約束ノート

村上未来

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新たな家族

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「仕事があるんだ…また、くるからね」

 義樹もまた、寂しそうな顔をした。
 義樹はずっと健太の事を気に掛けていた。だから、返事のこない手紙を出し続けていたのだ。昨夜、健太が入院している事を知った。心配した義樹は、仕事の予定はあったが、今日来たのだ。

「…うん、またね」

 健太は本心でまた会いたいと思った。
 病室の出口まで義樹を見送った健太は、ベッドに腰掛け、貰ったばかりの絵本を読み出した。

「むかしあるところに、さばくにかこまれたむらがありました…」

 それから一ヶ月が経った。
 病院を退院した健太は、同じ県内にある青空園という施設で暮らす事になった。燃えてなくなってしまった太陽園よりも規模はでかい。児童の数も十二人と倍以上の人数で暮らしている。下は三歳から、上は十七歳までと幅広い年齢層だ。性格に難のある者は誰一人おらず、皆無邪気な笑顔で楽しそうに暮らしている。
 健太が園に打ち解けるまで、そう時間は掛からなかった。
 事件の記憶が戻らない健太は、定期的に病院に通院している。病院には金沢由香里という園の先生が、いつも付き添っていた。健太は由香里を独占できるこの日を心待ちにしている。
 由香里の運転する車の助手席に座り、いつも楽しげにお喋りしていた。至福の一時。その言葉がぴったり当てはまる程、健太は由香里との時間を笑顔で過ごしている。
 健太は、園で何不自由なく楽しく暮らしている。そんな健太に運命の出会いが待ち構えていた。それは突然だった。

「…君、お名前なんていうの?」

 見知らぬ二人が健太に話し掛けてきた。
 声を掛けたのは男の方だ。その横には、悲しそうな顔をした女が立っている。どちらも三十を少し過ぎた歳に見える。

「…篠原健太だよ」

 健太は初めて見る顔に、戸惑いながら答えた。

「け、健太君?…」

 男は驚いた顔を見せた。その横で、女が突然泣き出した。
 女は健太の前に跪き、わなわなと震える両手を突き出した。

「け、健太!」

 女は声を上げ、健太を力強く抱き締めた。
 突然の事に、健太は戸惑っている。
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