ヴィオレットの夢

桃井すもも

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婚約3

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「デイビッドが無粋なものだから、貴女に失礼をしているのではなくて?」

ソフィア公爵夫人は、私を案じてくれている。

幼い頃、お祖母様がご存命であった頃、私はこの叔母と時折お会い出来ていた。

その時は、兄や姉達、デイビッドも一緒で、多分病を得たお祖母様を見舞いに登城していたのだろう。

私の濃い菫色の瞳はお祖母様の生家の色で、容姿も兄弟姉妹の中で最もお祖母様に似ていると云われていた。 

父王は側妃腹であったが、その側妃様はお祖母様の血縁から選ばれており、お祖母様と私達は、遠くとも血が繋がっている。

お祖母様と容姿がよく似て、髪と瞳の色まで似ている叔母と私。

お祖母様は思うに、私を愛して下さっていたのだろう。六の姫と云う、非力で影の薄い、母を失望させた私の将来を案じておられたのだろう。

そんなお祖母様のお心を酌んでか、叔母もまた、幼い私を可愛がって下さった。
膝の上に抱いて、女の子は良いわね、と頭を頬を撫でて下さった温もりを覚えている。

その頃には、もう自分が母から疎まれているのを薄々気付き始めていたので、叔母の温もりが嬉しかったことも覚えている。

だから叔母が「可愛いヴィオレット、貰っていこうかしら。」

と言った言葉を、父王がどこからか聞いていたのではないかと、この婚姻に絡めて疑ってしまう。

因みに、その時兄と姉たちが、だめだだめよと猛反対をして、貰われ子にならず済んだと安堵した事も覚えている。


********


「婚姻のドレスなのだけれど、」
ひと口お茶を含んでから、

「来週にはお直しが終わるの。最終確認をしましょう。」

婚姻のドレスは公爵夫人が降嫁した際のドレスを譲り受ける事となった。

お祖母様が手ずから生地を選び、王宮の縫い子達が一年を要して縫い上げた、国の至宝と云われたドレスである。

公爵邸には姿絵が幾つも飾られているが、その中でひと際美しく目を惹かれるのは、夫人の婚姻ドレスを纏った姿絵である。

近隣諸国でも有名であった聡明な美姫。
数多の王族に輿入れを望まれながら、呆気無く臣下に降りた王女。

その立ち姿は、絵姿からも匂い立つ麗しさが感じられて、見るものを惹きつける。

そんな大切なドレスを、と遠慮すると、貴女もノーフォークの一員になるのだから、どの道同じことでしょう?と夫人は笑った。

胸元を少し補正したのを、来週最終確認をしようとのことなのだ。

因みに、胸元は小さく直された。
叔母のお胸の豊かさに、私は敗北したのだった。


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