腐っている侍女

桃井すもも

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腐侍女の適材適所

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「お前のせいでお叱りを受けた」

えー、なにそれ。
出来過ぎ君による、出来過ぎ君の為の、私への有りもしない誹謗中傷。しねしね。
2度目ですよ!

最低の上司です×2

「このままでは君の出仕は取り止められるかもしれない。」

だから何故にそれ程!!

「わたくし、何か致しましたでしょうか。(2度目)」

愁傷の上の愁傷に更なる愁傷を重ねたトリプル愁傷で二度目のお伺いを致します。

「自分の胸に聞け」

冷たい。最低な上司だな。3度目いや4度目?5度目か??

「では、わたくしはどうすれば」
よろしいのでしょうか、と伺いましたところ、

「配置替えかな」

ええ!何処へ!!
思ったことがそのまま口から出ていた様です。

「君にふさわしい場所だろうよ」
「適材適所だ」
何故か投げやりなお言葉を頂戴したのです。もしやそこは異国の腐海!?



私はその夜、お父様に文を書きました。

お恥ずかしい事に力及ばず、侍女の職を失う事となりました。
この上は、領地に赴き、領地領民の為、身を粉にして励む所存であります。
的なお手紙です。

領地とは伯爵領です。
海も山もあり、旨い海産物と上質のワインの生産地です。
殿下のお生まれになった年のワインは、殊の外上質でした。

海の幸にも山の幸にも旨い酒にも恵まれている。
呑んで食って働いて、真っ黒に日に焼けながらメリーに乗って領地を忙しく駆け回っていたなら、この苦しい胸の痛みも切ない想いも、いつか忘れることが出来るでしょう。


話が決まれば、とっとと行動に移ります。
少ない荷物を纏めます。
出来過ぎ上司から譲り受けた殿下の髪の毛は、大切に大切にハンカチに包みます。

殿下のお印をひと針ひと針刺繍した渾身の一作。
殿下を思い浮かべながら、真心と腐った心を織り交ぜ刺繍した、愛と腐敗にまみれたハンカチです。

さよなら殿下。
さよなら護衛さん。
さよなら出来過ぎ上司(ついでに)。

さあ、夜が明けます。
腐ったまなこに珊瑚色の暁の空が映ります。
くさくさいつまでも腐ってないで、前を向いて進みましょう。

愛馬メリーの背に乗って、領地を駆け巡りましょう。

旨い酒が待っている。
旨い肴が待っている。
領地領民が待っている。

適材適所。
貴女の居るべき場所へ戻るのよ。






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