ミッション

こんぶ

文字の大きさ
2 / 28

新井 香龍

しおりを挟む
六月某日

「ねぇー、見たぁ?新作のあの映画ー」

「あぁー、見た見た。見たわー。あれほんっとにつまんねーよなぁ」

キャハハと高らかに笑う声が聞こえてくる。
必然的に俺はそっちを見てしまう。

「うわ、新井がこっち見てるんですけど」

「キメぇーどっか行けよ」

「クソオタクー消えろよぉ~」

「なぁ?オラァ!」

バン!と俺の机を蹴りとばされる。

「なんか言えや…あぁ!?」

「……」

「ちっ、シカトかよ」

「もういいやお前」

俺、新井 香龍は現在高校2年生…なんだが、この高校に入って一年で、まぁ要するに去年から、俺はイジメの対象となっていた。
故にイジメの対処方の一つとして無視するということを覚えた。
そうすると殴られないのだ。
実際は震えが止まらないほど怖いけれど。

キーンコーンカーンコーン

放課後

自宅に帰る。とは言っても賃金が低いアパートに一人暮らしなのだが。

学校からは徒歩で10分くらいのところにある。

いつも家に着くとこの場面を思い出す。
あれは二年前、家でのことだ。

「香龍…」

「何?母さん」

「…私はね…貴方に…」

「うん?」

「一人暮らしして欲しいの」

家族は妹を含め全会一致で俺の一人暮らしを望んでいた。

あそこまで悲しかったことは、今までの人生で初めてだった。

「出てけ」

「キメェんだよ、正直」

「邪魔」



家族からも追放された俺って一体何なんだろう。 
そうこう考えてる内に家に着いた。
鞄を机にドサッと置く。

イジメとは怖いものだ。
ヒエラルキーの層の高い者はより有利に。逆に低い者はただやられる一方。出来レースとかいう次元の話ではなく、そういう構図なのだ。
教師だって無視する。
善意で助けようとする奴なんてもってのほかいない。
「はぁ…」

高校2年にもなってコレかよ。ハァ、俺の人生って何だ?

もう、死のうかな。

と、邪な考えが頭をよぎる。

「いや、死…は駄目だろ」

いや…本当にそうか?生きてて何の価値がある?俺に…何の価値がある?

友人もいなければ家族もいない。

何もない俺にとって。

自殺したって、誰も…




「人生って何が起こるか分からないものだよ」



亡くなった爺さんの言葉だ。

ありふれた言葉なのに、何故がとても重く思えたのはなんでだろう?

死ぬのは駄目だ。
人生って何が起きるか分かんないものな。
もしかしたら明日俺に彼女が出来るかもしれない。
もしかしたら最近流行りの異世界に転移するのかもしれない。
もしかしたら最近流行りのタピオカジュースになれるかもしれない…
そう考えると心がポジティブになってきた。
「よっしゃ!逞しく生きてやるぜ!」

明日も学校がある。少し憂鬱だ。
ーでも、それを乗り越えれば俺は…

行かなくちゃな。

嫌な思いは少し胸に残るが、それを乗り越えた自分の姿を想像して、嫌な思いを振り切ってやった。

数時間後

さてと。

パジャマに着替えて寝るか。

そうして、着替えて、布団に入る。

「フゥ…グゥーグゥー」

布団とは文明の利器だ。ここまで快適なものを俺は知らない…
ふかふかすぎてあっという間に寝てしまった。

ぞくぞく、と、鳥肌が体を奔った。


















________
______
____
__

ーん?

何処だここ?
目をつぶっているからよく分からないが。
頭もボーッとするし。
うーん、なんか…どっかに…いる?

「ファーァ、眠っ」

欠伸をしながら目を開けるとー

「──は?」

なんだこれ。
夢か。

なんで森の中にいるんだ!?



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)

MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。 しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。 ​母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。  その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。 ​純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。 交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。

処理中です...