ヴィオレットの夢

桃井すもも

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婚約2

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「ヴィオレット、久しぶりね。漸く貴女に会えたわ。」


土産に持って来た帝国産の紅茶を、早速手ずから淹れながらノーフォーク公爵夫人が言う。

「何年ぶりかしら、王太后(お母様)がお元気でいらした頃だから。」
10年は過ぎているわね。

そう夫人が続ける。

ノーフォーク公爵夫人。
父王の妹にして、前第一王女。

ノーフォーク公爵家に降嫁して公爵夫人となられた。

私の叔母、そしてデイビッドの母である。


デイビッドとの婚約は成立した。

帰国した日の夜、晩餐の場で父王から伝えられたデイビッドとの婚約は、「命(めい)」であって、既に決まった事であった。

喩え、私がそれを知らずにいたとしても、父王の言った事が結果であり、事実である。

私の帰国と婚約については、先日、新聞でも国民に発表されている。

半年後の婚姻式に備えて、急ピッチで準備が進められているところである。

半年後なんて、有り得ない。
そんな短い婚約期間など、王家の婚姻としては異例のことであろう。

私は、嬉しそうに微笑む叔母を見つめる。

こうして二人向かい合うと、まるで真(まこと)の母娘に見える。

それ程、私達はよく似ている。

白銀に見える薄い金の髪。

但し、瞳は私は濃い菫色で、叔母は薄い紫色である。

因みに、デイビッドの瞳のシトリンは、ノーフォーク公爵の色だ。

「本当に。美しくなったわ。」
あら、これでは自画自賛ね。

そっくりな容姿を褒めたことを自身を褒めているようだと叔母が笑った。



叔母、ソフィア公爵夫人と父王は兄妹だが、父王は側妃腹である。

王太后様のお腹(はら)からお生まれになったのは、ソフィア公爵夫人唯一人である。

女王も立ったこの国で、王位継承権は当然叔母にもあり、前王・祖父の髪色と祖母の容姿を受け継ぐこの叔母は、正統な王位継承者として認められていた。

周囲の思惑は別として、兄妹は仲が良かった。我が国では、側妃選定の決定権は王妃にあり、側妃は王妃の生家一族から選ばれている。王妃と側妃は、互いの立場を認めていただろう。

夫を共有するなんて、決して面白いものではないと私は思うのだが、そんな考えだから王族らしくないと言われるのかもしれない。

だがしかし、ソフィア王女は王位を望まなかった。

早々にノーフォーク公爵家へ降嫁してしまった。

父王は、どこかでそれを気にしているのだろうか。

私とデイビッドの婚姻に、父王の感情は関係しているのだろうか。


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