偶然なんてそんなもの

桃井すもも

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思い違いは程々に

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 白金の癖のない真っ直ぐな髪。
 
 薄紫に煌めく瞳。アメジストよりも綺麗な君の瞳。

 すらりと伸びた白く靭やかな手足。
 指先までほっそりと、触れたら壊れてしまいそうな君の肢体。

 名前の通りに麗しい僕の婚約者、フルール百合の花

 聡明で賢明な君なのに、何でそんなに間が悪い。偶然?
 あんな所にいるなんて。

 人気の無い放課後の図書室の書架の陰。
 よりによって、あの男と一緒だなんて。

 僕以外の男に手を掴まれて、二人きりでベンチにいるなんて。

 ちょっと君をどうにかしたくなってしまうよ。

 よりによって、あの男と一緒に帰るだなんて。
 家族?知るかそんな事。

「昨日君と帰れなかったから、ちょっと街歩きをしたんだよ」

 そう言って君の髪に触れる。
 ついでに頬を何気を装い撫でてやる。

 白金の艷やかな君の髪に、黒百合の髪飾りを着けてあげる。

「ああ、とても良く似合っている(僕の色を纏って)」
 食べちゃいたい。食べて良いかな?フルール。

 白い肌が真っ赤に染まって、薄紫の瞳がうるうる潤む。

 もう、このまま邸に戻ろうかな。学園なんて行かなくても良くないか?

 甘い囁き?巷で人気?
 良く解らないけど、どうやら君も僕のことを解っていないらしい。

 君への想いは彼女が思うような気持ちではないよ。そんなぬるくて軽くて甘いものじゃあない。

 はあぁ、好き、好き、大好き、全部好き。
 悲しい位、君の事が好きだ。

 だから、お別れはお手柔らかに等と巫山戯た言葉を取り消してくれないかな。

 いつも僕が君を物陰から覗いているのを知っている?

 君を愛してる。
 君を幸せにする。

 君を手放すなんて有り得ない。
 君には僕だけで良いよね。僕じゃなくちゃ駄目だよね。

 何処もかしこも真っ赤な君の手を取って、指先に口付ける。

 白百合の君が益々赤く染まって、潤む瞳は泣きそうだ。もっともっと泣かせたい。

 思い違いも程々にね。
 次はないよ?君は僕だけのものなのだから。
 

 End


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