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夫人のお願い
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デイビッドが眉を顰める。
「何故。」
「駄目でしょうか?」
答えないデイビッドの顔には「駄目だ」と書いている。
ヴィオレットは帝国行きの願いを乞うた。
行き先はカニンガム侯爵領である。
懐かしい彼の人、アルフレッドに文を出した。
貴方の庭を見せてほしい。
返信には「ようこそ、我が領へ」とあった。
いつかと同じ言葉に、ヴィオレットは時の隔たりを忘れて懐かしい少年を思い出した。
彼らしいと笑みが溢れる。
あの薬草園を抱えるカニンガムの庭園が見たかった。
岩肌から覗く青い花を、もう一度見たいと思った。
そして、その旅に子供達を連れて行きたいと思った。
そのままを夫に願った。
デイビッドは多忙である。
兄の側近であるし、元より纏まった休暇など取ったためしがない。
共に旅をするなど無理であった。
十分な従者を伴う、と言っても
鉄道での安全な旅路だ、と言っても
眉間の皺が戻らない。
この数年を掛けて、帝国への鉄道網は随分と整った。
近隣の国を経由してカニンガム侯爵領へも通じる路線が出来ていた。
トドメにヴィオレットは言った。
「旦那様、一生のお願いです」
デイビッドは一生のお願いに弱かった。
もう一度「お願い」と言われて陥落した。
「一生のお願い」と云う言葉は凄まじいパワーワードなのだと、一部始終を見ていた使用人達は思った。
邸内では暫くの間、使用人達の内で「一生のお願い」が流行った。
「何故。」
「駄目でしょうか?」
答えないデイビッドの顔には「駄目だ」と書いている。
ヴィオレットは帝国行きの願いを乞うた。
行き先はカニンガム侯爵領である。
懐かしい彼の人、アルフレッドに文を出した。
貴方の庭を見せてほしい。
返信には「ようこそ、我が領へ」とあった。
いつかと同じ言葉に、ヴィオレットは時の隔たりを忘れて懐かしい少年を思い出した。
彼らしいと笑みが溢れる。
あの薬草園を抱えるカニンガムの庭園が見たかった。
岩肌から覗く青い花を、もう一度見たいと思った。
そして、その旅に子供達を連れて行きたいと思った。
そのままを夫に願った。
デイビッドは多忙である。
兄の側近であるし、元より纏まった休暇など取ったためしがない。
共に旅をするなど無理であった。
十分な従者を伴う、と言っても
鉄道での安全な旅路だ、と言っても
眉間の皺が戻らない。
この数年を掛けて、帝国への鉄道網は随分と整った。
近隣の国を経由してカニンガム侯爵領へも通じる路線が出来ていた。
トドメにヴィオレットは言った。
「旦那様、一生のお願いです」
デイビッドは一生のお願いに弱かった。
もう一度「お願い」と言われて陥落した。
「一生のお願い」と云う言葉は凄まじいパワーワードなのだと、一部始終を見ていた使用人達は思った。
邸内では暫くの間、使用人達の内で「一生のお願い」が流行った。
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