星の輝くこの夜に

見上げる空は

とりあえず私はこの暗い洞窟を出てみようと思い。

地面を踏みしめる久しぶりの感覚に戸惑いながら、

あの女が置いていったのだろうか、

側に少しのお金の入った革の袋と衣服があった。

その二つの内、私は衣服の方を見て呟く。

「確かこれはあの女の着ていた服だったか」

私は遠い記憶を呼び起こす。

フードの着いた見た事の無い衣服は、

長い時を生きる私でも見たことの無いものだったので、

強く印象に残っていた。

そして暗い洞窟を夜の種族の特殊な目で見渡し、

そして衣服を見て独り呟く。

「大分痛んでいるな」

そう言い私は第八位階の時間の魔法を唱え行使する。

「過ぎ去りし時よ戻れ」

「我が名は、レーナ・V・アインツベルン」

魔法の行使によって衣服を元の状態に戻した私は。

魔法を使えるのを確認すると。

その服を羽織る。

するとポケットの中に何かが入ってるのに気が付き、

手を入れ取り出した。

それは紋章のような物が刻まれた見たことの無いものだった。

私はそれを革の袋と一緒に魔法で仕舞い、

ゆっくりと洞窟の出口に歩いて行った。









山の中腹に在る洞窟を出ると外は夜だった。

ふと辺りを見回すが、

既に見覚えのあるような物は無く、

背の高い木が山の回りに生えているだけだった。

「当たり前か…」

そう呟き私は空を見る。

「中々美しい夜空だ…」

そう言うと私はもう一度森を見て、

一つの動く光を見つけた。

「人間か？」

私はあの女の服のフードを深く被り、

幻惑の魔法を自分の異質な目にかけようとして辞め、

被ったばかりのフードを外した。

「あの女の約束を信じてみるか…」

そう言いながら私はこうも思ってしまう。

駄目なら殺してしまえば良いと…。

綺麗な夜空の下、

そんな考えを持ってしまう自分に少しの嫌悪感を感じながら。

光を目指して私は歩き始めた…。