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お飾り王妃の助言
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「そこのお前」
ブリジットの物言いは高圧的である。
学園に君臨する姉達を見て、間違えて覚えた。
けれども、幼子の頃から王子&侍従&侍⋯⋯諸々引き連れて王城を闊歩していたので、今更、誰も何も言わない。
「どうなさいましたか、王妃様」
「料理長」
ブリジットの幼い頃から互いに知る仲である。
「はい、王妃様、何か召し上がりたい野菜でも?」
「ええ、隣国のほくほく芋が、あ、違うわ」
違うの違うのと片手をふりふり振って
「そこの坊や」
先日サーチした見習い少年に声を掛けた。
「は、は、は、はぃ~」
王妃の呼び掛けに恐れ慄く見習い少年。
「お前、塩と砂糖を間違えたわね」
ああ、もうこれは縛り首だ。父さん母さんさようなら。僕は塩と砂糖を間違えて王妃様に処されます。
思わず首に掛けていたロザリオを取り出し握る。
「いいのよ、別にそれは。けれど、あれが賓客であったならお前を庇えないわ」
トントン、と砂糖と塩の入った壺を指で叩く。
「容器の色を変えるか"SALT " "SUGAR"の表示をなさい」
そう見習い少年に告げると、
「王妃様、ぼ、僕、あ、私は字が読めません⋯⋯」
「なんですって!」
ブリジットは愕然とした。
この国の識字率の高さは大陸諸国でも有名である。なのに、王の膝元、王城に働く使用人に文盲が存在するとは。
これはロビン案件ね。
ブリジットの「思考が声に出ちゃう癖」にすっかり慣れている料理長が、
「王妃様、この者は最近私が親戚筋より引き取った者なのです。貧しい田舎育ちで満足に学ぶ事が出来ませんでした」
ですから御勘弁願います、と言う。
何処かしら、その貧しい地域とは。
「王都より北に位置します村でして、」
ああ、彼処。ここ数年の冷害は酷かった。
思考が声に駄々漏れのブリジットを気にする風も無く料理長が言うことに、ブリジットは覚えがあった。
これもロビン案件ね。
「重要な情報をありがとう」
そう、料理長に言ってから、
「お前、まずは味見をすることね。それから沢山お食べなさい。お前の食い扶持くらい、私がなんとでもするわ」
それと、と続ける。
「ひもじい思いをさせた国王と王妃を許せとは言わないわ。もっと励むから、お前、そこで私達を見張っていなさい」
お前の神が共にいるでしょう、そうロザリオを握りしめる手を指さして、戻っていった。
今晩も王は羽根布団の調査にくるだろう。
この案件、丸投げするわ。
ロビン、貴方ならどうする?
毎晩毎晩、夜な夜な布団に入り込む鬱陶しい夫の顔を思い浮かべる。
貴方なら必ず克服するでしょう?
鬱陶しい夫ではあるが、ブリジットは彼の力量を誰よりも信じている。
そのロイヤルブルーの瞳はどんな些事も見逃さないはず。
信じてるわ、ロビン。
軽快な足音が近づいて来るのを羽布団の中で聞きながら、ブリジットは平素であれば寝た振りを決め込みたいところであったのをぐっと堪らえた。
ブリジットの物言いは高圧的である。
学園に君臨する姉達を見て、間違えて覚えた。
けれども、幼子の頃から王子&侍従&侍⋯⋯諸々引き連れて王城を闊歩していたので、今更、誰も何も言わない。
「どうなさいましたか、王妃様」
「料理長」
ブリジットの幼い頃から互いに知る仲である。
「はい、王妃様、何か召し上がりたい野菜でも?」
「ええ、隣国のほくほく芋が、あ、違うわ」
違うの違うのと片手をふりふり振って
「そこの坊や」
先日サーチした見習い少年に声を掛けた。
「は、は、は、はぃ~」
王妃の呼び掛けに恐れ慄く見習い少年。
「お前、塩と砂糖を間違えたわね」
ああ、もうこれは縛り首だ。父さん母さんさようなら。僕は塩と砂糖を間違えて王妃様に処されます。
思わず首に掛けていたロザリオを取り出し握る。
「いいのよ、別にそれは。けれど、あれが賓客であったならお前を庇えないわ」
トントン、と砂糖と塩の入った壺を指で叩く。
「容器の色を変えるか"SALT " "SUGAR"の表示をなさい」
そう見習い少年に告げると、
「王妃様、ぼ、僕、あ、私は字が読めません⋯⋯」
「なんですって!」
ブリジットは愕然とした。
この国の識字率の高さは大陸諸国でも有名である。なのに、王の膝元、王城に働く使用人に文盲が存在するとは。
これはロビン案件ね。
ブリジットの「思考が声に出ちゃう癖」にすっかり慣れている料理長が、
「王妃様、この者は最近私が親戚筋より引き取った者なのです。貧しい田舎育ちで満足に学ぶ事が出来ませんでした」
ですから御勘弁願います、と言う。
何処かしら、その貧しい地域とは。
「王都より北に位置します村でして、」
ああ、彼処。ここ数年の冷害は酷かった。
思考が声に駄々漏れのブリジットを気にする風も無く料理長が言うことに、ブリジットは覚えがあった。
これもロビン案件ね。
「重要な情報をありがとう」
そう、料理長に言ってから、
「お前、まずは味見をすることね。それから沢山お食べなさい。お前の食い扶持くらい、私がなんとでもするわ」
それと、と続ける。
「ひもじい思いをさせた国王と王妃を許せとは言わないわ。もっと励むから、お前、そこで私達を見張っていなさい」
お前の神が共にいるでしょう、そうロザリオを握りしめる手を指さして、戻っていった。
今晩も王は羽根布団の調査にくるだろう。
この案件、丸投げするわ。
ロビン、貴方ならどうする?
毎晩毎晩、夜な夜な布団に入り込む鬱陶しい夫の顔を思い浮かべる。
貴方なら必ず克服するでしょう?
鬱陶しい夫ではあるが、ブリジットは彼の力量を誰よりも信じている。
そのロイヤルブルーの瞳はどんな些事も見逃さないはず。
信じてるわ、ロビン。
軽快な足音が近づいて来るのを羽布団の中で聞きながら、ブリジットは平素であれば寝た振りを決め込みたいところであったのをぐっと堪らえた。
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