25 / 29
第12章 俺の墓の上で踊ってくれる? ①
しおりを挟む
月明かりがコテージの木造の窓枠を淡く照らす夜。やっと想いが通じた俺たちはここに戻り、砂まみれの身体をシャワーで流してから眠りについた。周囲に気づかれぬよう、こっそり手を繋いで。
明日は撤収予定だが、インサートカット撮影の名目でコテージ予約は残してある。そして、カナと二人きりで過ごすために。
翌朝、まぶたを開けるとリョウや後輩スタッフたちが荷造りに追われていた。リョウが俺の肩を揺らす。
「そろそろ起きろよ」
目をこすりながら尋ねる。
「みんなもう帰るの?」
「編集作業に入るからな。お前はもう少し撮影するんだろ?」
「うん、少しね。足りないと困るから、水中からのカットもちょっと撮っておくよ」
「おう、任せた」リョウは耳元に身を寄せ、小声で囁く。
「カナと上手くいったのか?帰ったら、たっぷり聞かせろよ。楽しみにしてるからな」と下品な笑みを浮かべながら去っていく。
「嫌だ、秘密だ。また明日な!」
俺とカナだけが残り、みんなはコテージを後にする。窓の外を見渡しながらカナが呟く。
「みんな帰ったね」
二人の間に微妙な空気が漂う。昨日のことを思い出し、どう振る舞えばいいか戸惑っていた。
「コーヒー、飲む?」カナが唐突に提案した。
「うん、いいね」
彼はキッチンスペースへ移動し、湯を沸かし始めた。俺は椅子に腰掛け、その背中を眺める。見とれているうちに、二人が想いを確かめ合ったことが徐々に実感となって広がる。俺たちは付き合っているのだ。
まだ現実感が薄い中、日常が静かに始まっていく。
「コーヒー入ったよ。パン食べる?」
「うん、食べる」
本当にカップルみたいだと感じながら、テラスで朝食を共にした。食後も他愛もない会話で穏やかで心地よい時間が流れていく。
ゆっくりした後、水着とラッシュガードに着替えて海へ向かった。アクションカメラで水中からの撮影を試みる。水底から見上げる太陽の光が幻想的で、映画に使いたくなる輝き。数時間かけて海や砂浜、空の映像も収め、撮影は終了。カナも一眼レフでの撮影を楽しんでいた。
ランチは軽く済ませ、照りつける日差しを避けて午後は部屋で編集作業に取り組む。
夕暮れ時、海が茜色に染まる頃、二人で海岸を散歩する。並んで座り、水平線に沈む夕日を眺めていた。言葉を交わさず、ただ無言で過ごす時間。不意にカナが顔を近づけ、唇を重ねてきた。この感覚がまだ新鮮で、実感が湧かない。本当に二人は恋人同士になったのだ。
「マリ、飯、どうする?」カナの声で我に返った。
「そうだな、コンビニで適当に買ってくるか」
「いや、作るよ。材料、一応買ってある」
カナが料理するなんて知らなかった。編集している間に材料も買ってきてくれたらしい。ありがたく作ってもらうことにして、部屋のキッチンへ向かう。
「手伝おうか?」
「いいよ。見ているだけでいい」
キッチンカウンターに腰掛け、カナの料理する姿を眺めた。意外な一面だ。包丁を握る手つきが洗練されている。この手が昨夜俺の肌に触れたのだと思うと、全身に電流が走る。
「おい、じっと見るなよ」カナが照れた様子で言った。
「悪い。でも、カナの知らない一面を見ている気がして」
「何言ってんだよ。ただの料理だろ」そう言いつつも、耳が赤くなっているのが見えた。
「そういえば、お前が撮った俺のほぼ裸の写真、どうなった?」ふと思い出して尋ねる。カナは玉ねぎを切る手を止めた。
「ちゃんと現像してある。マリに見せようと思ってた」
「え、マジで?見たい」
「今じゃないよ。飯食ってからな」
料理が完成するまでの間、俺たちは映画の話をした。普段通りの会話だが、空気感が違う。さっきのキスもあり、二人の間には甘い空気が流れているようだ。
「できた。パスタだけど」カナが皿を置いた。シンプルなトマトパスタだが、香りだけで食欲をそそられる。
「いただきます」
「いただきます」
最初の一口で、声が漏れる。
「うまっ!カナ、これ本気で美味いぞ」
「まあな。そんなに難しくないけど」
「俺より料理上手いじゃん」
「当たり前だろ。マリは、インスタントばっかり食ってるもんな」
笑い合う瞬間。この自然な距離感が心地よい。
食事を終え、二人で食器の片づけを終えた後、カナがワインを取り出した時は少し驚く。
「おい、それどこで?」
「買っておいた。乾杯しよう、撮影成功に」
「お前、意外とロマンチストだよな」
「うるさいな」照れる彼の表情に、心が穏やかになる。こんな感情、初めての経験だ。
グラスに注がれた深紅の液体で俺たちは乾杯した。
「撮影成功」
「ああ、最高の夏だったな」
ワインを飲みながら、ソファに腰掛ける。窓の外は完全に闇に包まれ、月明かりだけが海面を照らしていた。波の音が静かに響いている。
「なあ、マリ」カナが不意に切り出した。
「何?」
「あの日、オゾンの『サマードレス』観てた時、どう思ってた?」
突然の質問に戸惑う。
「どうって、カナのこと?映画出て欲しいなーって思ってた。ゲイとバイのカップルの話だから、もしかして焦った?刺激的すぎるよな?キッチンであんなこと…。それに、カナがゲイって知らなかったから...」
「フフッ、うん。あの時、お前のリアクション見て思ったんだ」
「何を?」
「お前なら、俺の気持ちを理解してくれるかもって」カナの表情が真剣さを帯びる。
「マリ、前に高校の時ゲイバレした話したの覚えてる?」
「うん。覚えてるよ。大変だったな」
カナはワインをグラスに注ぎながら静かに語り始めた。
「高校二年の夏。写真を撮り始めた頃。クラスの男子が...気になってた」
「気になる...男子?」
「うん。友達としてじゃなく……もっと別の意味で」
彼の声が次第に小さくなる。
「それで?」
「その子の写真をこっそり撮っていたんだ。部活中とか、下校途中とか。芸術作品のつもりだった。でも...」
カナの手の動きが止まる。
「ある日、クラスメイトに写真フォルダを見られてしまって、変な噂が広がった。『奏多はストーカーだ』って」
ワイングラスを手に持ったまま、カナは苦しそうな表情のまま続ける。
「最悪だった。友達も減ったし、あいつも俺を避けるようになって。結局、写真も全部消してしまった」
言葉を失う。カナの過去は想像以上に辛かったのだろう。
「それからは、友達と遊ぶことも無くなって、一人で映画ばかり見ていたよ」
カナが少し視線を逸らして語る。
「どんな映画?」
「マリが好きなフランソワ・オゾンの作品とか。『Summer of 85』が特に好きだった」
「そうなんだ。趣味合うな。どこが良いと思った?」
「海辺の町で出会った二人の男の子の夏の恋と……死」
カナの声がわずかに沈んだ。
「墓の上で踊るシーンがあるだろ?主人公、頭おかしいだろって思うけど...何か惹かれた」
「そうだな。墓の上で踊るよな」
「亡くなった恋人との約束を果たすために」
俺は眉をひそめた。
「頭おかしくないよ。むしろロマンチックじゃないか」
カナは微笑み、悪戯な表情を浮かべる。
「じゃあさ、俺が死んだらサマードレス着て俺の墓の上で踊ってくれないか?」
「バカか、お前」思わず笑ってしまう。
「まあ、生きているうちに撮れればいいけどな...記録として」
カナが真摯な瞳を俺に向ける。
「だから...」
「お前の写真なら、良いのが撮れると思ったんだ」
その言葉に心の奥底が疼いた。
「ヌードモデルの条件も...本当は意地悪だけで言ったわけじゃない。マリの姿を撮ってみたくなった。封印していた欲望を解放して、永遠に残したいと思えたんだ」
そう言って、カナは目を逸らした。
「そうなんだ...お前も色々考えてたんだな。俺もあの日お前の欲望を受け取った気がする」
笑みがこぼれた。あの日のカナは、普段では考えられない強さを見せていたから。
「そういえば、初めて会った時、覚えてる?」唐突な質問だった。
「もちろん。真剣な顔で写真の話してたな。去年の春の、入寮パーティーの時だよな」
「うん。マリが真面目に話聞いてくれて嬉しかった」
「お前の目が……凄い真剣で自分の事話してくれて、俺も嬉しかった。俺も映画が好きだから近いものを感じた。その時からカナを撮りたいって思ってたのかも」
「そうだったのか。でも、あの時から、マリに興味があったよ俺も」
カナの告白を受け止めながら、俺も彼の手を取った。
「斜め前の部屋だと気づいた時嬉しかったし、見放題で」
俺たちは笑い合う。
「途中から気づいてだけど、気づかないフリしてあげたからね...」
「今はこんなに近くで見つめられるようになって嬉しいんだ」
「俺も見つめたいよ、もっと。ねぇ……本当に、俺の墓の上で踊ってくれない?本気なんだ」
「あぁ。わかったよ。もし、俺の方が早く死んだら、俺の墓の上で踊れよ」
俺たちは熱い視線を交わした。『Summer of 85』に影響されすぎかもしれないが、この映画の運命的な夏の恋の結末は悲しい……。俺たちとは違う。1つの愛の形としてロマンチックで、憧れてしまうのも無理はない。
その時、カナが顔を近づけ、唇にキスをしてきた。柔らかな感触とワインの甘く渋い風味が交わる。
明日は撤収予定だが、インサートカット撮影の名目でコテージ予約は残してある。そして、カナと二人きりで過ごすために。
翌朝、まぶたを開けるとリョウや後輩スタッフたちが荷造りに追われていた。リョウが俺の肩を揺らす。
「そろそろ起きろよ」
目をこすりながら尋ねる。
「みんなもう帰るの?」
「編集作業に入るからな。お前はもう少し撮影するんだろ?」
「うん、少しね。足りないと困るから、水中からのカットもちょっと撮っておくよ」
「おう、任せた」リョウは耳元に身を寄せ、小声で囁く。
「カナと上手くいったのか?帰ったら、たっぷり聞かせろよ。楽しみにしてるからな」と下品な笑みを浮かべながら去っていく。
「嫌だ、秘密だ。また明日な!」
俺とカナだけが残り、みんなはコテージを後にする。窓の外を見渡しながらカナが呟く。
「みんな帰ったね」
二人の間に微妙な空気が漂う。昨日のことを思い出し、どう振る舞えばいいか戸惑っていた。
「コーヒー、飲む?」カナが唐突に提案した。
「うん、いいね」
彼はキッチンスペースへ移動し、湯を沸かし始めた。俺は椅子に腰掛け、その背中を眺める。見とれているうちに、二人が想いを確かめ合ったことが徐々に実感となって広がる。俺たちは付き合っているのだ。
まだ現実感が薄い中、日常が静かに始まっていく。
「コーヒー入ったよ。パン食べる?」
「うん、食べる」
本当にカップルみたいだと感じながら、テラスで朝食を共にした。食後も他愛もない会話で穏やかで心地よい時間が流れていく。
ゆっくりした後、水着とラッシュガードに着替えて海へ向かった。アクションカメラで水中からの撮影を試みる。水底から見上げる太陽の光が幻想的で、映画に使いたくなる輝き。数時間かけて海や砂浜、空の映像も収め、撮影は終了。カナも一眼レフでの撮影を楽しんでいた。
ランチは軽く済ませ、照りつける日差しを避けて午後は部屋で編集作業に取り組む。
夕暮れ時、海が茜色に染まる頃、二人で海岸を散歩する。並んで座り、水平線に沈む夕日を眺めていた。言葉を交わさず、ただ無言で過ごす時間。不意にカナが顔を近づけ、唇を重ねてきた。この感覚がまだ新鮮で、実感が湧かない。本当に二人は恋人同士になったのだ。
「マリ、飯、どうする?」カナの声で我に返った。
「そうだな、コンビニで適当に買ってくるか」
「いや、作るよ。材料、一応買ってある」
カナが料理するなんて知らなかった。編集している間に材料も買ってきてくれたらしい。ありがたく作ってもらうことにして、部屋のキッチンへ向かう。
「手伝おうか?」
「いいよ。見ているだけでいい」
キッチンカウンターに腰掛け、カナの料理する姿を眺めた。意外な一面だ。包丁を握る手つきが洗練されている。この手が昨夜俺の肌に触れたのだと思うと、全身に電流が走る。
「おい、じっと見るなよ」カナが照れた様子で言った。
「悪い。でも、カナの知らない一面を見ている気がして」
「何言ってんだよ。ただの料理だろ」そう言いつつも、耳が赤くなっているのが見えた。
「そういえば、お前が撮った俺のほぼ裸の写真、どうなった?」ふと思い出して尋ねる。カナは玉ねぎを切る手を止めた。
「ちゃんと現像してある。マリに見せようと思ってた」
「え、マジで?見たい」
「今じゃないよ。飯食ってからな」
料理が完成するまでの間、俺たちは映画の話をした。普段通りの会話だが、空気感が違う。さっきのキスもあり、二人の間には甘い空気が流れているようだ。
「できた。パスタだけど」カナが皿を置いた。シンプルなトマトパスタだが、香りだけで食欲をそそられる。
「いただきます」
「いただきます」
最初の一口で、声が漏れる。
「うまっ!カナ、これ本気で美味いぞ」
「まあな。そんなに難しくないけど」
「俺より料理上手いじゃん」
「当たり前だろ。マリは、インスタントばっかり食ってるもんな」
笑い合う瞬間。この自然な距離感が心地よい。
食事を終え、二人で食器の片づけを終えた後、カナがワインを取り出した時は少し驚く。
「おい、それどこで?」
「買っておいた。乾杯しよう、撮影成功に」
「お前、意外とロマンチストだよな」
「うるさいな」照れる彼の表情に、心が穏やかになる。こんな感情、初めての経験だ。
グラスに注がれた深紅の液体で俺たちは乾杯した。
「撮影成功」
「ああ、最高の夏だったな」
ワインを飲みながら、ソファに腰掛ける。窓の外は完全に闇に包まれ、月明かりだけが海面を照らしていた。波の音が静かに響いている。
「なあ、マリ」カナが不意に切り出した。
「何?」
「あの日、オゾンの『サマードレス』観てた時、どう思ってた?」
突然の質問に戸惑う。
「どうって、カナのこと?映画出て欲しいなーって思ってた。ゲイとバイのカップルの話だから、もしかして焦った?刺激的すぎるよな?キッチンであんなこと…。それに、カナがゲイって知らなかったから...」
「フフッ、うん。あの時、お前のリアクション見て思ったんだ」
「何を?」
「お前なら、俺の気持ちを理解してくれるかもって」カナの表情が真剣さを帯びる。
「マリ、前に高校の時ゲイバレした話したの覚えてる?」
「うん。覚えてるよ。大変だったな」
カナはワインをグラスに注ぎながら静かに語り始めた。
「高校二年の夏。写真を撮り始めた頃。クラスの男子が...気になってた」
「気になる...男子?」
「うん。友達としてじゃなく……もっと別の意味で」
彼の声が次第に小さくなる。
「それで?」
「その子の写真をこっそり撮っていたんだ。部活中とか、下校途中とか。芸術作品のつもりだった。でも...」
カナの手の動きが止まる。
「ある日、クラスメイトに写真フォルダを見られてしまって、変な噂が広がった。『奏多はストーカーだ』って」
ワイングラスを手に持ったまま、カナは苦しそうな表情のまま続ける。
「最悪だった。友達も減ったし、あいつも俺を避けるようになって。結局、写真も全部消してしまった」
言葉を失う。カナの過去は想像以上に辛かったのだろう。
「それからは、友達と遊ぶことも無くなって、一人で映画ばかり見ていたよ」
カナが少し視線を逸らして語る。
「どんな映画?」
「マリが好きなフランソワ・オゾンの作品とか。『Summer of 85』が特に好きだった」
「そうなんだ。趣味合うな。どこが良いと思った?」
「海辺の町で出会った二人の男の子の夏の恋と……死」
カナの声がわずかに沈んだ。
「墓の上で踊るシーンがあるだろ?主人公、頭おかしいだろって思うけど...何か惹かれた」
「そうだな。墓の上で踊るよな」
「亡くなった恋人との約束を果たすために」
俺は眉をひそめた。
「頭おかしくないよ。むしろロマンチックじゃないか」
カナは微笑み、悪戯な表情を浮かべる。
「じゃあさ、俺が死んだらサマードレス着て俺の墓の上で踊ってくれないか?」
「バカか、お前」思わず笑ってしまう。
「まあ、生きているうちに撮れればいいけどな...記録として」
カナが真摯な瞳を俺に向ける。
「だから...」
「お前の写真なら、良いのが撮れると思ったんだ」
その言葉に心の奥底が疼いた。
「ヌードモデルの条件も...本当は意地悪だけで言ったわけじゃない。マリの姿を撮ってみたくなった。封印していた欲望を解放して、永遠に残したいと思えたんだ」
そう言って、カナは目を逸らした。
「そうなんだ...お前も色々考えてたんだな。俺もあの日お前の欲望を受け取った気がする」
笑みがこぼれた。あの日のカナは、普段では考えられない強さを見せていたから。
「そういえば、初めて会った時、覚えてる?」唐突な質問だった。
「もちろん。真剣な顔で写真の話してたな。去年の春の、入寮パーティーの時だよな」
「うん。マリが真面目に話聞いてくれて嬉しかった」
「お前の目が……凄い真剣で自分の事話してくれて、俺も嬉しかった。俺も映画が好きだから近いものを感じた。その時からカナを撮りたいって思ってたのかも」
「そうだったのか。でも、あの時から、マリに興味があったよ俺も」
カナの告白を受け止めながら、俺も彼の手を取った。
「斜め前の部屋だと気づいた時嬉しかったし、見放題で」
俺たちは笑い合う。
「途中から気づいてだけど、気づかないフリしてあげたからね...」
「今はこんなに近くで見つめられるようになって嬉しいんだ」
「俺も見つめたいよ、もっと。ねぇ……本当に、俺の墓の上で踊ってくれない?本気なんだ」
「あぁ。わかったよ。もし、俺の方が早く死んだら、俺の墓の上で踊れよ」
俺たちは熱い視線を交わした。『Summer of 85』に影響されすぎかもしれないが、この映画の運命的な夏の恋の結末は悲しい……。俺たちとは違う。1つの愛の形としてロマンチックで、憧れてしまうのも無理はない。
その時、カナが顔を近づけ、唇にキスをしてきた。柔らかな感触とワインの甘く渋い風味が交わる。
3
あなたにおすすめの小説
雨とマルコポーロ――恋が香る夜に
tommynya
BL
就活十連敗、心が折れかけていた雨の夜。駅前でうなだれていた凪に、傘を差し出したのは、まるでフランス映画から抜け出したような、美しい青年だった。「濡れてる人を見ると、紅茶を飲ませたくなるんだ」── 連れていかれたのは、裏通りにある静かなティーサロン・Salon de Thé ―「Minuit」真夜中の紅茶店。
「この紅茶は、夜飲めば少しだけ泣ける味なんだ」
花と果実とバニラが混ざる“マルコポーロ”の香りが、疲れた心にやさしく触れていく。
名前も知らないまま始まった、不思議な会話と心のぬくもり。
だが後日、彼が人気モデル“NOA”であることを知った凪は──。
雨と、夜気、香りと詩。そして紅茶が繋ぐ、ふたりの距離はじれったくも確かに近づいていく。
この恋はまだ名前を持たない。でも、確かに始まりかけている──。
※10章で1幕終了という感じです!
11章からは攻め視点と、その後の甘すぎる日常です。
16章がグランドフィナーレという感じです☺︎
星川 クレール 乃亜(攻め){ホシカワ クレール ノア}
• 大学2年 20歳、仏文学専攻、身長182cm
• 紅茶専門サロンで働くモデルの青年
• 美しい容姿と不思議な言葉遣い(詩的)
• 1/4 フランスの血を引く
• 香りと記憶に関する独自の感性を持つ
• 一見、人に対して興味が薄いようなところがあるが、
凪には強めの、執着や保護欲を隠し持つ
✖️
長谷川 凪(受け){ハセガワ ナギ}
• 大学4年 22歳 心理学専攻、身長175cm
• 就活に疲れている
• 華奢に見えるが、趣味は筋トレ
• 腹筋は仕上がっている
• 嫌な事があると雨に濡れがち
• 真面目で素朴、努力家だが、自己肯定感が低め
• 落ち込んでいたとき、乃亜の紅茶とことばに癒される
• “名前も知らない相手”に心を救われ、また会いたいと思ってしまう
✴︎ 本文の詩は、ポール・ヴェルレーヌとジャック・プレヴェールの詩にインスパイアされた、完全オリジナルの創作です。引用は一切ないですが、彼らのロマンチックな雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです。
ジャンル:青春BL・日常系
シリーズ名:「Minuit」詩的パラレル
雨の日は君と踊りたい 〜魂の半分を探して…切ない練習生BL〜
tommynya
BL
ワルシャワで「次世代のショパン」と呼ばれたレインは13歳でK-POPに出会い、16歳で来日。
芸術高校ピアノ科に通いながら、アイドル練習生生活をスタート。
高校1年の時、同じ事務所の舞踊科の先輩・レオと出会う。
彼の踊る姿は妖精のようで、幽玄の美の化身。
二人は似ていた。服装も雰囲気も何もかも――お互いに不思議な繋がりを感じる。
それは、まるで“もうひとりの自分”のようだった。
「人の魂は、時に半分に分かれて生まれてくる」
という祖母の言葉を思い出しながら、レオはレインを“魂の半分”だと感じはじめる。
レインもレオに特別な感情をいだき、その想いに戸惑う。
アイドル志望者として抱いてはいけない感情……。
ある日、事務所から新ユニットのデビューが決定。
メンバー選考は事務所内オーディション。
2人は練習に明け暮れるが、結果は意外な結末に――。
水のように透き通る音色と、風のように自由な舞い。
才能と感情が共鳴する、切なく眩しいローファンタジー青春BL。
魂の絆は、彼らをどこへ導くのか。
〈攻め〉
風間玲央(カザマレオ)20歳 大学1年生 180cm
実力とルックスの全てを持つイケメン。
高校時代からファンクラブがある。
天性のダンサーで昔からもう1人の自分「魂の半分」を探している。
特技「風の囁き」
×
〈受け〉
水沢玲音(ミズサワレイン)18歳 高校3年 175cm
絶対音感を持つ元天才ピアニスト。繊細で自信がない。
雨の音が好き。育ちが良く可愛い。レオに憧れている。
特技「水の記憶」
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
兄ちゃんの代わりでもいいから
甘野えいりん
BL
将来の夢もなく、ただ毎日を過ごしていた高校二年の青垣直汰。
大学三年の教育実習生として来た尾原悠は、綺麗で、真面目で、少し不器用な──ほっておけない人だった。
そんな悠が気になって仕方なく、気づけば恋にのめり込んでいく直汰。
けれど悠には、直汰の兄に忘れられない想いがあって……。
それでも直汰は、その兄の代わりでもいいと気持ちをぶつける。
ふたりの距離が少しずつ縮まるにつれ、悠への想いはあふれて止まらない。
悠の想いはまだ兄に向いたままなのか──。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる