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反応不足
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「ッ!」
油断したッ。
もう一匹いたのを失念していた。
「ッッッぁあ!痛ッッッッてぇ!」
痛え!痛ええええ!!
「ハァッハァッ、オェェエ」
あまりの痛さと出血で、視界が目まぐるしくぐるぐると回り、吐いてしまう。
「グッフゥ…なんで…俺が…ごんなっ!」
涙と鼻水と涎を垂れ流して俺は吐き捨てるようにそう言った。
「う”ぅ”っ」
どうしよう。
裂かれた腹の辺りから何かが出て来ている。
「ハァッハァッっ??クソッ」
あまりの痛さで、銃をどこかに手放してしまったらしい。最悪だ。
そしてさらに最悪なことに、目の前には鶏と象とナメクジを合わせたキメラのような生物が、自分の体から出た臓物を気にせず、ヌルヌルと俺の方へ来た。
心なしか、鶏の顔が笑っているようにも見えた。
…俺は…死ぬのか…ここで?
あの爺さんみたいに?
体をぐちゃぐちゃにされ、頭から脳髄をぶちかまし、体中の至る所から血を噴出させ、腹に大きな穴を開けられ、食べられる。
そんな風になるのか?
「…ぃ…だ…」
ーいやだ!
こんな所でそんな死に方してたまるかよ。
生き残ってやる。
ぜってぇ、死なねぇ。
俺は…生き残ってやる!
現実で生きられないのなら、この地獄みてぇな所で生き残ってやる!
そうだ。
「新井、金貸せや」
「新井、サンドバッグになってくんねぇ?」
「ごめん!新井クンっ、君が次のイジメられっこだよ☆」
あそことは、また違う地獄だな。
ここは。
けど、一方的に理不尽にやられるわけではない。
あくまでも地力。
あくまでも平等。
そうだ。ここが…
俺の、生きる場所!
「かかってこいよ、化け物」
今までの知識を総動員させ、どうしたら生き残れるのか、考える。
銃…
そう、銃さえあればなんとかなるこの状況。
だが銃は、こいつの奥に落ちている。
拾うためには、こいつをどうにかしなければいけない。
後ろは崖。
前にはこいつ。
どうやって切り抜けたものか…
「フゥッフゥッ」
単純にすり抜けて通れる隙間が無い。
ならば、肉弾戦でこいつをどうにかして、その隙に、銃をとる。
それしかあるまい。
だが、こいつと直接戦闘して俺は勝てるのか?
自分よりも数倍はあろう肉体だぞ。
けど、或いは。
俺の中には、少し予感があった。
銃があそこまで特殊ならば、手袋や腕輪の力も相当に特殊ではないのか?
腕輪の力は恐らく状況の報告と言ったところだろう。
ならば、手袋は?
恐らくー
「ッ!?」
鶏が、その頭を思いっきり振り下ろしてくる。
そしてそれを紙一重でなんとか避ける。
「ハァッ!ハァッ!」
危なかった。
「ゴケェ!」
ボコンとその突き刺さった地面から頭を引き抜く鶏。
地面に深く刺さっていたことから、相当な威力であろうことが窺える。
「ッハ!」
そしてまた、その頭を振り下ろす鶏。
駄目だ。
今度は避けきれない。
ならばー
「ゴェ?」
パシン!と、俺は鶏の頭をつかんでいた。
「やっぱりな」
この手袋の力は恐らく、身体能力強化。
でなければ、こいつの振り下ろしは受け止める事など出来ずに、腕ごと体を貫通されていただろう。
そうして俺が鶏をどかそうとした時ー
にょ~ん、と鶏の首が伸びた。
「ハッ?」
何だか分からないが、嫌な予感がする。
鶏は、その伸びた頭をー
「っ!」
ブンッ!と、横薙ぎに振るったのだ。
この体は、恐らく視力や聴力も良くなっているのだろうが、その強化された動体視力でさえ、殆ど捉えることが出来なかった。
「フゥッ」
落ち着け。
落ち着いて対処するんだ。
俺はゆっくりと拳を構える。
この強化された肉体ならば、何とかこいつを動かせるはず。
そう思い、体に力を入れ始めた頃ー
ーキィィィと、高音を出しながら手袋から黒い線が出てくる。
それは、すぅ、となんの障害もなく、俺の腹に入っていった。
すると、俺の腹の辺りからキュルキュルと、青白い、丸い光の跡がつく。
「っぉ!?」
な…なんだ?
…いや、今は気にしている場合ではない。目の前の事に集中しなければ。
「フゥッ、フゥッ」
「ゴェェ」
「いくぞッ」
まずはブンと腕を振るう、が、こいつは想像以上の速さで避ける。
次に打ち上げるようにアッパーをするが、また避けられる。
それに反撃するように、鶏は頭を振り下ろしてくる。
「ッ」
ギリギリでそれに反応し、なんとか躱す。
「ハッ」
地面に頭が刺さっている今がチャンスだと思い、蹴り上げようとするがー
ボコンと目玉が出て来て、避けられる。
体も顔のような役割をはたすのか。こいつ。
そして、また地面から頭を引き抜いた鶏は、超高速で再び頭を振り下ろす。
けど、もう流石に慣れてきて、それを見切る事が出来た。
見える!
「フッ!」
パシンと両手で鶏の頭をガッチリ押さえる。
そうすると首を伸ばすことは知っている。
ので、首を伸ばそうとした瞬間にー
「フゥッ!」
全体重をかけて、アッパーを象の体にくらわす。
「ギギェェゴェオポォォン」
すると、黄色っぽい吐瀉物をまき散らしながら、こいつは吹っ飛んでいく。
途轍もない声を上げて。
よし!今だっ。銃をとるぞ!
今まであいつが邪魔で取れなかった銃を取る。
『ピピッ。残り三十分』
時間は大丈夫だな。
あとはー
ヒュゥゥウー、とあいつが空から落ちてくる。
そして、地面に着地する瞬間にー
「アァアァッ!!」
銃を乱射する。
カチッカチッカチッカチッカチッカチッ
ドゥォン!ドゥォン!ドゥォン!ドゥォン!ドゥォン!ドゥォン!
辺り一帯の木々が無くなり、更地のようになってしまう。
ここまでの自然破壊もなかなかないだろう。
「ハァッハアッ」
どうなったのだろう?土煙が舞ってよく見えないがー
「お」
そこには、バラバラに飛び散った肉片だけがあった。
それを見た途端、腕輪から音声が流れる。
『勝利。生還権六日分を取得。帰還』
「おっ?」
その瞬間、視界が暗転し、ブツンと俺の意識は途切れた。
油断したッ。
もう一匹いたのを失念していた。
「ッッッぁあ!痛ッッッッてぇ!」
痛え!痛ええええ!!
「ハァッハァッ、オェェエ」
あまりの痛さと出血で、視界が目まぐるしくぐるぐると回り、吐いてしまう。
「グッフゥ…なんで…俺が…ごんなっ!」
涙と鼻水と涎を垂れ流して俺は吐き捨てるようにそう言った。
「う”ぅ”っ」
どうしよう。
裂かれた腹の辺りから何かが出て来ている。
「ハァッハァッっ??クソッ」
あまりの痛さで、銃をどこかに手放してしまったらしい。最悪だ。
そしてさらに最悪なことに、目の前には鶏と象とナメクジを合わせたキメラのような生物が、自分の体から出た臓物を気にせず、ヌルヌルと俺の方へ来た。
心なしか、鶏の顔が笑っているようにも見えた。
…俺は…死ぬのか…ここで?
あの爺さんみたいに?
体をぐちゃぐちゃにされ、頭から脳髄をぶちかまし、体中の至る所から血を噴出させ、腹に大きな穴を開けられ、食べられる。
そんな風になるのか?
「…ぃ…だ…」
ーいやだ!
こんな所でそんな死に方してたまるかよ。
生き残ってやる。
ぜってぇ、死なねぇ。
俺は…生き残ってやる!
現実で生きられないのなら、この地獄みてぇな所で生き残ってやる!
そうだ。
「新井、金貸せや」
「新井、サンドバッグになってくんねぇ?」
「ごめん!新井クンっ、君が次のイジメられっこだよ☆」
あそことは、また違う地獄だな。
ここは。
けど、一方的に理不尽にやられるわけではない。
あくまでも地力。
あくまでも平等。
そうだ。ここが…
俺の、生きる場所!
「かかってこいよ、化け物」
今までの知識を総動員させ、どうしたら生き残れるのか、考える。
銃…
そう、銃さえあればなんとかなるこの状況。
だが銃は、こいつの奥に落ちている。
拾うためには、こいつをどうにかしなければいけない。
後ろは崖。
前にはこいつ。
どうやって切り抜けたものか…
「フゥッフゥッ」
単純にすり抜けて通れる隙間が無い。
ならば、肉弾戦でこいつをどうにかして、その隙に、銃をとる。
それしかあるまい。
だが、こいつと直接戦闘して俺は勝てるのか?
自分よりも数倍はあろう肉体だぞ。
けど、或いは。
俺の中には、少し予感があった。
銃があそこまで特殊ならば、手袋や腕輪の力も相当に特殊ではないのか?
腕輪の力は恐らく状況の報告と言ったところだろう。
ならば、手袋は?
恐らくー
「ッ!?」
鶏が、その頭を思いっきり振り下ろしてくる。
そしてそれを紙一重でなんとか避ける。
「ハァッ!ハァッ!」
危なかった。
「ゴケェ!」
ボコンとその突き刺さった地面から頭を引き抜く鶏。
地面に深く刺さっていたことから、相当な威力であろうことが窺える。
「ッハ!」
そしてまた、その頭を振り下ろす鶏。
駄目だ。
今度は避けきれない。
ならばー
「ゴェ?」
パシン!と、俺は鶏の頭をつかんでいた。
「やっぱりな」
この手袋の力は恐らく、身体能力強化。
でなければ、こいつの振り下ろしは受け止める事など出来ずに、腕ごと体を貫通されていただろう。
そうして俺が鶏をどかそうとした時ー
にょ~ん、と鶏の首が伸びた。
「ハッ?」
何だか分からないが、嫌な予感がする。
鶏は、その伸びた頭をー
「っ!」
ブンッ!と、横薙ぎに振るったのだ。
この体は、恐らく視力や聴力も良くなっているのだろうが、その強化された動体視力でさえ、殆ど捉えることが出来なかった。
「フゥッ」
落ち着け。
落ち着いて対処するんだ。
俺はゆっくりと拳を構える。
この強化された肉体ならば、何とかこいつを動かせるはず。
そう思い、体に力を入れ始めた頃ー
ーキィィィと、高音を出しながら手袋から黒い線が出てくる。
それは、すぅ、となんの障害もなく、俺の腹に入っていった。
すると、俺の腹の辺りからキュルキュルと、青白い、丸い光の跡がつく。
「っぉ!?」
な…なんだ?
…いや、今は気にしている場合ではない。目の前の事に集中しなければ。
「フゥッ、フゥッ」
「ゴェェ」
「いくぞッ」
まずはブンと腕を振るう、が、こいつは想像以上の速さで避ける。
次に打ち上げるようにアッパーをするが、また避けられる。
それに反撃するように、鶏は頭を振り下ろしてくる。
「ッ」
ギリギリでそれに反応し、なんとか躱す。
「ハッ」
地面に頭が刺さっている今がチャンスだと思い、蹴り上げようとするがー
ボコンと目玉が出て来て、避けられる。
体も顔のような役割をはたすのか。こいつ。
そして、また地面から頭を引き抜いた鶏は、超高速で再び頭を振り下ろす。
けど、もう流石に慣れてきて、それを見切る事が出来た。
見える!
「フッ!」
パシンと両手で鶏の頭をガッチリ押さえる。
そうすると首を伸ばすことは知っている。
ので、首を伸ばそうとした瞬間にー
「フゥッ!」
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よし!今だっ。銃をとるぞ!
今まであいつが邪魔で取れなかった銃を取る。
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あとはー
ヒュゥゥウー、とあいつが空から落ちてくる。
そして、地面に着地する瞬間にー
「アァアァッ!!」
銃を乱射する。
カチッカチッカチッカチッカチッカチッ
ドゥォン!ドゥォン!ドゥォン!ドゥォン!ドゥォン!ドゥォン!
辺り一帯の木々が無くなり、更地のようになってしまう。
ここまでの自然破壊もなかなかないだろう。
「ハァッハアッ」
どうなったのだろう?土煙が舞ってよく見えないがー
「お」
そこには、バラバラに飛び散った肉片だけがあった。
それを見た途端、腕輪から音声が流れる。
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