転移事故に巻き込まれたオッサン、《鑑定》と《インベントリ》をハッキングして最強になってしまう

邪神ミケネコタマス

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第6話:オッサン、おめかしする

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 根源と融合したからか、その構造は簡単に理解出来た。根源は幾つかの大きな領域に分かれている。これに名前を付けるならば、よく使いそうなのは3つだ。1つ目はマテリアル。物理世界の全ての情報が記された領域。物も人も、流れる水さえも記されている。スキルの鑑定がアクセスしているのはこの領域だ。次にメモリー。これはマテリアルの動き、つまり過去の全ての情報を収納する領域だ。生命の一挙手一投足から、風がどのように世界を巡ったかまで。全てが記される。賢者の識書がアクセスしているのは恐らくここ。そして最後にスキル。これは言わずもがな。スキルの全ての情報が記されていて、効果や所有者なども丸わかりだ。

 そして基本的には、物理世界のその全てに番号のようなものが振られている。人から魔物、植物やその辺の石ころに至るまで全て。例えば鑑定のスキルは、指定された対象の番号を読み取って根源のマテリアル領域にアクセス。読み取った番号の情報を取得し、スキル所有者に表示する。こんな感じだ。一方賢者の識書は持ち主の問いに含まれる単語から番号を取得し、これをメモリー領域と照合しているんだと思う。ただそれにしては問いを理解し過ぎている気がするので、AI的な何かが絡んでいるのかも知れない。


 それはともかく。俺に必要な金、服、自衛手段のうち金と服はマテリアル領域にアクセスすれば何とかなるだろう。とはいえ根源をそのまま活用するのは回りくどいというか、ぶっちゃけめんどくさい。なのでスキル領域にアクセスして、根源を簡単に操れるスキルを作ってみた。その名も《支配者ルーラー》だ。せっかくの異世界なのだから、厨二病全開で生きていこうと思う。見た目はオジサンだけど、心は少年なのだ。

「《アクセス:マテリアル》」

 宣言すれば、ウィンドウが展開される。ここから対象を検索し、その対象をどうするか選択する。先ずは金だ。

「金貨...と。うわぁいっぱいある...」

 そのウィンドウで少し調べた結果、現在金貨はあまり使われていないらしい。現在世界的に流通しているのは、商売の神が発行した魔晶貨と呼ばれる通貨だそうだ。これは原理不明材料不明の謎の硬貨で、それ故に偽造出来ないスグレモノ。青白い光が踊る、石英みたいな硬貨だ。という事で、これを適当に沢山持っておく事にした。あって困ることは無いのだ、金は。魔晶貨を選択し、適当に9を連打して作成のコマンドを選択。すると、指定量の魔晶貨がインベントリに入る。

 ふふん。便利だろう?俺が作りました。この俺が。ふふん。

「服...かぁ。正直あんまり得意分野じゃないし興味も無いんだよなぁ」

 1番流通量の多い白いカッターシャツとカーキのパンツ、それから革靴。後は防具として革のロングコート。肩の部分に金属製のショルダーガードが付いてる奴だ。頑丈そうだし軽そう。

「おぉー。なんかコスプレしてるみたいで恥ずかしいな」

 お次は自衛手段だが。剣だの弓だのを使いこなせる自信は無いので、魔法メインになる。しかしこの世界の魔法は主にスキルで、そのスキルにどれくらい習熟するかで使える魔法が増えるようだ。例えば《火魔法1》とか《火魔法2》とか。そんな感じだ。あんまり好みのスタイルではないので、例によって新しいスキルを作成した。《念動力》《魔力変換》の2つだ。《念動力》はその名の通り。触れずに物を動かせる。根源のマテリアル領域にアクセスし、位置情報をリアルタイムで変更するスキルだ。《魔力変換》は魔力を消費し、マテリアル領域に同じ質量の現象や物体を作成する。これで火とかを生み出し、《念動力》で操る。これぞ魔法である。

「いや、差別化する為に魔術と名付けよう。オリジナルって感じがして良い」

 後は役に立つかも知れないという事で、凄そうなナイフを作成した。

『竜狩りの短剣:かつて、竜を狩っていた狩人が使用したと言われる短剣。非常に切れ味が良く頑丈で、癖も無く扱い易いが竜の骨すら簡単に断ち切る為注意が必要』

 便利そうだろう?柄の部分にドラゴンの意匠が施されているのもポイントが高い。短剣というには少し大きい気もするが、短剣なんて持った事ないので分からない。これが通常サイズかもしれない。

「さて。準備も整ったし寝るか。夜だしな。なんだかんだ疲れた」

 作り出した装備品類を革張りソファに並べ、満足してベッドに入る。だが冒険が始まると思うと興奮して、あまり寝付きは良く無かった。
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