王道

こんぶ

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第二章 魔王軍戦

第二話 一閃

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────ダンッ!
アストレアは踏み込んだ。
その勢いは凄まじく、風がアストレアを覆うが如く、そして刀を抜いた。

その時、ラフォーレティーナ、微動だにせず。
全くのまま、直立。

アストレアは刀を横凪し、佩く。
それは、剣先が見えない程の速度であった。

であったのだが──

ラフォーレティーナ、そこで初めて腰に手を当て、刀を出す。

その時、アストレアの刀はラフォーレティーナの目の前まで迫っていた。

しかし────



ラフォーレティーナ。
スチャ、と手に刀を当て、
抜いて、
佩く。

「っっ!?」

暴風と共に、アストレアは数メートル吹き飛ばされる。

そして気付く。
己の刀が折れている事に。

「──貴様、何をした?」

ここで初めてアストレアが本気になったように言う。


ラフォーレティーナはスタスタと歩き、そしてアストレアの前に出た。
しかし、無言。

「っ!何をした!?」

アストレアは、少し焦り出す。

「…黙れ」

「っ!」

ただの粋がりではない。
力がある者が粋がるのは当然なのだ。


そこで、アストレアは確信した。
こいつは強者だと。
しかも戦ってはいけない程の。
その途端、体中から冷や汗があふれ出てくる。そして、アストレアはあることを思いだした。

「っ!さらばだ!」

アストレアは魔王から聞かされていた。
世界には途轍もない化け物がいる、と。
そいつとは関わるな、と。

そして見つけ次第報告しろ、と。

故に、アストレアは帰ろうとする。
この情報を持ち帰らねば、と。

右手に持つのは赤き球。
これの名を、『転移球』

己の望んだ場所へと行くことが出来る。
しかも魔法的能力が無かったとしても使える便利品だ。

「発動!」



静寂が訪れる。


「は?」


何も、起こらない。

「一体、どういう」

「ここだ」

ラフォーレティーナは、赤い球をお手玉のようにポンポンと投げる。

「っぁ、き、貴様」

「さぁ、どうする?他に転移系のアイテムはないだろ?能力もないようだし」

「…くそがぁぁ」

「姑息だな。だが、嫌いじゃない」

時間稼ぎとばかりにアストレアはラフォーレティーナに殴りかかる。

「────」

アストレアは聞き逃さなかった。
刹那にも満たない時間で、目前に拳が迫ったラフォーレティーナは一言、


「───一閃」

と、言ったのだ。



その途端、玉砕覚悟とばかりに突っかかったアストレアの首は撥ね飛ぶ。


ただの居合い斬り。
が、威力は尋常ではない。やろうと思えば建物一つさえ斬れるだろう。

「さぁ、て…ラックは、と」

刀をしまい、妹の方を向く。



「あ…兄上」

「ん?」

「…すまないでゴザル」

「ん?」

「も、漏らしてしまったでゴザル…」

「…」

それは、しょうがないなぁ、とラフォーレティーナはその場で洗濯をする事にした。

「ラック、ちょっとそのまま立ってて」

「わ、分かったでゴザル」

「ふぅ、行くぜ。『洗浄ウォッシュ』」

その瞬間、パアッと、ラックの体が綺麗になる。

「す、すごいでゴザル…な、何でゴザルか?さっきからあれこれと」

「魔法だよ。知らない様だけど。後で教えてやる」

「そうでゴザルか。して兄上、さっきは私に何を言おうとしてたのでゴザルか?」

「ん?あぁ、あれか。あれは、お前はお前でいろって言おうとしてたんだ」


「どういう?」

「お前が必要な人は、そこら中にいるってこと」

「…そんな事」

「俺がいる」

「…」

「それに、母さんや父さんもいるし、あぁ、近所のおばさんも」

「…私は誰にも」

「それに、さ」

ラフォーレティーナはラックのことをあつく抱擁する。

「あ」

「…」

「温かい…」

「だろ?」

それにさ、誰にも必要とされない奴なんていないんだ。

「お前は、お前だ。だから、絶対に、自分を折るようなことを、するんじゃない。お前は必要だよ」

「わっ、私は」

「ん?」

「私は生きてていいんでずが?」

涙をこぼして言った。

「わだじは、だれにぼあいざれず」

「うん」

「辛くて」

「うん」

「苦しくて、痛くて」

「うん」

「どうしようもなくて、いやだっだ」

「うん」

「死にたかった」

「そうだな」

「死にたかった!みんないやだっだ!みんなちょっと違ったり出来なかったりしただけでせめて」

「うん」

「もっと平和にしたかった」

「…」

「普通が良かった」

「そうだな」

「うわっうわ”あ”あ”あ”ん」

「今は泣け。全部受け止めてやるよ」

「うわっ、あぇあぁぁあ」

何の問題も解決してないけど。
それでもこの一歩は、大きな一歩である。







さて、あのクソ親をどうにかするか。

「『心操作マインドコントロール』」

両親の心を操る。

さてと、これでよし。




「さて、帰ろう」

「…でっ、でも兄上…私はあの人たちが怖くて」

「大丈夫、大丈夫だから」

「…」

ガチャリと戸を開ける。

「…ほら、入ろう」

「うん」

歩き慣れた筈の廊下は、何故か悲しくてたまらなかった。

「あ」

リビングには両親がいた。

「…ラック、か」

「…」

「ラック、何て言えばいいのか分からないが…」

両親は、言った。

「「…今まで、ごめんなさい」」

「…っ」

「辛い思いさせて、ごめんな。父さんも母さんも鈍感で、ぜんっぜん気付かなくてさ」

そこで、ラックは笑った。


「こんな、これってうん」

四人は肩を抱き合う。

「家族みたい」

家族だから。

でも、それは、家族にとっては大きな一歩だった。









数日後。



「じゃ、出て行くわ」

「じゃーねー」

「あぁ!じゃあな!ラック!必ず帰ってくる。」

「お母さんたちに言わなくていいの?」


「いい。いい!じゃ」

「もうー、シャイなんだからぁ」

ラックは言葉使いがごっちゃになり、ゴザルの時もあれば普通に喋るときもある。

「じゃあね」

「うん」

俺はなるべく早く帰ろうと思う。

何故なら、あの両親は俺が心操作マインドコントロールしただけなんだから。

「さてと」

皆に連絡を取るか。

通信コミュニケーション


『皆、至急大広間に集まってくれ』

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