王道

こんぶ

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第一章 家

第十話 妹

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『ゴザル!』

『?…どした?』

『兄上!見るでゴザルよ、これ!』

『んー、おぉ?すごいな!よく頑張ったな!』

目の前にあったのは巨大な芋だった。
芋掘りでとってきたのだと言う。

『兄上、一緒に食べるでゴザル』

『えー、あんま兄ちゃんすきくないなー』

『じゃあ食べないでゴザル~』

『何でだよ~』

昼下がり、木の下で、交わした会話。



「しかし、早い帰郷だよなぁ。両親はなんて言うんだか」

俺は目の前にたつ家を見ながら思った。
築二十年、まぁまぁな敷地を持ち、少々古さは匂わせるが、しかし家の壁の白さ健在で、和風と洋風を足したような家だ。
玄関には階段などついてはおらず、二階建て。

場所は王都の北部、場所的には花の区域と呼ばれるここは、総面積21万㎢という広大な土地を持つ。
世界的には極小だが。
世界の総面積、約2436000000㎢
その内、海の割合が6.5陸の割合が3.5となっている。
つまり陸面積は約852600000㎢となる。
またその内を九つの大陸が占めている。
アバルガンディ大陸
ドラゥディン大陸
エーデルガンド大陸
トゥラティン大陸
シュバルティーノ大陸
ダーベルンド大陸
ナヒリスカ大陸
オオランディオー大陸
エステル大陸

以上九つの大陸に分かれる。

またその内、この国、ランディ国があるのはトゥラティン大陸であり、そのトゥラティン大陸でも北部に位置する。
トゥラティン大陸内に、国はおよそ60ある。ちなみにここの国の名はランディ国。

さらにランディ国には、北都、南都、東都、西都、王都の五つに位置する。

さらにここは、王都と北都の間に位置する。
その中でおよそ六つの区域があり、ここ花の区域を中心に、薔薇の区域や、聖霊の区域などある。

ちなみにここ花の区域の総人口は1200人。

その人口密度はおよそ0.005(1㎢あたり)
という事になる。

つまり、周りに人はいないと思って良い。

因みに王都はめちゃくちゃに近いし、殆どの花の区域の人はここら一帯に住んでいるので、結構人は居るように思える。

まぁ、それだけだ。
実際は、単位にすれば200㎢に一人しかいないことになる。
全く人は少ないものだ。

しかし、人口と面積が最も大きいと言われているエステル大陸、そこの面積と人口は洒落にならない。

面積、約430000000㎢
人口、約3100000000 人

人口密度、約7.2人(1㎢あたり)

それでもまぁ少ない方か…

「…」

話は変わるが、しかし、唐突に現れたものだよなぁ。魔王軍って。

最近よく考えるのだが、俺の見立てでは恐らく自称魔王軍は、宇宙人か、或いは海の生物ではないか、と思うのだ。

何故ならば彼らは圧倒的に未知数。

今のところ人類の未開拓地など、宇宙と広大な海しかあるまい。
そこに生息していて、地上に攻めいったのか。
でも唐突過ぎないか?

本当に何が目的なのか。
人々にステータスという無意味な数値を意味を持たせることによって、弱者が強者に勝てるような世界を作りたかったのか?

否。

賢者は強者に勝つ。

そこまで阿呆ではないか。
しかし、実際に魔王軍のモノタチと邂逅してみるまでは、何が何だか、何だよなぁ。

「あ、やべ」

てっきり家の事を忘れていた。

さて、入ろ入ろ。

インターホンを押す。

カチッ
ピンポーン

「ごめん下さーい」

って、余所余所しいな、俺…
自宅だろぉ?


「って、誰もいないのか?」

余りにも静か過ぎるよな。ここまで出ないって事は流石に怪しい。
つまり、考えられる可能性は居留守か留守かだろう。

まぁ自宅だし、勝手に入るのは吝かではない。

ガラッと家の戸を開けた。

まぁ、勿論誰も迎えてくれるわけ──

「──っぁあぁあぉあァアアアあ!!」

「??」

そこにいたのは、親父。
包丁を持って親父が大声をだして、つきささんばかりに俺に向かって走り込んできた。

えっ?ちょ、ま。

どういう事だ?

「ッッ??お前、もしかして」

「んー、ラフォーレティーナだよ」

「は、……はぁーっ」

親父は安堵の息を漏らす。

何かあったのか?そこまで必死になるなんて。

「取り敢えず、お前が無事で良かったよ。二階に上がろう。そこで色々説明するから。それに、母さんとあいつがいる」

「…っ!あいつって言うなよ」

「…」

「ちゃんと名前がっ」

「…あれは、お前より酷いぞ?」

「まだ若い!」

「…そうは言っても──」



「まぁまぁ、その辺りにしたら?」

「…ぅ、母さん…か?」

やつれて痩せてはいるものの、それは見紛う事も無く母さんであった。

「さぁ、二階に行けば家族皆が揃うわね」

「…」

「はぁーっ、しゃーない。親父、今は非常時。肩貸してやるよ」

「…分かった。呉越同舟だ」

家族だけどな!



二階に上がる。
階段は軋む事無くタンタンッと心地よく足を走らせる。
さて、二階の最も広い、二次リビングへ来た。
中へ入る。

「むむ?」

「よぉ」

「むむむ!?」

「よ、よお」

「むむむむっ!?も、もしや」

「は、はぁ」

「もしや兄上ーっ!?」

「そうだけど」

妹、ラックはそうやって、大声を張り上げた。

この言葉使いは何に影響されたのか、未だに分からないが、しかし高校三年にもなって使っていると言うことを考えれば、まぁもはや一つの個性であろう。
容姿は普通。平凡。並み。
体型も普通。平凡。並み。

ラック…

「あー、げ、元気してたか?」

「うむ」

「そうか。そりゃ良かったよ」

「ありがとうでゴザル」



ただ一つ、ラックの平凡では無いところがある。
それは─

「あっ、またやってしまったでゴザル」

ラックが立とうとした時だった。
近くに置いてあった開きっぱなしのペットボトル(水入り)をごと、と倒してしまった。
水がこぼれていく。

「あっ、あーあー。俺雑巾持ってくるよ」

「大丈夫でゴザル。タオルでふくでゴザル」

「ん、そう?」

「そうでゴザル」

ラックはタオルでこぼれた水を拭いた。

「…」

「…」

妙な沈黙。

「俺がいなくなってどんな感じ?」

「…結構やれてるでゴザルよ」

「…本当にか?」

「…」

「…」

「嘘でゴザル…ホントは兄上が出て行ってから、寂しかったでゴザル」

「…そうか」

そうだよなぁ。
俺がこの家に未練があると言えば、ラックの事しか無いだろうから。

「…」

少し赤みがかった茶髪。少々ロング。
丸ではなく、スタイリッシュな眼鏡をかけている。
服は黒一色。

これが、今の俺の妹の姿だ。


そして、俺が守らなくてはいけない人物。

付与防御エンチャントプロテクト

ラックに防御を付与する。

さて、少し見てみるか。

ラックのステータスを。

鑑定アナライズ

________

ラック

Lv21

HP  400
STR 150
VIT 600

総ランク F

________


これってどうなのだろうか?

強い方なのかな?

「…あ、兄上。後、後」

「ん?おあ、すまん。親父、母さん」

そこには、突っ立っている二人の姿があった。

「ふふ、やはりお前達は仲が良いな」

「…そうね」

「俺達が話しかけても殆ど無視されてお終いだからな」

「…そうかよ。まぁ、しょうが無いんじゃ無いの?」

「…そうかも知れないな…」

親父は悲壮な顔をした後、キリッと顔を変えて俺に言う。

「さて、さっきの事の説明なんだが…」

「…あぁ。どうしたんだ?一体」

「お前の事を魔物かと思ってな」

「…」

それってどうなの?

まぁ注意深いのは良いけどさ。

「だけどあんたらが魔物如きで怖じ気付くとは思えないけどな」

「…まぁ、魔物だけなら、そこまで怯える必要は無いのかも知れないけどな」

「?何だよ」

「来たんだよ」

「何が」

「魔王軍の、幹部が」

「…──っ?」

「…本当だ」

「いつ、どこで?詳しく話せ!」



「あー、分かってる。あれは、お前が出て行ってから、少ししてからだったな」

いきなりテレビがおかしくなって、最初の方は馬鹿馬鹿しいと、家族みんな嘲っていたらしい。

しかし、翌日、周りの住民が魔物に襲われ、重傷者が出てしまい、流石にこれはやばいな、と。
そこで初めて恐怖を感じたらしい。

しかしそこからも別に魔物だけならば大きな苦戦はなく、倒せるには倒せたらしい。
──が、

ある日の事だ。

食材を調達しようと、親父が出かけようとしたとき、王都に途轍もない大きな爆発が起こったらしい。

それは、何かが落ちてきて発生したものだと、親父は見て確信したらしい。
何故なら空には赤い飛行雲が描かれ、王都の方へ消えいるように入っていったのを見たからだ。

そして、数刻後、王都の門が開かれ、そこから恐怖をまき散らすような見た目をした化け物が出て来たらしい。
般若のようだった、と語る。

花の区域の人物はこう言われたらしい。

『聞け!愚かな虫共が!我は魔王軍直属緑の団、第三師団長、アストレア!今日から貴様らを統治する事になった!命令に逆らえば死しか無いからな!さて、ではまず住民全員を集めようか!住民は全員集まれ!集まれなかった者は私が殺してやろう』

それを聞いた住民は皆でてくる。
しかし、一人、少年が遅れて出てくる。

『おい貴様、何故遅れた?』

「え、えっと、トイレに」

『まぁいいか』

そう言いながら、アストレアは子供の首を撥ねた。

まるで当たり前のように。

「っいゃあぁあぁ!!」

『うるさい』

その母親であろう人物も泣き叫んだ、という理由で殺される。

「──っ」

父親であろう人物は叫ぶのを必死にこらえ、唇を噛みしめ、血と涙を流しながら、静かに直立していたらしい。

『まーこういうことだ。これから時折指示をしに来るので、じゃ。あー、一つ言っておくが、逃げるなんて出来ないからな。もし逃げたとしても瞬殺してやるから。じゃ、せいぜい楽しんで過ごしておけよ。俺はまぁ多分来週には来ると思うから』

そうしてそいつは、アストレアは帰っていったらしい。

「それから毎日みんな怯えて過ごすようになってな…」

「なるほどな」

「それだけじゃない…それから奴はここにきて、そしてこう言ったんだよ」



──『今俺は苛ついてんだ…誰か一匹、俺に生贄を捧げろ』

と。

『来週まで待ってやる…来週のいつかに来てやるからな…せいぜい醜い争いでもしてろよ。ハハハハ』

「……あんた、まさか」

「…そう言うこった」

「ッッッッ!!!!」


何だかこの辺りだけ片付いてると思った。
こいつ、この野郎!

「っ!ラックを生贄にしようとしてやがっなぁ!てめぇ!」

「しようと、じゃない。もう決まってる」

「は?」

「ラックはもう生贄だよ。あいつもそれを受け入れた」

「っ」

顔が、引きつる。

頭の中はぐしゃぐしゃだ。

意味分からねぇよ。
何だよそれ。

「ラック…お前は、本当に」

「もう、いいでゴザルよ、兄上」

「─」

「兄上は頑張りすぎでゴザル」

「どっちだよ…どっちの方が頑張りすぎだよ!」

「私は誰にも必要とされてこなかったでゴザル…でも初めて誰かに必要とされて気がするでゴザル」

「っ!ちょっと来い!」

俺はラックの手を引いて走って行く。

「あ、ちょ、ラフ!」

「こらぁ!逃げんなぁ!」

「っ!逃げねぇよ!お前らみたいにな!!」


「ちょ、兄上?痛いでゴザル!」

「そんなもん、いくらでも治せる」

「…はぁ?何を言ってるんでゴザルか?魔法があるわけでもゴザらんのに」

「…」

ある。
魔法はある。

だから、表面上の傷なんて幾らでも治せるんだ。

だけど──心の傷は魔法でも癒やせないんだぜ。

「教えてやるよ、お前が誰かに必要とされてるって事を」

─────



ラックは、誰にも必要とされていなかった。
それは、紛れもなく、事実だ。

空気が読めない訳ではない。
話がこれといって面白い訳でもない。
これといって頭が良いわけでもない。
これといって容姿が美しい訳でもない。

だが一つ、大きな欠点があった。

それは、報われなさだった。
俺が十歳の頃。
ラックは当時七歳である。


「兄上、逆上がりの練習を手伝って欲しいでゴザル」

「はは、熱心だな」

俺は必死に教えた。

「そうそう!そうだよ!それそれ!」

「で、出来たでゴザル」

「良かったなぁ!」

翌日。

泥まみれのラックが帰ってきた。

「…どうした?」

「…失敗したでゴザル!」

ラックは、笑顔で言った。
何でそんなことを笑顔で言うのか分からなかった。

「なあ、おい」

「はい?」

「お前さー」

「…?」

「要らねぇんだわ、このクラスに」

それは、ラックが中学三年卒業直前に言われた言葉である。

努力して、努力して努力して努力して。

それでも全く報われない。

結局は結果。

そこまでの道程になんて全く意味は無い。

究極、結果が全て。
結果が統べてなんだ。

誰にもその努力を悟らせず、しかし全く報われず。

それでも諦めず、心を保ち続け。

────

俺は妹に絶対かなわない事があるんだ

──なんだい?

それは、努力さ

──?

努力出来るってのもまた、才能の一つなのさ

──────────



だから、ラック。

俺はラックの手を離し、正面に向く。

「…?」

俺は息を勢いよく吸う。


「すぅぅぅ」

「…、あ、兄う」

「───────────」




私は生まれつき誰にも必要とされていなかった。

誰かの為に生まれてきたのではない。

産まされた。
なんて理不尽な話であろうか。

子は親を選べない。

当たり前だ。

私は、運の悪い親に当たったのだと思う。

私はイジメられていた。

しかし、両親は全く見向きもしてくれなかった。
相談した。
ちゃんと話そうとした。
けどダメだった。

私は、そんな両親が許せなかった。

「また泣いてるの?」

「っ」

私は、運の良い兄を持ったと思う。

兄には時々羨望する。

ああ、私もこんな風になりたいなぁ、と。

でも、私は成果を出せない。

周りに落胆され、無視されてお終い。

無視というのは、多分最も心にくるのでは無いだろうか。

存在を消されたような感覚。
自分がいないという錯覚。
相手にされているということは、まだ幸せなのかも知れない。


私は学校に通う前に、必ず吐いていた。

でも、それの気付いて止めてくれたのは兄しかいなかった。

私に愛を向ける者はいなかった。
兄の行為は、よく分からなかった。


私は空気なのだから、別に良いだろうと。

でも、どうしてだろうか。

なんていうか、私は私の事を考えると────


「くぁっぅうううう」


───時々、死んでしまいたいくらい、胸が締め付けられる。


ポジティブに振る舞っても、ネガティブに振る舞っても、ただ生きてようが死んでようが同じ、変わりはない。

誰も気にしない。

そこに悲しさはなく、一片の感情もない。

────

「逆上がりのテストをするー。はい、まず──」

(大丈夫、兄上と練習したんだから)

「次、ラック」

「は、はい」

(せーのっ!)

「う~~ん!」

ラックは必死に上がろうとする。

「はい、失格。次──」

「───────」

(大丈夫、大丈夫よ)

「おい、ラック」

「?」

「このテスト、お前だけ合格出来なかったんだぞ」

教師が冷淡な声で話す。体格は相当あり、百八十はあるかという大きさ。強面の男である。

「す、すいまっ」

「ふざけんじゃねぇ!!!!」

教師はラックの小さな体に、思いっきり蹴りを入れる。
ラックの小さな体は宙を舞い、砂場の方へ落ちた。

「ごふっ」

(…あ、ぁぁ、い、息が出来な──)

「オラッおらおら!!」

そして、追撃とばかりに男教師はラックの体に何度も蹴りを入れる。

「お、っあ、や、は、ぁっあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」

ラックは呼吸が出来なくなり、涙を流しながら、その余りにも急な衝撃によって、吐く。

「お”え”え”」

「うわっ、きったねぇ!吐きやがったぁ!」

「きっもー」

それからラックは一人で片付けをさせられ、ガクガクの膝で帰り道を歩いていた。

すると──

「オラッ」

どんという衝撃と共にラックは田んぼに突き落とされる。

そして、泥に突っ込んでいった。

「…」

「ギャハハ、にっげろぉ!ゲロ女だぞー」

走って追いつける足の速さは、勿論ラックには無かった。

「…」

──

「ちょっと!どうしたの!?その服!こんなに泥まみれにして」

「…ごめんなさ─」

「はぁー、あんたなんて産むんじゃ無かった」

──────────

高校三年になった。
やっと卒業か、という所で、変な事が起きた。
魔物というやつが、私の命を欲しがっていると言っていた。

私が死ねば、皆は助かると言っている。

そうだ!こんなことは私にしか出来ないんだ!

「ハハハハハハハ」

そして数日後、彼は来た。

─────────────

兄上は急に手を離した。

そして、私の方に向いた。

「?」

「すぅぅぅ」

「あ、兄う─」

「──────────」

ラフォーレティーナは口をパクパク動かしていた。

否、喋っていたが、聞き取れなかった。
何故ならそれは、空からの訪問者が爆音をたてて着地したからである。

「おー?これが生贄かぁ!よろしくな!餌。俺は魔王軍直属緑の団、第三師団長アストレア!」

般若の顔をしたそいつは、意気揚々に話し出した。

















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