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第一章 家
第八話 リリーブラウンは常識人である
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「なぁ、キティ」
「?」
「俺達って付き合ったんだよな?」
「そうだけど…」
「…なんていうのかなー。実感が無いんだよなぁ…付き合う、って事をしたことがないし、どうすれば良いのか、分からないんだ」
「…少しずつ」
「…ん?」
「少しずつ、お互いの関係を築いていく、それが大事なんじゃないかな?」
「…そうか。そうなのかも」
「それにさ、こんなにイチャイチャしてる友達は中々いないよ。十人が見たら十人がカップルって答えるよ」
「そっか」
キティには感謝したい。
今、自分の事で手一杯、家族の心配や世界に何が起こっているのかという不安、そう言ったストレス…そのはけ口となってくれた。それは彼女だって同じ筈なのに。
俺は…弱い。
決定的に、弱く情けなかった。
「はぁ」
何かどうでも良いことが考えたくなった。
そう思って周りを見渡す。とは言うものの、俺の馬車内は狭く、酷く不快な空間である。個人差や馬車にもよるが。
ちょうど顔を上げたときに、目の前にリリーブラウンがいたので、反射的に聞いてみた。
「リリーさんって、なんでついてこようって思ったんですか?」
リリーブラウン。本来は田原が歓び(強制でも)彼女としてしまうはずだったのだが、こうぽっちゃりした体型だと、やはり田原も受け付けがたく、「この子の自由に…意思に任せます」と、言ったらしい。それでついてきたということは、彼女には俺達についてくる理由があったと言うことだ。
「ふ、ラフさん、私の事はリリーでよろしいですわよ。というか、敬語を使わなくてよろしくて」
変な言葉使いだなぁ、と思いつつ、俺は話を続けた。
「じゃあ、リリーはどうしてついてこようと思ったんだ?」
「そうですわねぇ。私事ではありますが、田原様、彼に全てがありますわ」
「田原に?」
「ええ。彼は私を選んでくれました」
「ふむ」
「それだけで私にとって彼は、ついていこうと思わせるには十分な人物だったんですわ」
「…何故?」
今度はキティが問うた。
「私の過去をお話しさせて貰いますわ」
「どうぞ」
「おほん。私は、生まれた頃から世界から必要とされていませんでしたの」
「…」
全く、何もつかめなかった。
「生きている意味が無かったのですわ」
人に生きている価値を求めると言うのは、しかしどうなのだろうか?
「私は、あの村の村長の孫娘として生まれてきました…が、私は兄妹の中で最も幼かった…生まれた時から、誰にも必要とされていませんでしたから」
「酷い…」
「イジメや迫害は当たり前。皆と当たり前のように生活出来るように、私は皆に当たり前のように、イジメられていましたわ」
「…」
「こうして太ってしまったのも過度なストレスのせいだと、そう思いますわ…」
…太ってることは、馬鹿にしないでおこう。
「…生きる活路をたたれていましたの。私には、生存権なんて無かったんですわ。いつ死のうが、誰も気には止めなかったんですの…祖父以外は…」
「祖父?」
「祖父には会いましたよね?」
「ん。あぁ」
そういや、あの爺さん、別れ際にこんなことを言ってたな…
『ラフォーレティーナさん、田原さんたちや、どうか、あの子を頼むな』
『はい』
『いい返事だ』
爺さんは優しくそう言った。
『そして、田原さんや。どうか、あの子には優しく頼む…な?…あの子は可哀想なこじゃ…』
『可哀想?』
『あの見た目のせいで、だあれにも愛されず、誰にも支えて貰えず…もがき、苦しんどった』
『…』
『だから、頼むな、田原さんや。君が、彼女の支えとなり、愛してやれる…そんな男であってほしい…』
『…分かりました』
田原は、案外賢い男だ。
その状況を知ってか、俺の知らないところで結構話してた様だ。
そして今の様だ。
『田原様ー!』
『ギャー!』
…
「祖父は…祖父は唯一私に優しくしてくれた…私に温もりを与えてくれた…いろんなことを教えて貰った…初めて…祖父と会ったその日に、私は初めて生きてると感じたんですわ」
忘れもしない…と、リリー。
「初めて会った日…私は祖父にまず抱っこされたんですの。そして、泣きながら、すまんのう、って謝ってきたんですの…変な人ですの」
「…」
「でも私には、それが嬉しく感じたのですわ。温もりを、感じたのですわ」
「…そんな事が…」
「ええ。それから数年後、まあつい先日、祖父から話がある、と神妙な顔で言われたんですわ…最初は捨てられるかと心配したのですけど、そんなことはなかったんですの」
「話って?」
おお、キティ…けっこう食い気味だね…
「番ですわ。旦那様…それが出来るかも知れない、と」
「あー」
理解理解。
「私は売りに出されるの、と、祖父が優しく言ってるだけでは、と…怖くて怖くてたまりませんでしたわ」
「…ほぉ」
「それで、先日、初めて会ったのが田原様でした」
「…どんな状況だよ」
「…そうですわね…あれは、私が馬車に隠れている時…」
『ジー』
これがおじいさまの言っていた結婚相手?何か怖そうな方ですわ…
『?』
『ハッ?』
どうしましょう…気付かれてしまいましたわ…
『どうしたんだい?そんなに怯えて』
あれ?優しい声ですわ…
『こっち来なよ…ねぇ』
『嫌です』
『どうして?』
『怖いから』
『…怖い…か。じゃあ、今回は、俺がそっちに行く』
『へ?』
『その変わり、次は、次からは俺の方に来てくれよ…な?』
キラーン
か、かっこいい
『ほら、怖くない』
『あっ!』
いつの間にか、田原様が近くまで来ていましたわ。というか、
『私は子供ではありませんわ。そんなあやし方しても…』
『でも、泣いてる』
『えっ?』
ほ、本当ですわ。
なんで、涙なんか…
『大丈夫だよ』
『?』
『大丈夫、大丈夫』
田原は、リリーの頭にポンと手を置いて、わしゃわしゃとその綺麗な金髪を撫でた。
「む?これだけきくと田原が変態みたいだな」
間違ってはいないが…
「それから私は田原様にベタ惚れ。ずっとついていくと誓ったんです!」
「いやぁ」
その瞬間、誰かが会話に入ってくる。
「って、田原、いつの間に起きた?」
いままでずっと眠ってたのに…
因みに馬車の従者は交代交代まわしている。
「さっき、な。確かに」
ポンと田原はリリーの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「これだけで黙ってたら、可愛いんだけど(あと少し痩せれば)」
「田原様ー!?」
「おお」
顔、真っ赤じゃん。
頭から煙出ちゃうよ…
「…決めましたわ!」
「ん?」
「私!痩せますわ!」
──!?
「私も手伝うわ!」
キティもか!
「具体的にはどうするんだ?」
「えーっと、まずはスクワット…」
帰郷してもし無事なら毎日やるらしい…
頑張るなぁ
恋の力ってやつ?
「?」
「俺達って付き合ったんだよな?」
「そうだけど…」
「…なんていうのかなー。実感が無いんだよなぁ…付き合う、って事をしたことがないし、どうすれば良いのか、分からないんだ」
「…少しずつ」
「…ん?」
「少しずつ、お互いの関係を築いていく、それが大事なんじゃないかな?」
「…そうか。そうなのかも」
「それにさ、こんなにイチャイチャしてる友達は中々いないよ。十人が見たら十人がカップルって答えるよ」
「そっか」
キティには感謝したい。
今、自分の事で手一杯、家族の心配や世界に何が起こっているのかという不安、そう言ったストレス…そのはけ口となってくれた。それは彼女だって同じ筈なのに。
俺は…弱い。
決定的に、弱く情けなかった。
「はぁ」
何かどうでも良いことが考えたくなった。
そう思って周りを見渡す。とは言うものの、俺の馬車内は狭く、酷く不快な空間である。個人差や馬車にもよるが。
ちょうど顔を上げたときに、目の前にリリーブラウンがいたので、反射的に聞いてみた。
「リリーさんって、なんでついてこようって思ったんですか?」
リリーブラウン。本来は田原が歓び(強制でも)彼女としてしまうはずだったのだが、こうぽっちゃりした体型だと、やはり田原も受け付けがたく、「この子の自由に…意思に任せます」と、言ったらしい。それでついてきたということは、彼女には俺達についてくる理由があったと言うことだ。
「ふ、ラフさん、私の事はリリーでよろしいですわよ。というか、敬語を使わなくてよろしくて」
変な言葉使いだなぁ、と思いつつ、俺は話を続けた。
「じゃあ、リリーはどうしてついてこようと思ったんだ?」
「そうですわねぇ。私事ではありますが、田原様、彼に全てがありますわ」
「田原に?」
「ええ。彼は私を選んでくれました」
「ふむ」
「それだけで私にとって彼は、ついていこうと思わせるには十分な人物だったんですわ」
「…何故?」
今度はキティが問うた。
「私の過去をお話しさせて貰いますわ」
「どうぞ」
「おほん。私は、生まれた頃から世界から必要とされていませんでしたの」
「…」
全く、何もつかめなかった。
「生きている意味が無かったのですわ」
人に生きている価値を求めると言うのは、しかしどうなのだろうか?
「私は、あの村の村長の孫娘として生まれてきました…が、私は兄妹の中で最も幼かった…生まれた時から、誰にも必要とされていませんでしたから」
「酷い…」
「イジメや迫害は当たり前。皆と当たり前のように生活出来るように、私は皆に当たり前のように、イジメられていましたわ」
「…」
「こうして太ってしまったのも過度なストレスのせいだと、そう思いますわ…」
…太ってることは、馬鹿にしないでおこう。
「…生きる活路をたたれていましたの。私には、生存権なんて無かったんですわ。いつ死のうが、誰も気には止めなかったんですの…祖父以外は…」
「祖父?」
「祖父には会いましたよね?」
「ん。あぁ」
そういや、あの爺さん、別れ際にこんなことを言ってたな…
『ラフォーレティーナさん、田原さんたちや、どうか、あの子を頼むな』
『はい』
『いい返事だ』
爺さんは優しくそう言った。
『そして、田原さんや。どうか、あの子には優しく頼む…な?…あの子は可哀想なこじゃ…』
『可哀想?』
『あの見た目のせいで、だあれにも愛されず、誰にも支えて貰えず…もがき、苦しんどった』
『…』
『だから、頼むな、田原さんや。君が、彼女の支えとなり、愛してやれる…そんな男であってほしい…』
『…分かりました』
田原は、案外賢い男だ。
その状況を知ってか、俺の知らないところで結構話してた様だ。
そして今の様だ。
『田原様ー!』
『ギャー!』
…
「祖父は…祖父は唯一私に優しくしてくれた…私に温もりを与えてくれた…いろんなことを教えて貰った…初めて…祖父と会ったその日に、私は初めて生きてると感じたんですわ」
忘れもしない…と、リリー。
「初めて会った日…私は祖父にまず抱っこされたんですの。そして、泣きながら、すまんのう、って謝ってきたんですの…変な人ですの」
「…」
「でも私には、それが嬉しく感じたのですわ。温もりを、感じたのですわ」
「…そんな事が…」
「ええ。それから数年後、まあつい先日、祖父から話がある、と神妙な顔で言われたんですわ…最初は捨てられるかと心配したのですけど、そんなことはなかったんですの」
「話って?」
おお、キティ…けっこう食い気味だね…
「番ですわ。旦那様…それが出来るかも知れない、と」
「あー」
理解理解。
「私は売りに出されるの、と、祖父が優しく言ってるだけでは、と…怖くて怖くてたまりませんでしたわ」
「…ほぉ」
「それで、先日、初めて会ったのが田原様でした」
「…どんな状況だよ」
「…そうですわね…あれは、私が馬車に隠れている時…」
『ジー』
これがおじいさまの言っていた結婚相手?何か怖そうな方ですわ…
『?』
『ハッ?』
どうしましょう…気付かれてしまいましたわ…
『どうしたんだい?そんなに怯えて』
あれ?優しい声ですわ…
『こっち来なよ…ねぇ』
『嫌です』
『どうして?』
『怖いから』
『…怖い…か。じゃあ、今回は、俺がそっちに行く』
『へ?』
『その変わり、次は、次からは俺の方に来てくれよ…な?』
キラーン
か、かっこいい
『ほら、怖くない』
『あっ!』
いつの間にか、田原様が近くまで来ていましたわ。というか、
『私は子供ではありませんわ。そんなあやし方しても…』
『でも、泣いてる』
『えっ?』
ほ、本当ですわ。
なんで、涙なんか…
『大丈夫だよ』
『?』
『大丈夫、大丈夫』
田原は、リリーの頭にポンと手を置いて、わしゃわしゃとその綺麗な金髪を撫でた。
「む?これだけきくと田原が変態みたいだな」
間違ってはいないが…
「それから私は田原様にベタ惚れ。ずっとついていくと誓ったんです!」
「いやぁ」
その瞬間、誰かが会話に入ってくる。
「って、田原、いつの間に起きた?」
いままでずっと眠ってたのに…
因みに馬車の従者は交代交代まわしている。
「さっき、な。確かに」
ポンと田原はリリーの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「これだけで黙ってたら、可愛いんだけど(あと少し痩せれば)」
「田原様ー!?」
「おお」
顔、真っ赤じゃん。
頭から煙出ちゃうよ…
「…決めましたわ!」
「ん?」
「私!痩せますわ!」
──!?
「私も手伝うわ!」
キティもか!
「具体的にはどうするんだ?」
「えーっと、まずはスクワット…」
帰郷してもし無事なら毎日やるらしい…
頑張るなぁ
恋の力ってやつ?
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