ミッション

こんぶ

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反逆の意志

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「おーい、冴島~」

「何かいてんの?」

「ァアッ!」

冴島のノートが、絡んでいた男二人にとられる。

「やめて」

「あぁ?口答えすんなよ~」

「んだよ」

カバッとノートの中を覗く。

「プッ、なんだよこの絵~ギャハハ」

「や…」

冴島は喋る言葉を失う。

「これ、破こーかなぁ」

「おっ、いいねぇ」

「ッ!ダ、ダメ。それだけはッやめてッ!」

冴島は涙を流す。

「グスッ、ウグッ、やめてよ~」

泣きながら、ノートを取り返そうとする冴島。

「あぁ?こんなもん描きやがって。」

「そうそう。キメーんだよ」

冴島 明

このクラスに於いて、俺ともう一人のいじめられっ子という感じ。

その為結構共通点が多く、仲は良い方だ。
だが仮に冴島が助けを求める目でこちらを見たとしても、俺は彼女のことを助けたりはしないだろう。

「冴島~この世にはなぁ~お前よりももっと辛い思いをしてる奴がいるんだよぉ」

「そーそー、そんくらいで泣くって、お前も弱え女だなぁ。よく言うじゃん。やられた分だけ強くなるってさぁー」

「…いいから…返してッ!」

必死に取り返そうとする冴島だが、それを高く上げる事によって取らせないようにする。要するに男と女の身長差で取らせていない。
中でも冴島はかなり背の低い方だから、ジャンプしても届かない位の所にあるのだ。

それを実行しているのは、花川 大和。もう一人の方が中山 茂。

この二人はあまり俺にちょっかいを出すことはしないが、たまにちょっかいをかけてくる。

因みに俺をイジメてる奴は…

男 佐賀 隆二
男 新見 遼太
女 加藤 愛理
女 須川 茜

の四人である。

さて、花川と中山の話に戻るとしよう。

ー世の中には、もっと辛い思いをしてる奴がいる…か。

それは確かにそうなんだが、しかしだからと言って、それで他人に辛い思いをさせて良い理由にはならないだろう。

それに、やられた分だけ強くなる?それは加害者の言い訳に過ぎない。
やられた分だけやられるだけだ。
ただそれだけ。
弱いも強いもない。

こんな間違った行為は、許されてはいけない。

が、しかし誰も助けようとはしない。

皆、傍観者。
皆、共犯者。

中には嘲笑い、写真を撮る者までいる。

そう。

助ける勇気を持った奴なんていない。

俺を含めて。

だから、誰も冴島を助けないだろう。












以前まではな。




「やめろよ、花川」


と、俺は席から立ち上がる。


そんな俺を「プッなにあいつ?正義の味方気取り?」「瞬殺されそー(笑)」と言う野次馬もいたが、無視をきめる。そう、今からするのはただの粋りだ。

「あーん?新井、てめぇ何様のつもりだ?」

「…あ、新井クンッ」

冴島が、やめて、という風に言ってくる。

だがやめない。

「痛い目見ないと分かんないかぁ?運動も大して出来ねーオタクがよぉ。俺らにいちゃもんつけてきてさぁ、ねぇ?あれ?もしかして勝てるとか思ってる??ねぇねぇ」

「うん」

シュッバッ!

その喋っている隙をみて、花川からノートを奪い返す。

「はい」

冴島に渡す。

「あ、ありがとう…」

「っ!新井てめぇっ」

花川が殴りかかりそうになってくるがー












「まぁ、待てや」

と、酷く落ち着いた声で誰かが言った。

いや、俺はこいつをよく知っている。

佐賀 隆二。

高校2年にあるまじき巨大な体格を持ち、凄んだ顔で俺を見てくる。
      
「それは、俺に譲ってくんね?」

と、まるで、脅すような声で花川にそう言う。
「はっ、はい」

と、花川もびびる。

が、しかし、今日の俺はビビりもしないし、土下座もしてやらない。粋がるようだが、力あるものは粋がっても罰が当たらない。やってることは同じかも知れないが。

それが、男子高校生というものだ。自分の力が想像以上にあると分かるとテンションが上がり、使い回そうとする。(俺の事)
まさしくそれだ。

──と、その時、佐賀が俺にもたれ掛かってきた。

「?」

「まず一発」

とー佐賀は、周りに見えないように、俺に腹パンをしてきた。

だけど佐賀。

多分苦しむのはー


「っ!?いってぇ!」


殴りつけた右手の方を押さえる佐賀。

「っ!てめぇ!何しやがった!鉄板でもいれてたのか?」

「??ただ立っていただけだが」

んな訳あるか。

全てはこの手袋のおかげだよ。馬鹿。

「んな訳あるかっ!」

「んな訳あるよ」

「こんのー」


と、佐賀が俺に殴りかかろうとした瞬間ー

ガララっ、と教室の扉が開く。

『なにをしているっ!そこ!』

「っ!?」


ぴしゃりと言い放つ。
それは、この学校の生徒会副会長。
長めの黒髪が特徴の2年女生徒。

えー、何だっけ。名前ど忘れした。
とりあえず、ザ 正義の味方の人だ。

「お前達…何をしている?」

因みにこの人は超強い。
多分この学校でもかなう人はいないだろう。
故に下手な口は、いくら佐賀といえ、出すことが出来ない。

「殴ろうとしていたのか?」

すこし驚いたように言う。

「っ!そっ、それは」

「嘘は自分の身を狭めるだけだ。正直に言え」

かっこいい~!俺もこういう風になりたかったなぁ。

「………っ。はい」

「そうか。次やったらどうなるか…わかっているな?」

「…はい」

「とりあえず今回は停学と言うことにしておく。しかし気をつけたまえよ、佐賀くん」

「っ、はい」

名前まで把握しているとは。流石だな。

そう言って彼女はこのクラスを出て行った。

「チッ」

舌打ちをされただけだった。


放課後



俺と冴島は帰り道が同じ(途中まで)なので、一緒に帰ることがしばしばある。

「あの、新井クン…」

「ん?」

「ありがとうねッ、昼間」

「あー」

全然怖くなかったしな。
てっきりトラウマかなんかでもっとビビるかと思っていたが、全く怖くなかったな。
それもこれも、あれを体験したからだろうが。

にしても冴島はなんていうか、守ってあげたくなるタイプの娘だよなぁ。

「私もああいう状況になったことあるけどさ…すごいよね、あそこで立ち上がるって。私、とてもじゃないけど、怖くてさ」

確かに、泣いている時の冴島の手は震えていた。
ん?それとは関係ないのか。

「すごい勇気の要ることだよ。それをやってのけるって、新井クンってすごいんだね」

「副会長には負けるけどな」

「フフッ」

と、軽く笑う冴島。

「あっ、そういえばさ、新井クン。ここら辺でどっか詳しい場所ない?」

「詳しい場所?うーん。」

そうだな。

「えっとー」

思いついた場所を言っていく。

「じゃあさ、来週の日曜、連れてってよ」

「へ?」

「その、なんとか公園に」

「え、あ。うん」

えー。

まさかのデートかよ。

これは童貞喪失あるなぁ。

「じゃ、駅前九時ね」

「あ、あぁ」

冴島と俺はそこで別れる。

冴島は電車で。
俺は徒歩で通学している。

「ッふぅ~」


にしても、浮かれている暇はない。

なにせ今日が、六日目だからな。

─家

分かった事が一つ増えた。手袋を右に着けると右半身。左に着けると左半身が強化されるらしい。
因みにあの黒い線が動力源のようだ。
青い光の円は出力が多ければ多いほど出るというのも分かった。
まぁ、一定の力に達しないと光は出ない様だが。

─夜。



「ッふー」

銃と手袋、パジャマではなく、私服を着ていく。もちろん腕輪も着けてある。

ぞくぞく、と鳥肌が体を奔る。
あぁ、多分あれが来るのだろう…

さぁ、来いよ──

─プツン


意識が飛んでいく。












「ッ…」

目が覚めると、酷い脱力感に襲われる。

「っはぁ」

すぐ治ったが。

「…!?」

目を開くと、そこにはざっと十人以上の人がいた。

こ…今回は人が多いなぁ~

それにここは…

「なんかどっかで見たことあるぞ」

これ、ロシアかどっかの宮殿じゃねーか。



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