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日本編
圧倒的な力
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ミッシェルは、躊躇いもなくチーターの間合いに踏み入った。
その行為はミッシェルにとって、一つの賭けであった。
チーターの速さは、いかにミッシェルといえども、対応しきることが困難を極める程であった。
故に、チーターの間合いに入れば、いつ狩られるか流石にミッシェルでも分からない。
が、幸いな事に、ミッシェルは賭けに勝つ。
「ッ」
横一文字にシュバッ、とミッシェルは黒刀でチーターを斬りつけた。
しかし、それはチーターに掠りはしたものの、全くダメージを与えるに至っていなかった。
「ふぅ」
ミッシェルは一度目を閉じる。
ただの油断、或いは命を捨てるという選択にさえとれるこの行動には、確かにそれ程大事な用はなかった。
しいて言うなら、全神経を、この瞬間に集中させるということだろうか。
「─」
チーターは消えいるような速さでミッシェルに噛みつこうとする─
─が、
カンッ、とその口の牙に刃を突きつけられるチーター。
それはつまり、チーターの突進よりも、ミッシェルの刀を振る速度の方が速いという事だった。
「フゥ」
ミッシェルは目を開ける。
しかしその眼は周りの薄暗い森など全く捉えず、ただチーターのみを捉えていた。
チーターは、途端、走り出した。
その急激な行動の変化に、微塵も驚きを見せないミッシェル。
むしろ、余裕さえあるように思える。
それ程までに、優雅な佇まい。
チーターもその事に大して驚かず、ミッシェルの周りを走り出す。
シュバッ、シュバッ、と、そこにいたかと思えば後にいるし、そこにいたかと思えば、自分の隣にいる。そんなような動き方。
決して捉えることの出来ない速度。
それが、数多の方向から襲いかかってくる。
ミッシェルは、そんなチーターを、なんの躊躇いもなく、大きな隙となるであろう一振りをした。
縦に、大きく。
そして、それは─
ザス、とチーターの腹を軽く斬った。
「ふぅ」
ミッシェルは軽く息を漏らす。
「ガルゥ!」
「…」
その時、初めてチーターには怒りという感情が生まれた。
自分が速度で負けるだと?
そんは事は、あり得ないだろう、と。
「ぐぐ、ガァァ」
そして、チーターは、四足歩行をやめ、二足歩行になった。
「グルゥ!」
そして、ミッシェルに四足歩行の時とは比べものにならない速度で飛びかかった。
「ふぅ」
ミッシェルはまた、軽く息を漏らしなが、刀を振るう。
それは、まるで時が止まったような錯覚に陥るほど、優雅に、素早く、風を切り裂いた。
もはや、何と言い表していいのか分からない。ただの化け物だ。
しかし、向こうもまた化け物。
それを、避ける。
ヒュンと、下に。
いや、それは或いは擬音をつけているだけであって、実際は音速を超えて、音なんか出ていないのかも知れなかった。
ミッシェルは刀を、乱舞の如く散らせた。
しかし、チーターはそれを肉食動物特有の獰猛な動きで躱して、守っていく。
牙で、爪で受け止める。
カンッカンッカンッ
カンッカンッカンッ
カンッカンッカンッ
硬質な音が響く。
刀と牙が交わる度に、火花が散る。
チーターは走りながら、そして、ミッシェルも走りながら戦う。
二人の移動速度は凄まじく、もし仮にここが闘技場なら、県一つ分はいるのではないかと思うほどのスピード。
硬質な音は、どんどん森の奥へ奥へと進んでいく。
そして、二人は行き止まりに出会い、立ち止まる。
とは言っても上半身は常に動き続けている訳だが。
カンッカンッカンッ
と、刃を交わしている、そんな時だった。
チーターに、チャンスが出来た。
それは、ミッシェルの刀の受け流しミスであった。
チーターは、ミッシェルの攻撃を直接受け続ける事は不可能だと判断し、ミッシェルの攻撃を受け流すか、又は躱していたのだが、その受け流しが上手くいかず、偶々チーターがよろける。
そのチャンスを、ミッシェルは決して見逃さなかった。
刀をぶんと縦に振る。
すると、そこにあったであろう物が千切れた。
「ビャァアアアアアア!!」
それは、チーターの尻尾であった。
「にゃぁアアアアアアアア!!」
チーターは痛みを訴えるように叫んだ。
ミッシェルは、その隙も見逃さず、チーターの喉元めがけて刀を突き刺した。
しかしそれは避けられてしまう。
軌道修正し、チーターの顔面にたたき込もうとするが、当たる気配が無かった。
シュバッ、シュバッと、空を斬ることが、少しずつだが、着実に増えていった。
カンッカンッシュバッカンッカンッシュバッシュバッカンッカンッカンッ
無駄な体力の消費が激しい筈なのに、全く汗の「あ」の字も感じさせない程ミッシェルは、余裕な態度であった。
チーターは再び苛つき、ミッシェルに飛びかかった。
「同じ手は通じないわよ」
と、ミッシェルは最後通告のように慈悲深く言った。
そして…
ポンとミッシェルはチーターの腕の上に乗る。
そして、ギュッとチーターに抱きついた。
猫が好きなのか?とそう思わせる絵面だが、しかしそうではない。
ミッシェルはチーターの細い首元に刀を当てて、ブスリと刺して、ぐいいと横に引いた。
その結果、チーターは倒れる。
しかし、両手足が襲ってくる。
ただ頭部を破壊しただけでは倒せない事は事前に分かっていた。
「それ、もう見たわ」
チーターの引っかきなどを全て空気のように躱して、そして、ドンッと、チーターに体当たりするように、ズプリと深く深く、チーターの心臓部に刀を差し込んだ。
さらにそれでは飽き足らず、ミッシェルは己の体をぐるりと回しながらチーターの胴体を切断した。
チーターの体はドサリと倒れ、ピクリとも動きはしなかった。
要するに、ミッシェルはチーターの討伐に成功したのだ。
「ふぅ」
ミッシェルはそう小さく零して、持っていた刀をすっと仕舞うように腰辺りに差し込んだ。
それを見ていたアンネは一言─
「す、すごい」
とだけしか、言うことが出来なかった。
その行為はミッシェルにとって、一つの賭けであった。
チーターの速さは、いかにミッシェルといえども、対応しきることが困難を極める程であった。
故に、チーターの間合いに入れば、いつ狩られるか流石にミッシェルでも分からない。
が、幸いな事に、ミッシェルは賭けに勝つ。
「ッ」
横一文字にシュバッ、とミッシェルは黒刀でチーターを斬りつけた。
しかし、それはチーターに掠りはしたものの、全くダメージを与えるに至っていなかった。
「ふぅ」
ミッシェルは一度目を閉じる。
ただの油断、或いは命を捨てるという選択にさえとれるこの行動には、確かにそれ程大事な用はなかった。
しいて言うなら、全神経を、この瞬間に集中させるということだろうか。
「─」
チーターは消えいるような速さでミッシェルに噛みつこうとする─
─が、
カンッ、とその口の牙に刃を突きつけられるチーター。
それはつまり、チーターの突進よりも、ミッシェルの刀を振る速度の方が速いという事だった。
「フゥ」
ミッシェルは目を開ける。
しかしその眼は周りの薄暗い森など全く捉えず、ただチーターのみを捉えていた。
チーターは、途端、走り出した。
その急激な行動の変化に、微塵も驚きを見せないミッシェル。
むしろ、余裕さえあるように思える。
それ程までに、優雅な佇まい。
チーターもその事に大して驚かず、ミッシェルの周りを走り出す。
シュバッ、シュバッ、と、そこにいたかと思えば後にいるし、そこにいたかと思えば、自分の隣にいる。そんなような動き方。
決して捉えることの出来ない速度。
それが、数多の方向から襲いかかってくる。
ミッシェルは、そんなチーターを、なんの躊躇いもなく、大きな隙となるであろう一振りをした。
縦に、大きく。
そして、それは─
ザス、とチーターの腹を軽く斬った。
「ふぅ」
ミッシェルは軽く息を漏らす。
「ガルゥ!」
「…」
その時、初めてチーターには怒りという感情が生まれた。
自分が速度で負けるだと?
そんは事は、あり得ないだろう、と。
「ぐぐ、ガァァ」
そして、チーターは、四足歩行をやめ、二足歩行になった。
「グルゥ!」
そして、ミッシェルに四足歩行の時とは比べものにならない速度で飛びかかった。
「ふぅ」
ミッシェルはまた、軽く息を漏らしなが、刀を振るう。
それは、まるで時が止まったような錯覚に陥るほど、優雅に、素早く、風を切り裂いた。
もはや、何と言い表していいのか分からない。ただの化け物だ。
しかし、向こうもまた化け物。
それを、避ける。
ヒュンと、下に。
いや、それは或いは擬音をつけているだけであって、実際は音速を超えて、音なんか出ていないのかも知れなかった。
ミッシェルは刀を、乱舞の如く散らせた。
しかし、チーターはそれを肉食動物特有の獰猛な動きで躱して、守っていく。
牙で、爪で受け止める。
カンッカンッカンッ
カンッカンッカンッ
カンッカンッカンッ
硬質な音が響く。
刀と牙が交わる度に、火花が散る。
チーターは走りながら、そして、ミッシェルも走りながら戦う。
二人の移動速度は凄まじく、もし仮にここが闘技場なら、県一つ分はいるのではないかと思うほどのスピード。
硬質な音は、どんどん森の奥へ奥へと進んでいく。
そして、二人は行き止まりに出会い、立ち止まる。
とは言っても上半身は常に動き続けている訳だが。
カンッカンッカンッ
と、刃を交わしている、そんな時だった。
チーターに、チャンスが出来た。
それは、ミッシェルの刀の受け流しミスであった。
チーターは、ミッシェルの攻撃を直接受け続ける事は不可能だと判断し、ミッシェルの攻撃を受け流すか、又は躱していたのだが、その受け流しが上手くいかず、偶々チーターがよろける。
そのチャンスを、ミッシェルは決して見逃さなかった。
刀をぶんと縦に振る。
すると、そこにあったであろう物が千切れた。
「ビャァアアアアアア!!」
それは、チーターの尻尾であった。
「にゃぁアアアアアアアア!!」
チーターは痛みを訴えるように叫んだ。
ミッシェルは、その隙も見逃さず、チーターの喉元めがけて刀を突き刺した。
しかしそれは避けられてしまう。
軌道修正し、チーターの顔面にたたき込もうとするが、当たる気配が無かった。
シュバッ、シュバッと、空を斬ることが、少しずつだが、着実に増えていった。
カンッカンッシュバッカンッカンッシュバッシュバッカンッカンッカンッ
無駄な体力の消費が激しい筈なのに、全く汗の「あ」の字も感じさせない程ミッシェルは、余裕な態度であった。
チーターは再び苛つき、ミッシェルに飛びかかった。
「同じ手は通じないわよ」
と、ミッシェルは最後通告のように慈悲深く言った。
そして…
ポンとミッシェルはチーターの腕の上に乗る。
そして、ギュッとチーターに抱きついた。
猫が好きなのか?とそう思わせる絵面だが、しかしそうではない。
ミッシェルはチーターの細い首元に刀を当てて、ブスリと刺して、ぐいいと横に引いた。
その結果、チーターは倒れる。
しかし、両手足が襲ってくる。
ただ頭部を破壊しただけでは倒せない事は事前に分かっていた。
「それ、もう見たわ」
チーターの引っかきなどを全て空気のように躱して、そして、ドンッと、チーターに体当たりするように、ズプリと深く深く、チーターの心臓部に刀を差し込んだ。
さらにそれでは飽き足らず、ミッシェルは己の体をぐるりと回しながらチーターの胴体を切断した。
チーターの体はドサリと倒れ、ピクリとも動きはしなかった。
要するに、ミッシェルはチーターの討伐に成功したのだ。
「ふぅ」
ミッシェルはそう小さく零して、持っていた刀をすっと仕舞うように腰辺りに差し込んだ。
それを見ていたアンネは一言─
「す、すごい」
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