王妃の手習い

桃井すもも

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セシルへ1

帝国学園は目抜き通りに学び舎を構えている。

母国では、学園は閑静な郊外に広々と建てられていたので、新鮮な驚きを感じた。

歴史のある帝都に於いて、古の学者達が学び意見を交わした場所こそが、現在の学園なのだという。

そんな恵まれた環境にあった為、オフィーリアは度々街に出る経験を得た。

時にはヘンドリックやアリスティアを交えた学友と、時にはウォルポール侯爵夫人に連れられて。

国内経済が安定し治安の良い帝都は、裏道さえ気を付ければ令嬢の街歩きも比較的安全なもので、オフィーリアは市井に交わり街並みを楽しんだ。

そんなある日、オフィーリアは書店に立ち寄った。

学園に程近いその書店は文具や楽器も扱う複数階を有する大型店舗で、見て歩くだけでも楽しめた。

そこでオフィーリアは絵本を探した。

幼い弟のセシルがもうすぐ誕生日を迎える。

セシルの生後、程なくして王太子の婚約者候補となって王都へ移ったオフィーリアは、現在のセシルの顔を母が送ってくれた絵姿でしか知り得ない。

それはセシルも同様で、たった二人きりの姉弟は、実物の互いの顔を知らないのだ。

セシルは3歳になる。
文字は読めずとも、挿絵だけでも十分楽しめるだろう。

印刷技術の発達している帝国では、比較的安価で書籍が買える。

年齢より少しだけ上の幼児向けの絵本を数冊選ぶ。

冒険譚であったり、美しい野鳥の挿絵が描かれているものであったり、帝国に伝わる童話であったり。

次の誕生日まで飽きずに読めそうなものを選んでゆく。

セシル、セシル。
どうか貴方が幸せでありますように。

姉様は貴方を愛しているのよ。
とてもとても愛しているの。

貴方の幸せを願っている。

絵姿のセシルを思い浮かべながら、一冊一冊丁寧に選んでゆく。

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