傑に婿入りなど出来まい。
悔しいかな。そんなヘスターにも当然母にも、あと朴念仁なのに影が薄いのに何故か存在感がある兄にも、結局誰にもイーディスは勝てない。
だって、平々凡々、何の取り柄も特徴も面白味も無い、無い無い尽くしの令嬢なのだもの。
そんな貴族社会の塵芥の様なイーディスを、真逆の大好物、金髪眼鏡がデートに誘ってくれた。
夜空を眺めながらイーディスは思った。
フレデリック様。貴方は夜空に煌めく一番星ね。知ってる?一番星って金星なのよ。金髪の貴方にぴったりね。
じゃあ、私は何星だろう。焦茶色の髪に翠の瞳。そこいらにいくらでも転がっている名も無い星。
イーディスは知らない。
名も無い星に名を付けるなら、それは見つけた人間の名になる事を。見出した人間の名を与えられて、星は天上で瞬き煌めく事を。
そうして、虎視眈々と、自分の価値も魅力もてんで理解しないすっとぼけた子爵令嬢を、その兄に頼み込んで手に入れようとする腹黒金髪眼鏡男子がいることを。
言い様なら他にもあるが、イーディスの兄はガタイが良い。その上勤勉で、その上生真面目な上に身体能力にも長けている。どれだけ上を重ねるのか。
背の高い兄を見るのに、首が曲がるほど見上げなければならない。しかも日の光の下だと鮮やかな赤髪がギラギラ燦いて目が痛くなる。
だが、そうしないと仕方が無いので、薄目を開けて兄を見上げた。
「お兄様、フレデリック様から文を頂戴したの」
「うん、知っている。その文をお前に渡したのは私だ」
そうだったかな?
強烈な印象を与えるクセに影の薄い兄をイーディスは時々忘れてしまう。
「それで、フレデリックはなんと?」
そう聞かれて、あれ、お兄様そこにいたの?と思い出した。ジェフリーはずっとイーディスの側にいた。
「観劇のお誘いを受けたの」
観劇に行く感激。
「行ってくればよいだろう」
あれ?お兄様、いつからそこにいたの?
ずっと側にいたジェフリーにイーディスは怪訝な眼差しを向けた。
「いいじゃない、行って来なよ、イーディス。デートだよデート」
お前には聞いとらん。それよりお前もいつからそこにいたんだ。
怪訝な眼差しを胡乱な眼差しにシフトチェンジして、イーディスはジェフリーと並び立ったヘスターを見た。
「ロレインがワンピースを仕立てている。最近の令嬢に人気のドレス店に頼んでいるよ。おめかしして楽しんでおいで」
む!母を名呼びするなど百年早い。ブルック子爵と呼びなさい。
ヘスターは母の最愛であるのに、愛娘には塩対応をされている。
だがしかし。ヘスターは甘い顔に似合わず根性がある。そうでなければ親子ほど年の離れた女傑に婿入りなど出来まい。
悔しいかな。そんなヘスターにも当然母にも、あと朴念仁なのに影が薄いのに何故か存在感がある兄にも、結局誰にもイーディスは勝てない。
だって、平々凡々、何の取り柄も特徴も面白味も無い、無い無い尽くしの令嬢なのだもの。
そんな貴族社会の塵芥の様なイーディスを、真逆の大好物、金髪眼鏡がデートに誘ってくれた。
夜空を眺めながらイーディスは思った。
フレデリック様。貴方は夜空に煌めく一番星ね。知ってる?一番星って金星なのよ。金髪の貴方にぴったりね。
じゃあ、私は何星だろう。焦茶色の髪に翠の瞳。そこいらにいくらでも転がっている名も無い星。
イーディスは知らない。
名も無い星に名を付けるなら、それは見つけた人間の名になる事を。見出した人間の名を与えられて、星は天上で瞬き煌めく事を。
そうして、虎視眈々と、自分の価値も魅力もてんで理解しないすっとぼけた子爵令嬢を、その兄に頼み込んで手に入れようとする腹黒金髪眼鏡男子がいることを。
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