13 / 35
第二章 魔王軍戦
第二話 一閃
しおりを挟む
────ダンッ!
アストレアは踏み込んだ。
その勢いは凄まじく、風がアストレアを覆うが如く、そして刀を抜いた。
その時、ラフォーレティーナ、微動だにせず。
全くのまま、直立。
アストレアは刀を横凪し、佩く。
それは、剣先が見えない程の速度であった。
であったのだが──
ラフォーレティーナ、そこで初めて腰に手を当て、刀を出す。
その時、アストレアの刀はラフォーレティーナの目の前まで迫っていた。
しかし────
ラフォーレティーナ。
スチャ、と手に刀を当て、
抜いて、
佩く。
「っっ!?」
暴風と共に、アストレアは数メートル吹き飛ばされる。
そして気付く。
己の刀が折れている事に。
「──貴様、何をした?」
ここで初めてアストレアが本気になったように言う。
ラフォーレティーナはスタスタと歩き、そしてアストレアの前に出た。
しかし、無言。
「っ!何をした!?」
アストレアは、少し焦り出す。
「…黙れ」
「っ!」
ただの粋がりではない。
力がある者が粋がるのは当然なのだ。
そこで、アストレアは確信した。
こいつは強者だと。
しかも戦ってはいけない程の。
その途端、体中から冷や汗があふれ出てくる。そして、アストレアはあることを思いだした。
「っ!さらばだ!」
アストレアは魔王から聞かされていた。
世界には途轍もない化け物がいる、と。
そいつとは関わるな、と。
そして見つけ次第報告しろ、と。
故に、アストレアは帰ろうとする。
この情報を持ち帰らねば、と。
右手に持つのは赤き球。
これの名を、『転移球』
己の望んだ場所へと行くことが出来る。
しかも魔法的能力が無かったとしても使える便利品だ。
「発動!」
…
静寂が訪れる。
「は?」
何も、起こらない。
「一体、どういう」
「ここだ」
ラフォーレティーナは、赤い球をお手玉のようにポンポンと投げる。
「っぁ、き、貴様」
「さぁ、どうする?他に転移系のアイテムはないだろ?能力もないようだし」
「…くそがぁぁ」
「姑息だな。だが、嫌いじゃない」
時間稼ぎとばかりにアストレアはラフォーレティーナに殴りかかる。
「────」
アストレアは聞き逃さなかった。
刹那にも満たない時間で、目前に拳が迫ったラフォーレティーナは一言、
「───一閃」
と、言ったのだ。
その途端、玉砕覚悟とばかりに突っかかったアストレアの首は撥ね飛ぶ。
ただの居合い斬り。
が、威力は尋常ではない。やろうと思えば建物一つさえ斬れるだろう。
「さぁ、て…ラックは、と」
刀をしまい、妹の方を向く。
「あ…兄上」
「ん?」
「…すまないでゴザル」
「ん?」
「も、漏らしてしまったでゴザル…」
「…」
それは、しょうがないなぁ、とラフォーレティーナはその場で洗濯をする事にした。
「ラック、ちょっとそのまま立ってて」
「わ、分かったでゴザル」
「ふぅ、行くぜ。『洗浄』」
その瞬間、パアッと、ラックの体が綺麗になる。
「す、すごいでゴザル…な、何でゴザルか?さっきからあれこれと」
「魔法だよ。知らない様だけど。後で教えてやる」
「そうでゴザルか。して兄上、さっきは私に何を言おうとしてたのでゴザルか?」
「ん?あぁ、あれか。あれは、お前はお前でいろって言おうとしてたんだ」
「どういう?」
「お前が必要な人は、そこら中にいるってこと」
「…そんな事」
「俺がいる」
「…」
「それに、母さんや父さんもいるし、あぁ、近所のおばさんも」
「…私は誰にも」
「それに、さ」
ラフォーレティーナはラックのことをあつく抱擁する。
「あ」
「…」
「温かい…」
「だろ?」
それにさ、誰にも必要とされない奴なんていないんだ。
「お前は、お前だ。だから、絶対に、自分を折るようなことを、するんじゃない。お前は必要だよ」
「わっ、私は」
「ん?」
「私は生きてていいんでずが?」
涙をこぼして言った。
「わだじは、だれにぼあいざれず」
「うん」
「辛くて」
「うん」
「苦しくて、痛くて」
「うん」
「どうしようもなくて、いやだっだ」
「うん」
「死にたかった」
「そうだな」
「死にたかった!みんないやだっだ!みんなちょっと違ったり出来なかったりしただけでせめて」
「うん」
「もっと平和にしたかった」
「…」
「普通が良かった」
「そうだな」
「うわっうわ”あ”あ”あ”ん」
「今は泣け。全部受け止めてやるよ」
「うわっ、あぇあぁぁあ」
何の問題も解決してないけど。
それでもこの一歩は、大きな一歩である。
◇
さて、あのクソ親をどうにかするか。
「『心操作』」
両親の心を操る。
さてと、これでよし。
◇
「さて、帰ろう」
「…でっ、でも兄上…私はあの人たちが怖くて」
「大丈夫、大丈夫だから」
「…」
ガチャリと戸を開ける。
「…ほら、入ろう」
「うん」
歩き慣れた筈の廊下は、何故か悲しくてたまらなかった。
「あ」
リビングには両親がいた。
「…ラック、か」
「…」
「ラック、何て言えばいいのか分からないが…」
両親は、言った。
「「…今まで、ごめんなさい」」
「…っ」
「辛い思いさせて、ごめんな。父さんも母さんも鈍感で、ぜんっぜん気付かなくてさ」
そこで、ラックは笑った。
「こんな、これってうん」
四人は肩を抱き合う。
「家族みたい」
家族だから。
でも、それは、家族にとっては大きな一歩だった。
数日後。
「じゃ、出て行くわ」
「じゃーねー」
「あぁ!じゃあな!ラック!必ず帰ってくる。」
「お母さんたちに言わなくていいの?」
「いい。いい!じゃ」
「もうー、シャイなんだからぁ」
ラックは言葉使いがごっちゃになり、ゴザルの時もあれば普通に喋るときもある。
「じゃあね」
「うん」
俺はなるべく早く帰ろうと思う。
何故なら、あの両親は俺が心操作しただけなんだから。
「さてと」
皆に連絡を取るか。
通信
『皆、至急大広間に集まってくれ』
アストレアは踏み込んだ。
その勢いは凄まじく、風がアストレアを覆うが如く、そして刀を抜いた。
その時、ラフォーレティーナ、微動だにせず。
全くのまま、直立。
アストレアは刀を横凪し、佩く。
それは、剣先が見えない程の速度であった。
であったのだが──
ラフォーレティーナ、そこで初めて腰に手を当て、刀を出す。
その時、アストレアの刀はラフォーレティーナの目の前まで迫っていた。
しかし────
ラフォーレティーナ。
スチャ、と手に刀を当て、
抜いて、
佩く。
「っっ!?」
暴風と共に、アストレアは数メートル吹き飛ばされる。
そして気付く。
己の刀が折れている事に。
「──貴様、何をした?」
ここで初めてアストレアが本気になったように言う。
ラフォーレティーナはスタスタと歩き、そしてアストレアの前に出た。
しかし、無言。
「っ!何をした!?」
アストレアは、少し焦り出す。
「…黙れ」
「っ!」
ただの粋がりではない。
力がある者が粋がるのは当然なのだ。
そこで、アストレアは確信した。
こいつは強者だと。
しかも戦ってはいけない程の。
その途端、体中から冷や汗があふれ出てくる。そして、アストレアはあることを思いだした。
「っ!さらばだ!」
アストレアは魔王から聞かされていた。
世界には途轍もない化け物がいる、と。
そいつとは関わるな、と。
そして見つけ次第報告しろ、と。
故に、アストレアは帰ろうとする。
この情報を持ち帰らねば、と。
右手に持つのは赤き球。
これの名を、『転移球』
己の望んだ場所へと行くことが出来る。
しかも魔法的能力が無かったとしても使える便利品だ。
「発動!」
…
静寂が訪れる。
「は?」
何も、起こらない。
「一体、どういう」
「ここだ」
ラフォーレティーナは、赤い球をお手玉のようにポンポンと投げる。
「っぁ、き、貴様」
「さぁ、どうする?他に転移系のアイテムはないだろ?能力もないようだし」
「…くそがぁぁ」
「姑息だな。だが、嫌いじゃない」
時間稼ぎとばかりにアストレアはラフォーレティーナに殴りかかる。
「────」
アストレアは聞き逃さなかった。
刹那にも満たない時間で、目前に拳が迫ったラフォーレティーナは一言、
「───一閃」
と、言ったのだ。
その途端、玉砕覚悟とばかりに突っかかったアストレアの首は撥ね飛ぶ。
ただの居合い斬り。
が、威力は尋常ではない。やろうと思えば建物一つさえ斬れるだろう。
「さぁ、て…ラックは、と」
刀をしまい、妹の方を向く。
「あ…兄上」
「ん?」
「…すまないでゴザル」
「ん?」
「も、漏らしてしまったでゴザル…」
「…」
それは、しょうがないなぁ、とラフォーレティーナはその場で洗濯をする事にした。
「ラック、ちょっとそのまま立ってて」
「わ、分かったでゴザル」
「ふぅ、行くぜ。『洗浄』」
その瞬間、パアッと、ラックの体が綺麗になる。
「す、すごいでゴザル…な、何でゴザルか?さっきからあれこれと」
「魔法だよ。知らない様だけど。後で教えてやる」
「そうでゴザルか。して兄上、さっきは私に何を言おうとしてたのでゴザルか?」
「ん?あぁ、あれか。あれは、お前はお前でいろって言おうとしてたんだ」
「どういう?」
「お前が必要な人は、そこら中にいるってこと」
「…そんな事」
「俺がいる」
「…」
「それに、母さんや父さんもいるし、あぁ、近所のおばさんも」
「…私は誰にも」
「それに、さ」
ラフォーレティーナはラックのことをあつく抱擁する。
「あ」
「…」
「温かい…」
「だろ?」
それにさ、誰にも必要とされない奴なんていないんだ。
「お前は、お前だ。だから、絶対に、自分を折るようなことを、するんじゃない。お前は必要だよ」
「わっ、私は」
「ん?」
「私は生きてていいんでずが?」
涙をこぼして言った。
「わだじは、だれにぼあいざれず」
「うん」
「辛くて」
「うん」
「苦しくて、痛くて」
「うん」
「どうしようもなくて、いやだっだ」
「うん」
「死にたかった」
「そうだな」
「死にたかった!みんないやだっだ!みんなちょっと違ったり出来なかったりしただけでせめて」
「うん」
「もっと平和にしたかった」
「…」
「普通が良かった」
「そうだな」
「うわっうわ”あ”あ”あ”ん」
「今は泣け。全部受け止めてやるよ」
「うわっ、あぇあぁぁあ」
何の問題も解決してないけど。
それでもこの一歩は、大きな一歩である。
◇
さて、あのクソ親をどうにかするか。
「『心操作』」
両親の心を操る。
さてと、これでよし。
◇
「さて、帰ろう」
「…でっ、でも兄上…私はあの人たちが怖くて」
「大丈夫、大丈夫だから」
「…」
ガチャリと戸を開ける。
「…ほら、入ろう」
「うん」
歩き慣れた筈の廊下は、何故か悲しくてたまらなかった。
「あ」
リビングには両親がいた。
「…ラック、か」
「…」
「ラック、何て言えばいいのか分からないが…」
両親は、言った。
「「…今まで、ごめんなさい」」
「…っ」
「辛い思いさせて、ごめんな。父さんも母さんも鈍感で、ぜんっぜん気付かなくてさ」
そこで、ラックは笑った。
「こんな、これってうん」
四人は肩を抱き合う。
「家族みたい」
家族だから。
でも、それは、家族にとっては大きな一歩だった。
数日後。
「じゃ、出て行くわ」
「じゃーねー」
「あぁ!じゃあな!ラック!必ず帰ってくる。」
「お母さんたちに言わなくていいの?」
「いい。いい!じゃ」
「もうー、シャイなんだからぁ」
ラックは言葉使いがごっちゃになり、ゴザルの時もあれば普通に喋るときもある。
「じゃあね」
「うん」
俺はなるべく早く帰ろうと思う。
何故なら、あの両親は俺が心操作しただけなんだから。
「さてと」
皆に連絡を取るか。
通信
『皆、至急大広間に集まってくれ』
0
あなたにおすすめの小説
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる