25 / 48
婚約者1
しおりを挟む
デイビッドとの婚約が整ってから直ぐ、ヴィオレットはデイビッドと話しをする機会を得た。
二人の余所余所しい空気を察した兄が、妹への言付けをデイビッドに託した。
託した体で、会話を交わす機会を与えた。
そろそろ春も終わりを迎える。
初夏の風が窓から吹き込んでくる。
庭園に香りの良い花が植えられているのだろう。
微かに甘い香りが風に乗って香る。
「ヴィオレット王女殿下」
「ヴィオレットと。」
「...」
自分から呼んでおいて、敬称を外せと云うと黙り込んでしまった。
「ノーフォーク小公爵」
「デイビッドと」
「...」
だから、ヴィオレットも敬称で呼ぶと、デイビッドは名で呼べと云う。
暫しの間、お互い何と呼ぶのか決定しないまま、お茶を含む。
ああ、もう!
気楽な学園生活に馴染み切っていたヴィオレットは、今やなんちゃって王女だと自負している。
王侯貴族に付きものの、やんわりふんわり回りくどい物言いに焦れて来た。
それに、この機会に確認しなければならない事がある。
折角兄が機会を与えてくれたのだ。
時間は有限である。
「では、デイビッド。」
ヴィオレットが名を呼ぶと、面を上げたデイビッドがはっとした表情をする。
この男、まさかこの場でお茶を堪能していたのだわ。
とんでもない男だと、心中ぷりぷりしながらヴィオレットは本題に突入する。
「貴方はこの婚姻を受け入れているのですか?」
聞いた所で、今更反故に出来よう筈も無いのだが、それでも聞いておきたかった。
ディビッドが本心この婚姻関係を望んでいないのであれば、自分達の結婚生活への覚悟を持たなければならない。
「貴女は?」
この男、質問に質問で返してきたわ。
ヴィオレットは再び心中ぷりぷりする。
二人の余所余所しい空気を察した兄が、妹への言付けをデイビッドに託した。
託した体で、会話を交わす機会を与えた。
そろそろ春も終わりを迎える。
初夏の風が窓から吹き込んでくる。
庭園に香りの良い花が植えられているのだろう。
微かに甘い香りが風に乗って香る。
「ヴィオレット王女殿下」
「ヴィオレットと。」
「...」
自分から呼んでおいて、敬称を外せと云うと黙り込んでしまった。
「ノーフォーク小公爵」
「デイビッドと」
「...」
だから、ヴィオレットも敬称で呼ぶと、デイビッドは名で呼べと云う。
暫しの間、お互い何と呼ぶのか決定しないまま、お茶を含む。
ああ、もう!
気楽な学園生活に馴染み切っていたヴィオレットは、今やなんちゃって王女だと自負している。
王侯貴族に付きものの、やんわりふんわり回りくどい物言いに焦れて来た。
それに、この機会に確認しなければならない事がある。
折角兄が機会を与えてくれたのだ。
時間は有限である。
「では、デイビッド。」
ヴィオレットが名を呼ぶと、面を上げたデイビッドがはっとした表情をする。
この男、まさかこの場でお茶を堪能していたのだわ。
とんでもない男だと、心中ぷりぷりしながらヴィオレットは本題に突入する。
「貴方はこの婚姻を受け入れているのですか?」
聞いた所で、今更反故に出来よう筈も無いのだが、それでも聞いておきたかった。
ディビッドが本心この婚姻関係を望んでいないのであれば、自分達の結婚生活への覚悟を持たなければならない。
「貴女は?」
この男、質問に質問で返してきたわ。
ヴィオレットは再び心中ぷりぷりする。
2,016
あなたにおすすめの小説
初恋にケリをつけたい
志熊みゅう
恋愛
「初恋にケリをつけたかっただけなんだ」
そう言って、夫・クライブは、初恋だという未亡人と不倫した。そして彼女はクライブの子を身ごもったという。私グレースとクライブの結婚は確かに政略結婚だった。そこに燃えるような恋や愛はなくとも、20年の信頼と情はあると信じていた。だがそれは一瞬で崩れ去った。
「分かりました。私たち離婚しましょう、クライブ」
初恋とケリをつけたい男女の話。
☆小説家になろうの日間異世界(恋愛)ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18)
☆小説家になろうの日間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18)
☆小説家になろうの週間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/22)
あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
月夜に散る白百合は、君を想う
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。
彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。
しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。
一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。
家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。
しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。
偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる