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お飾り王妃の発現
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そんなブリジットは、学園に入学しても相変わらずの後ろ向きであった。
寧ろ、心の後ろ向き歩行は平常操業であった。
学園には、二人の姉達が既に入学しており、純然たる女王として君臨していた。
そんなところへ入学したブリジットは、
「凄いわお姉様がた。これが権力の示し方なのね」と、間違えて覚えた。
そうして、羽虫の様に権力の甘い密に集る令嬢がたに、ものの哀れを感じた。
皆様、鐘の声が聴こえまして?
諸行無常の響きが聴こえるでしょう。
猛きものもいつかは滅ぶ。
ほら、風を前に塵が舞っているでしょう?あれと同じこと。
などと、誰が教えたのか何処ぞの聖職者のようなことを言っていた。
あらゆる物事を自分を勘定に入れず、よく見、聞き、そして忘れない。
粗食を好んで、極少量のライ麦パンと塩味のスープに温野菜は彼女の好物であった。
こんな色の薄い、面白みの無い自分は、
褒められもせず、
苦にもされず、
そういう存在なのだから、
そうだ職業王妃になろうと再び決意するのには、もういっそ、生まれた国を間違えたのではとも思われた。
唯一人、ロビンだけがMy sweet honey的なクサい褒め言葉を連呼するのを、ブリジットは冷めた目で見ていた。
そんなブリジットに才が発現する。
日頃から、己を軸に360度全範囲に注意を注ぎ、よく見てよく聴く習慣が超の付く能力まで昇華されたらしく、視野を外れた広範囲の音を認識できるようになった。
ロビンが褒め称えるので、ちょっとばかし調子に乗って、瞳を閉じて集中してみた。
するとどうだろう。
密やかな音が次第に聴き取れるほどになり、それが鮮明な映像として瞼の裏に再生された。
おお、と思わず感嘆したブリジットに、なに?なに?何が見えるの?と縋るロビンをまるっと無視(この当時から、まるっと無視は発動されていた)して、眼前に展開される風景を観察する。
学園の裏庭、池の中にピンクの令嬢がいる。否、ピンクの髪と瞳の令嬢がいて、『ここでしくしく泣いていれば人目につくわね。どうしたの?と聞かれたらアンゼリカ様に突き落されたと言えばこちらのものね』という呟きが聴こえる。
アンゼリカはブリジットの二番目の姉である。あのピンク令嬢は、最近噂の男爵家の庶子だろう。
高位貴族の殿方に、目を背けたくなる程の近距離で纏わり付いているらしい。
なに?なに?何処へ行くの?と後ろから喚くロビンをまるっと無視して、ブリジットは裏庭へ走った。
果たしてびしょ濡れで池の中に震えて立つピンク令嬢に、
「貴女、風邪を引くわよ」
そう声を掛けた。
「わ、私、アンゼリカ様に、」
突き落とされてと皆まで言わせず、
「アンゼリカお姉様はお風邪を召されて今週は学園には来ていないわよ。貴女、滅多な事を言っては、」
消されるわよ
そう告げた翌日から、ピンク令嬢は、長いピンクの髪をキツめのお下げに編み込み渦巻き眼鏡を掛けて、Theガリ勉令嬢として卒業までを過ごした。
寧ろ、心の後ろ向き歩行は平常操業であった。
学園には、二人の姉達が既に入学しており、純然たる女王として君臨していた。
そんなところへ入学したブリジットは、
「凄いわお姉様がた。これが権力の示し方なのね」と、間違えて覚えた。
そうして、羽虫の様に権力の甘い密に集る令嬢がたに、ものの哀れを感じた。
皆様、鐘の声が聴こえまして?
諸行無常の響きが聴こえるでしょう。
猛きものもいつかは滅ぶ。
ほら、風を前に塵が舞っているでしょう?あれと同じこと。
などと、誰が教えたのか何処ぞの聖職者のようなことを言っていた。
あらゆる物事を自分を勘定に入れず、よく見、聞き、そして忘れない。
粗食を好んで、極少量のライ麦パンと塩味のスープに温野菜は彼女の好物であった。
こんな色の薄い、面白みの無い自分は、
褒められもせず、
苦にもされず、
そういう存在なのだから、
そうだ職業王妃になろうと再び決意するのには、もういっそ、生まれた国を間違えたのではとも思われた。
唯一人、ロビンだけがMy sweet honey的なクサい褒め言葉を連呼するのを、ブリジットは冷めた目で見ていた。
そんなブリジットに才が発現する。
日頃から、己を軸に360度全範囲に注意を注ぎ、よく見てよく聴く習慣が超の付く能力まで昇華されたらしく、視野を外れた広範囲の音を認識できるようになった。
ロビンが褒め称えるので、ちょっとばかし調子に乗って、瞳を閉じて集中してみた。
するとどうだろう。
密やかな音が次第に聴き取れるほどになり、それが鮮明な映像として瞼の裏に再生された。
おお、と思わず感嘆したブリジットに、なに?なに?何が見えるの?と縋るロビンをまるっと無視(この当時から、まるっと無視は発動されていた)して、眼前に展開される風景を観察する。
学園の裏庭、池の中にピンクの令嬢がいる。否、ピンクの髪と瞳の令嬢がいて、『ここでしくしく泣いていれば人目につくわね。どうしたの?と聞かれたらアンゼリカ様に突き落されたと言えばこちらのものね』という呟きが聴こえる。
アンゼリカはブリジットの二番目の姉である。あのピンク令嬢は、最近噂の男爵家の庶子だろう。
高位貴族の殿方に、目を背けたくなる程の近距離で纏わり付いているらしい。
なに?なに?何処へ行くの?と後ろから喚くロビンをまるっと無視して、ブリジットは裏庭へ走った。
果たしてびしょ濡れで池の中に震えて立つピンク令嬢に、
「貴女、風邪を引くわよ」
そう声を掛けた。
「わ、私、アンゼリカ様に、」
突き落とされてと皆まで言わせず、
「アンゼリカお姉様はお風邪を召されて今週は学園には来ていないわよ。貴女、滅多な事を言っては、」
消されるわよ
そう告げた翌日から、ピンク令嬢は、長いピンクの髪をキツめのお下げに編み込み渦巻き眼鏡を掛けて、Theガリ勉令嬢として卒業までを過ごした。
2,019
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