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誕生
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雅史が特に好きだったのは、猫を手懐け、安心仕切っているところを、腹に鋏を突き立てる時だった。信じられないといった表情を浮かべ、刺される猫に、性的感情に似た快感を覚えたのだ。
この頃だろうか、自分の肉体に疑問を持ち始めたのは。
八歳ともなれば、男と女の体の違いは、多少は分かるだろう。それは雅史も同じだ。自分の体に付いていてはいけない物が付いている。男のシンボル。それを雅史は不思議に思っていた。
その不思議が拭い切れない。それが嫌悪感に変わった。どうすれば違和感のない体になれるのか。雅史は答えを見付けた。
ある日、静香は仕事で出掛けていた。部屋で一人、雅史は愛用の鋏を手にしている。そして、普段は猫の腹に突き刺している鋏を開き、自身の可愛らしい男根を断ち切った。
部屋の中に叫び声が響いた。その声は、外にも漏れ聞こえている。何度も叫び声は上がっていた。そして、叫び声が消えた。
気を失って倒れている雅史を、最初に発見したのは、アパートの隣人だった。
救急車で病院に運ばれた雅史は、一命を取り留めた。
手術を終えた次の日、瑠奈は意識を取り戻した。目を覚ました雅史の手を、静香が震える手で握り締めていた。
「…お母さん?」
「雅史…ごめんね…女の子に産んであげられなくて…」
静香はそれ以上、言葉を重ねなかった。雅史が何故、あんな行為をしたのか、理由は分かっていたのだ。
手術は成功したが、雅史の体の一部は二度と戻る事はなかった。雅史のその一部は、手術で接合出来なかったようだ。雅史はそれを何度も刻んでいた。叫びながら、何度も切り刻んでいたのだ。それ程嫌だったのだろう。
病院を退院した雅史は、スカートを履くようになった。静香がせめてもと、履かせてくれたのだ。
雅史は同級生の男子から、虐められるようになった。男なのに女の恰好をしている雅史は、かっこうの餌食だったようだ。
雅史は虐めの事を静香に話さなかった。心配掛けたくなかったのだろう。静香の前では、明るく振る舞っていた。
この頃だろうか、自分の肉体に疑問を持ち始めたのは。
八歳ともなれば、男と女の体の違いは、多少は分かるだろう。それは雅史も同じだ。自分の体に付いていてはいけない物が付いている。男のシンボル。それを雅史は不思議に思っていた。
その不思議が拭い切れない。それが嫌悪感に変わった。どうすれば違和感のない体になれるのか。雅史は答えを見付けた。
ある日、静香は仕事で出掛けていた。部屋で一人、雅史は愛用の鋏を手にしている。そして、普段は猫の腹に突き刺している鋏を開き、自身の可愛らしい男根を断ち切った。
部屋の中に叫び声が響いた。その声は、外にも漏れ聞こえている。何度も叫び声は上がっていた。そして、叫び声が消えた。
気を失って倒れている雅史を、最初に発見したのは、アパートの隣人だった。
救急車で病院に運ばれた雅史は、一命を取り留めた。
手術を終えた次の日、瑠奈は意識を取り戻した。目を覚ました雅史の手を、静香が震える手で握り締めていた。
「…お母さん?」
「雅史…ごめんね…女の子に産んであげられなくて…」
静香はそれ以上、言葉を重ねなかった。雅史が何故、あんな行為をしたのか、理由は分かっていたのだ。
手術は成功したが、雅史の体の一部は二度と戻る事はなかった。雅史のその一部は、手術で接合出来なかったようだ。雅史はそれを何度も刻んでいた。叫びながら、何度も切り刻んでいたのだ。それ程嫌だったのだろう。
病院を退院した雅史は、スカートを履くようになった。静香がせめてもと、履かせてくれたのだ。
雅史は同級生の男子から、虐められるようになった。男なのに女の恰好をしている雅史は、かっこうの餌食だったようだ。
雅史は虐めの事を静香に話さなかった。心配掛けたくなかったのだろう。静香の前では、明るく振る舞っていた。
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