ちょっと不思議なツアー旅行店 〜日本は魅力がいっぱいですよ!〜

ねっとり

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エルフと温泉卓球

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 今日は金曜日。
 学校帰りにミカの部屋へ向かうと、珍しく店長がいた。
 平日に会うのは非常に稀だ。
 さらに珍しいのは、ミカとゲームをしているのだ。

「お邪魔しますー!」
「お、いいところに来た」

 結花が部屋に入ると店長が声をかけて来た。
 2人がやっているのは格闘ゲーム。
 あんなに上手いと思っていたミカが店長にコンボを決められて負けている。
 ミカの顔は非常に不機嫌だ。

「明日明後日は旅行に行くぞ。お泊まりセットを持ってこい」
「へっ?」
「これも仕事だ。朝8時に事務所に集合。遅刻したら置いてくからな」
「えっ?  えっ?」

 そう言うと店長が部屋を出て行こうとする。
 ミカが「もっかい!  次こそ負けないっす!」としがみついたが、簡単に振り払われてしまった。
 さらには、ミカも必ず来るように念を押している。
 慰安旅行だろうか。

 急に旅行と言われても、結花は何も準備をしていない。
 店長が出て行った後、少しミカとお喋りをして早めに退散した。
 部屋を漁りキャリーバックを取り出す。
 下着や着替えを準備し、明日のために早めに就寝した。



 次の日。
 朝8時前には事務所に到着した結花。
 キャリーバックも一緒に持って来ている。
 店長は手ぶら。いや右手にはパジャマ姿のミカを掴んでいる。
 どうやら部屋から引きずり出して来たらしい。

「店長。慰安旅行ですか?」
「いんや。立派な仕事だよ。そろそろ……来たな」

 奥の扉が開いた音がした。
 そこからワイワイと声が聞こえてくる。
 4人、いやそれ以上か。
 声は男女問わず発せられている。

「久しぶりですー!」

 勢いよくドアを開けて入って来たのはエルフだ。
 全員が金髪で長い髪。
 耳はとんがっており、全員が美男美女。
 ファンタジーの世界でしか見たことない住人だ。

「よーぉ。今年も抑えてあるぜ」
「ありがとうございます!  今年も楽しみにしていましたよ!」

 店長が声をかけると、エルフの1人が握手を求めて来た。
 さわやかな2人が握手を交わし、エルフ達は結花とミカにも握手をして来た。
 どうやらこの大御所帯で旅行に向かうらしい。
 エルフ達も大きな麻袋に色々と詰め込んであるのだろう。
 店長からお金も受け取っている。

「店長?  これからどこに向かうんですか?」
「ん?  群馬の草津温泉だ!」

 そう言った店長は笑顔でハンズアップする。
 温泉が好きらしい。
 エルフ達も嬉しそうに頷いている。


 事務所を出て電車に乗る。
 最初は新宿へ向かい、そこから高速バスだ。
 店長がしきりにトイレは大丈夫かと全員に聞いている。

 しかし今の高速バスはすごい。
 寝ることもできるし、トイレまで完備されている。
 さっそくと言わんばかりにミカは熟睡し、エルフ達は窓の外を見ながらワイワイ騒いでいる。
 結花は店長の隣だ。
 一緒に持ってきたベイビーラーメンを食べている。

「高速バスなんて初めて乗りました!」
「そうか?  電車もいいけど、バスもいいぞー」

 事実、バスの乗り心地は最高だった。
 約1時間ほどで草津ターミナルに着く。
 結花も親に連れられ色んな場所に向かったことはあるが、ここは初めてだ。
 ここから少し歩いた場所に観光名所もあるらしい。

 エルフ達は周りの風景をじっくり楽しみながら進むタイプだ。
 所々で立ち止まっては、あーでもないこーでもないと話している。
 結花達も逸れないように一緒についていった。

 そこで疑問が結花に生まれる。
 今まで来た人たちは、見てくれも人間と変わりがない。
 だがエルフ達はどうだ?
 さすがにコスプレと言い張るのには無理があるだろう。
 興奮すると耳も一緒に動いている。

「ねね、店長。エルフさん達って周りからどう見えてるんですか?」
「そうか、結花はまだ知らなかったか。ちょっと待ってろ」

 そう言うと店長が結花のおでこに指をあてて何かを唱えた。
 一瞬ふわっとした感覚が襲ってくるとすぐに治る。
 店長が無言で指差す方に結花が目線を送った。

 先程までそこにいたエルフ達が消えている。
 その代わり、外国人が6人ほどわいわいしながら話をしていた。
 まさか……結花が店長を見ると、店長が笑顔で頷いた。

「御察しの通りだよ。他の人からは外国人観光客に見えるんだ。言葉もそれっぽいだろ?」

 魔法が解けたのだろう。
 先程までわかっていた言葉は全くわからなくなっていた。
 店長がもう一度結花のおでこに指をあてて魔法を唱えると、しっかりとエルフ達の姿も見えるようになる。
 エルフ達の言葉は、もし外国人が聞いても訛りが強すぎて何を喋ってるかわからないと思われるそうだ。
 確かに、日本でも訛りが凄くて何を言ってるかわからない場合もある。

「ほぇー。魔法って凄いんですねぇ」
「そうだな。魔法は万能だ」

 それから結花達はまず湯畑に着いた。
 木製の桶を勢いよく源泉が流れている。
 その近くでは写真を撮る観光客が非常に多い。

 エルフ達も気付くとカメラを構えていた。
 デジタルカメラ。店長が渡したそうだ。
 全員で一箇所に集まり、どんどん写真を撮って行く。
 カメラには魔法が効かないのか、画面で見るとしっかりとエルフの姿になっていた。

 それからも湯もみを見たり、食事を取ったりと進んで行く。
 結花もエルフと一緒に観光を楽しむことができた。
 ミカはいつのまにか取り出したゲーム機とご飯に夢中。
 彼女には観光よりご飯とゲームが大事らしい。

 夕方に差し掛かった頃、確保している旅館へとむかった。
 バスターミナルに送迎バスが待機している。
 観光名所としても利便性は非常に高い。
 だが、一緒に乗った人は少なかった。

 バスに揺られること15分。
 本日泊まる旅館に到着した。
 そこは露天風呂を推しているのだろう。
 登りにはデカデカと『露天風呂』と書かれている。

 旅館自体は年季が入っていそうな感じだ。
 広い駐車場に大きな入り口。
 正面からは見えないが、奥行きや離れまであるのだろう。
 ガラス張りの壁面を持った廊下も見える。

 部屋は男女別だ。
 結花とミカ、そしてエルフの女性達が同じ部屋になる。
 大部屋で過ごすのは、結花の修学旅行以来だ。

 ゲームばかりしていたミカだが、エルフ達とは何度も会っているのだろう。
 部屋では女子特有の雑談が始まる。
 夕食の時間になると広間に呼ばれるのでそれまで待機だ。

「ユカさんは最近入ったんですか?」
「そうです!  これからよろしくお願いします!」

 結花がエルフに話しかけられると少しドキドキしてしまう。
 誰がどう見ても美女だ。
 柔らかい笑顔と優しそうな声。
 そんな状態ながらもエルフ達と話が弾んで行く。

 女性エルフの名前は、それぞれ『レネ』『ニーナ』『シャリー』と言うらしい。
 彼女達も日本の旅行が楽しみで毎日を過ごしているそうだ。
「温泉では卓球も楽しいからねー!」とまで言っている。
 中々の日本フリークだ。

 雑談の中でも特に気に入られたのは日本こっちの話だ。
 エルフ達は特に自然の話を好む。
 結花はスマホで調べながら色んな場所を紹介していった。

 そうこうしているうちに夕飯の時間だ。
 広間に集まると旅館のコース料理が運ばれてくる。
 全員が美味そうに舌鼓を打ちつつ、結花以外はお酒を楽しみ始めた。
 あとは自慢の温泉に入って寝るのがいいだろう。


 自慢の露天風呂は非常に広かった。
 男女別で入ることが出来、空には星が輝いている。
 レネやニーナが「生き返るぅぅ」と言うのが聞こえて来た。
 結花も温泉に浸かるとその言葉が自然と出てくる。
 やはり温泉はいいものだ。

「やぁー。大きいんですねー!」
「ちょ!  どこ触ってるんすか!?」

 体を洗っている時にエルフ達が結花とミカにちょっかいを出してきた。
 エルフ達は美女であるが胸はない。
 良くてもBカップだろう。
 結花もまだ成長期と言い張っているがC。
 そしてミカは……Fはある。

「減らないんだしいいじゃーん!」
「や、辞めるっすよ!  んっ……ダメっすよ!!」

 美女に攻められるミカを見て、結花は苦笑いしか出ない。
 よっぽど珍しいのか、それともいつものことなのか。
 レネ達の顔は笑顔だ。
 その大きさを見ていた結花が自分の胸に視線を落とす。
 そこにシャリーが笑顔で近付いてきた。

「大丈夫よ。まだまだ大きくなるわ」
「いいいいいいやいやいや!  べべべべべ別に気にしてませんよ!」

 思わずどもってしまう。
 自分でも成長期だとは思っているが、やはり他人から言われると見栄を張ってしまうのだろう。
 楽しい露天風呂はそれからもしばらく続いた。


 風呂上がりに集合したのは卓球台だ。
 ここは温泉卓球を推進しているのか、4台ほど置いてある。
 フロントで道具を借りると、おもいおもいに楽しみはじめた。

 いや、一箇所だけ違う雰囲気になっている。
 今回のエルフ族のまとめ役『リーチェ』と店長だ。
 真剣勝負が今まさに始まろうとしていた。

「この一年間。僕が修行してきた成果をお見せしますよ」
「ほう。いい度胸だ。かかってきたまえ」

 2人してバトルが始まりそうな構えをしている。
 もちろん手にはラケットを持っているが。
 リーチェのサーブから試合はスタートした。

 激しいラリーの応酬。
 2人とも前後左右に振り振られながら球を返して行く。
 結花はいつのまにか審判を務めていた。

 だが店長が少し優勢だ。
 リーチェのスマッシュをいなし、少しでも浮いた球をスマッシュで攻めていく。
 負けられないリーチェもカットやサイドを上手くついた攻撃で攻める。

「ふぅ。そろそろ本気を出しますよ」
「ほう?  いいだろう。俺も本気を出そうか」

 2人が浴衣の上半身をさらけ出した。
 意外にも店長も鍛えており、汗を流しながらさっきより激しいラリーが続く。
 第1セットは店長、第2セットはリーチェが取り最終ラウンドだ。

「やるじゃねーか。だがまだまだだな」
「ふふっ。僕の本気はここからですよ!」

 リーチェが左手に球を持ちラケットを構えた。
 そして目を瞑りながら何かを詠唱していく。

「この大地に眠る風の精霊よ。我が願いをーー」

 魔法だ。
 まさか温泉卓球で魔法を使おうとしている。
 本気を出すとはこの事なのか。
 詠唱中のリーチェの体が少しずつ浮いていく。

 だがそれを店長は許さなかった。
 右手を前に出すと、空中を掴むように手を握る。
 その瞬間リーチェの周りにあった風がピタリと止まった。

「なっ!  何を!!」
「バカやろう!  温泉卓球で魔法使うんじゃねーよ!!」

 こうして卓球の試合は店長が勝利で終わった。
 リーチェが「次はバレないように……」と呟いていたので、また来年挑んでくるのだろう。
 楽しい旅行はこれで終わりかと思えた。

「あぁ全員着替えてフロントに集合な」

 店長の一声で全員が着替えてフロントに集合する。
 時刻はすでに21時過ぎ。いい子は寝る時間だ。
 しかしやってきた送迎バスに乗ると、また湯畑の方へ向かいはじめた。

 夜の湯畑はまた別の顔を覗かせた。
 ライトアップされた湯畑は幻想的な雰囲気を見せている。

「うわー!  すっごい綺麗!!」

 思わず結花が声を上げた。
 これにはエルフ達も目が釘付けになっている。
 昼と夜で2回も楽しめる湯畑。
 空には満点の星空。
 店長がみんなの姿を見て笑顔で頷いていた。


 ◇


 扉開くとエルフ達が出てきた。
 彼らは今回の温泉旅行に大満足だったようだ。
 両手には抱えきれないほどのお土産を持参している。
 だがその顔は温泉街で見せたようなニコニコ顔ではない。
 キリっと表情を引き締めながらエルフの里へ帰ってきたのだ。

「戦士長リーチェ、ただいま戻りました」
「おぉご苦労。今回の旅はどうじゃった?」

 少し歳を召したエルフの老人がリーチェ達を迎い入れる。
 今回の戦利品を里のみんなに配り、旅の報告をした。
 その話を里の全員が聞き入っている。
 異世界での旅の話などそうそう聴けるものではない。
 特に子供達は目を爛々と輝かせていた。

「ーーですが、今回も我々は敗北しました」
「ふむ。やはりテンチョウとやらは強いのか」

 エルフはかなりの負けず嫌いだ。
 戦争などを始める気は無いが、勝負事となれば必ず対策や修行を重ねる。
 今回は魔法を発動することを取り入れたが、店長に阻止された。

「つまり肉体改造などが必要なのじゃな?」
「はい。あとは日々の修行ですね」
「あいわかった」

 老人……エルフの村の長老が全員に向き直り宣言した。

「これより一年間、『タッキュウ』の修行じゃ!  勝者は来年の旅へ向かうとする!」
「「「「「おぉー!!!」」」」

 異世界への旅行は選ばれしエルフしか行けない。
 今回向かった上位6人は、里の代表だ。
 どう見てもリーチェ以外は楽しんでしかいなかったが、その腕は間違いがない。
 店長を倒せる有志は来年までに現れるのか。

「僕も……絶対に負けませんからね!」

 リーチェもリベンジに燃えていた。
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