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第二十四章
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「さあ、ルドヴィカ様」
アーチーはそう言って、ルドヴィカを促した。
「先に行って、ホットワインを用意しておいてください。いや、運動の後だからよく冷えた発泡酒にしていただこうか」
アーチーは、まるでこれから軽運動でもするように、そんな気軽なことを言った。
「必ず、必ずよ。サーモンの薫製も、それから鰊の酢漬けも用意するから」
「ああ、鰊はちょっと苦手かな。チーズをお願いしましょうか」
アーチーは青い瞳を細めてルドヴィカを見た。それから「さあ」と言って、ルドヴィカの迷いを消すように肩に手を添えた。
ルドヴィカは、後ろ髪を引かれる思いだった。だが、間もなくここにあの獣の皮を纏った侵入者たちがやって来る。今も、もう一つ向こうの部屋の扉を蹴破ろうとする破壊音が響いている。まるで斧で叩き割るような激しい音が近づいていた。
ルドヴィカはアーチーを見上げていたが、そこで身を翻して扉に走った。ここから霊廟まではそれほど遠くない。
扉を開いたその時に、
『ルドヴィカ』
後ろから名を呼ばれた。
すでに廊下に出ていたルドヴィカは、その声に引き寄せられるようにルドゥイーブを見た。
彼はルドヴィカを見つめながら、左手首を持ち上げた。拘束されているはずなのに、それはミシミシと音を立てて、あろうことか木製のベッドの柵を湾曲させて持ち上げた。
メリメリと柵が壊れて、破片がカランと床に落ちた。
その瞬間、ルドゥイーブは煮詰めた蜜のような琥珀色の瞳を煌めかせて笑みを浮かべた。
枷なんて、初めからどうにでもできたのだろう。まるで拘束ごっこを楽しんだように、ルドゥイーブは寝台に半身を起こしたまま、ルドヴィカに微笑んだ。
『私の名は、ラィード。だが、ルドゥイーブという名は気に入っている』
「ルドヴィカ様、お行きなさい」
呆然として立ち尽くしたルドヴィカを、アーチーの声が正気に戻した。バタンと音を立てて扉が閉められた。アーチーは、ルドゥイーブに背中を向けてルドヴィカを逃がした。
弾かれたようにルドヴィカは駆け出した。
後ろから激しい音が聞こえたが、立ち止まることはしなかった。
ばくばくと胸を打つ鼓動に痛みを感じた。その痛みが、大切な人を犠牲にして置いていくからか、思いがけない裏切りに己の迂闊さを呪ってのものなのか、わからなかった。
必ず屋敷に戻ると言った、アーチーの言葉を信じることしかできなかった。霊廟までどうやって走ったのかわからない。ただ、扉はすでに開けられており、まるでルドヴィカを招き入れるようだった。
ぽっかり口を開けた霊廟へ飛び込むように駆け込んで、重い扉を押して閉めた。老司祭はこんな場面を想定していたのだろうか。ご丁寧に、扉の内側の鍵穴には、鍵が差し込まれていた。
扉を閉めてそのことに気づいたルドヴィカは、鍵を回そうとしたのだが、震える手がカタカタ揺れて危うく鍵を落としそうになった。
「しっかりしなさいっ、ルドヴィカ!」
自分で自分を叱責して、どうにか鍵を回して閉めた。
霊廟の扉はほかの部屋と異なり金属製のもので、重厚な造りをしている。多分、内側から鍵を掛けたなら、そうそう容易く打ち破ることはできないだろう。
そこでルドヴィカは気がついた。
ここを閉めてしまったら、アーチーたちは屋敷に戻ってこられない。マスターキーならあるだろう。けれどあの状況で、老司祭がキーを取りに行くなんてそんな悠長なことなどできるだろうか。
「どうしましょう」
鍵は開けておいたほうがよい。そう思ったルドヴィカは、手にした鍵を再び鍵穴に差し込んだ。
だが、同時に思ったことは、アーチーもウォルターもゲンズブールも、きっとルドヴィカが逃げる時間を稼ごうとするだろう。多勢に無勢を承知の上で、命を懸けて侵入者たちの足留めを図るだろう。
そして、老司祭ならきっと、その合間を縫って必ず扉のマスターキーを用意する。いや、すでに携えているだろう。万が一、みんなが逃げを選んだとしても、その時には老司祭が扉を開けてくれるだろう。
ルドヴィカは、アーチーとウォルター、ゲンズブールと老司祭の顔を思い浮かべて、彼らを心の奥底から信じようと決意した。
ルドヴィカは迷いを捨てて、鍵を掛けたまま扉から離れた。そしてそのまま霊廟の棺の間を走り抜けた。地下通路に繋がる扉を開けて、真っ暗闇に向かって何も持たずに飛び込んだ。
扉を閉めると、漆黒の闇に包まれた。
先ほどまでの破壊音も男たちが立てる足音も、地下通路に入った途端、途絶えてしまった。
静寂の中で聞こえたのは、自分の鼓動だった。耳鳴りのように鼓膜に響く音は、自分が今、生きていることを教えている。
ルドヴィカは、手探りで触れた壁に左手を当てた。そのまま闇に向かって、一歩一歩歩き出した。
アーチーに言われた通り、走らず、なるべく早足で、転ばぬように気をつけながら前を歩く。
漆黒の闇の中で転倒してしまったら、多分、前後がどちらであったかわからなくなる。
ここはサンドラに合わせて掘られた通路で、天井が低い。そのかわり、幅が広くなっている。
ウォルターもそうだったが、上背のある男性は屈みながら進まねばならず、走ることは容易ではない。
サンドラは、初めから逃亡経路を想定していたのではなくて、無駄に掘削することをしなかっただけなのだろう。横幅があるのはなぜかはわからなかったが、あの霊廟に安置された棺を運搬することも可能なほどの広さがある。
ここを歩いた回数は、もう両手で足りないほどである。だが、いつだって前後を照らすウォルターとアーチーがいてくれた。
ルドヴィカは、奥歯を噛み締めた。そうしないと涙が滲みそうになる。
暗闇にアーチーの笑みが浮かんだ。最後に扉を閉めたときに、彼は笑っていたのである。
あのベッドサイドから枷を力技で外したルドゥイーブに背中を見せて、アーチーはルドヴィカを逃がした。騎士が敵に背中を見せる。それほど捨て身の行為があるだろうか。
『私の名は、ラィード』
その声が蘇る。彼は記憶を取り戻していた。そうではなくて、初めから失ってなどいなかったのだ。
アーチーは最初から警戒を解かなかった。それに、あの名前の響きには覚えがある。
自分の行為が正しかったのか。彼を介抱したのは過ちだったのか。だが彼は、多分、死なせてはならない人物だ。
ウォルターも司祭もゲンズブールも、そしてアーチーもまた、そのことに気づいていたのだろう。
それでもアーチーが、彼の命を狙ったのは、こんな事態からルドヴィカを守ろうとしたからに違いない。
だが、アーチーこそ、掛け替えのない存在だ。ルドヴィカと命の天秤に掛けることなどできるものではない。それでも彼がルドヴィカを護るのは、全ては、マクシミリアンのためなのだ。
前も後ろも見えない闇の中で、ルドヴィカは自責の念に苛まれながら、それでも一歩、また一歩と歩みを進めた。
必ず屋敷に戻らなければならない。それが、迷うことなくルドヴィカただ一人を逃がした、アーチーたちへ報いることだと思って歩いた。
アーチーはそう言って、ルドヴィカを促した。
「先に行って、ホットワインを用意しておいてください。いや、運動の後だからよく冷えた発泡酒にしていただこうか」
アーチーは、まるでこれから軽運動でもするように、そんな気軽なことを言った。
「必ず、必ずよ。サーモンの薫製も、それから鰊の酢漬けも用意するから」
「ああ、鰊はちょっと苦手かな。チーズをお願いしましょうか」
アーチーは青い瞳を細めてルドヴィカを見た。それから「さあ」と言って、ルドヴィカの迷いを消すように肩に手を添えた。
ルドヴィカは、後ろ髪を引かれる思いだった。だが、間もなくここにあの獣の皮を纏った侵入者たちがやって来る。今も、もう一つ向こうの部屋の扉を蹴破ろうとする破壊音が響いている。まるで斧で叩き割るような激しい音が近づいていた。
ルドヴィカはアーチーを見上げていたが、そこで身を翻して扉に走った。ここから霊廟まではそれほど遠くない。
扉を開いたその時に、
『ルドヴィカ』
後ろから名を呼ばれた。
すでに廊下に出ていたルドヴィカは、その声に引き寄せられるようにルドゥイーブを見た。
彼はルドヴィカを見つめながら、左手首を持ち上げた。拘束されているはずなのに、それはミシミシと音を立てて、あろうことか木製のベッドの柵を湾曲させて持ち上げた。
メリメリと柵が壊れて、破片がカランと床に落ちた。
その瞬間、ルドゥイーブは煮詰めた蜜のような琥珀色の瞳を煌めかせて笑みを浮かべた。
枷なんて、初めからどうにでもできたのだろう。まるで拘束ごっこを楽しんだように、ルドゥイーブは寝台に半身を起こしたまま、ルドヴィカに微笑んだ。
『私の名は、ラィード。だが、ルドゥイーブという名は気に入っている』
「ルドヴィカ様、お行きなさい」
呆然として立ち尽くしたルドヴィカを、アーチーの声が正気に戻した。バタンと音を立てて扉が閉められた。アーチーは、ルドゥイーブに背中を向けてルドヴィカを逃がした。
弾かれたようにルドヴィカは駆け出した。
後ろから激しい音が聞こえたが、立ち止まることはしなかった。
ばくばくと胸を打つ鼓動に痛みを感じた。その痛みが、大切な人を犠牲にして置いていくからか、思いがけない裏切りに己の迂闊さを呪ってのものなのか、わからなかった。
必ず屋敷に戻ると言った、アーチーの言葉を信じることしかできなかった。霊廟までどうやって走ったのかわからない。ただ、扉はすでに開けられており、まるでルドヴィカを招き入れるようだった。
ぽっかり口を開けた霊廟へ飛び込むように駆け込んで、重い扉を押して閉めた。老司祭はこんな場面を想定していたのだろうか。ご丁寧に、扉の内側の鍵穴には、鍵が差し込まれていた。
扉を閉めてそのことに気づいたルドヴィカは、鍵を回そうとしたのだが、震える手がカタカタ揺れて危うく鍵を落としそうになった。
「しっかりしなさいっ、ルドヴィカ!」
自分で自分を叱責して、どうにか鍵を回して閉めた。
霊廟の扉はほかの部屋と異なり金属製のもので、重厚な造りをしている。多分、内側から鍵を掛けたなら、そうそう容易く打ち破ることはできないだろう。
そこでルドヴィカは気がついた。
ここを閉めてしまったら、アーチーたちは屋敷に戻ってこられない。マスターキーならあるだろう。けれどあの状況で、老司祭がキーを取りに行くなんてそんな悠長なことなどできるだろうか。
「どうしましょう」
鍵は開けておいたほうがよい。そう思ったルドヴィカは、手にした鍵を再び鍵穴に差し込んだ。
だが、同時に思ったことは、アーチーもウォルターもゲンズブールも、きっとルドヴィカが逃げる時間を稼ごうとするだろう。多勢に無勢を承知の上で、命を懸けて侵入者たちの足留めを図るだろう。
そして、老司祭ならきっと、その合間を縫って必ず扉のマスターキーを用意する。いや、すでに携えているだろう。万が一、みんなが逃げを選んだとしても、その時には老司祭が扉を開けてくれるだろう。
ルドヴィカは、アーチーとウォルター、ゲンズブールと老司祭の顔を思い浮かべて、彼らを心の奥底から信じようと決意した。
ルドヴィカは迷いを捨てて、鍵を掛けたまま扉から離れた。そしてそのまま霊廟の棺の間を走り抜けた。地下通路に繋がる扉を開けて、真っ暗闇に向かって何も持たずに飛び込んだ。
扉を閉めると、漆黒の闇に包まれた。
先ほどまでの破壊音も男たちが立てる足音も、地下通路に入った途端、途絶えてしまった。
静寂の中で聞こえたのは、自分の鼓動だった。耳鳴りのように鼓膜に響く音は、自分が今、生きていることを教えている。
ルドヴィカは、手探りで触れた壁に左手を当てた。そのまま闇に向かって、一歩一歩歩き出した。
アーチーに言われた通り、走らず、なるべく早足で、転ばぬように気をつけながら前を歩く。
漆黒の闇の中で転倒してしまったら、多分、前後がどちらであったかわからなくなる。
ここはサンドラに合わせて掘られた通路で、天井が低い。そのかわり、幅が広くなっている。
ウォルターもそうだったが、上背のある男性は屈みながら進まねばならず、走ることは容易ではない。
サンドラは、初めから逃亡経路を想定していたのではなくて、無駄に掘削することをしなかっただけなのだろう。横幅があるのはなぜかはわからなかったが、あの霊廟に安置された棺を運搬することも可能なほどの広さがある。
ここを歩いた回数は、もう両手で足りないほどである。だが、いつだって前後を照らすウォルターとアーチーがいてくれた。
ルドヴィカは、奥歯を噛み締めた。そうしないと涙が滲みそうになる。
暗闇にアーチーの笑みが浮かんだ。最後に扉を閉めたときに、彼は笑っていたのである。
あのベッドサイドから枷を力技で外したルドゥイーブに背中を見せて、アーチーはルドヴィカを逃がした。騎士が敵に背中を見せる。それほど捨て身の行為があるだろうか。
『私の名は、ラィード』
その声が蘇る。彼は記憶を取り戻していた。そうではなくて、初めから失ってなどいなかったのだ。
アーチーは最初から警戒を解かなかった。それに、あの名前の響きには覚えがある。
自分の行為が正しかったのか。彼を介抱したのは過ちだったのか。だが彼は、多分、死なせてはならない人物だ。
ウォルターも司祭もゲンズブールも、そしてアーチーもまた、そのことに気づいていたのだろう。
それでもアーチーが、彼の命を狙ったのは、こんな事態からルドヴィカを守ろうとしたからに違いない。
だが、アーチーこそ、掛け替えのない存在だ。ルドヴィカと命の天秤に掛けることなどできるものではない。それでも彼がルドヴィカを護るのは、全ては、マクシミリアンのためなのだ。
前も後ろも見えない闇の中で、ルドヴィカは自責の念に苛まれながら、それでも一歩、また一歩と歩みを進めた。
必ず屋敷に戻らなければならない。それが、迷うことなくルドヴィカただ一人を逃がした、アーチーたちへ報いることだと思って歩いた。
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