腐っている侍女

桃井すもも

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腐侍女の不調(2度目)

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「お前のせいでお叱りを受けた」

えー、なにそれ。
出来過ぎ君による、出来過ぎ君の為の、私への有りもしない誹謗中傷。しね。

最低の上司ですね。

「このままでは君の出仕を取り止められるかもしれない」

ええ!!それ程!!

「わたくし、何か致しましたでしょうか」

愁傷に愁傷を重ねたダブル愁傷で伺います。

「自分の胸に聞け」

冷たい。最低な上司だな(2度目)。

暫し二人見つめ、違う、睨みあっておりましたが、時間の無駄なので本題に入ることにします。

「ヒューバート様、医務室へ行きたいので午後に半休を頂きたいのです」

体調管理も仕事のうち、体調不良は罪!なんて時代は終わったのですよ。
微熱であっても退勤するのは最早常識。
さあ、私に半休の許可を出すのだ。

無慈悲な上司を迎え撃つ気満々でおりましたら、
「何?何処が悪いのだ!!」

想像以上の食い付きに、若干引いてしまいました。



「侍女殿、何か悩み事でも?」

医師様が、診察の後にお聞きになります。

前回と同じ流れですね。
しかしながら、今回は少々異なります。
何せ隣に出来過ぎ上司が侍っていらっしゃるのですから。 

本来、主に侍る侍女が上司に侍られる。
もう、腐り切った侍女です。
廃棄対象確定です。

「侍女殿、何か悩み事でも?」
なかなか口を開かない私に、医師様が再びお聞きになります。

この胸に仕舞った大きな憂いを、どなたかに打ち明けられたなら、私は楽になるのでしょうか。

言葉に表せない胸の内に感じた戸惑いに、思わず涙が零れてしまいました。

と、同時に、ばたばたと慌ただしい足音が聞こえて来ます。

ばたんと大きな音を立てて扉が開くと同時に入って来られたのは

「「殿下!?」」
今回は出来過ぎ上司と一緒に驚きます。

「殿下、お静まり下さい!」
後から年嵩の渋い護衛さん(例の急な異動の後任)が、何事か仰っしゃりながらお入りになりました。

驚きで涙がひゅっと止まります。
止まりますが、瞳に溜まっていた涙がひと粒ぽろりと零れてしまいました。

「侍女の様子は」
なんかチラッと目があった様な気がした殿下が、眉間に深い皺を寄せられて、医師様にお尋ねになりました。

デジャヴ。



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