サマードレスに憧れて 〜君の映画が撮りたくて〜

tommynya

文字の大きさ
26 / 29

第12章 俺の墓の上で踊ってくれる? ②

しおりを挟む
「マリ」
「ん?」
「あの写真、見る?」
 カナがカバンから封筒を取り出した。俺のほぼ裸の写真だ。なぜか緊張が走る。

「見せてくれ」
 封筒を開けると、モノクロの写真が数枚入っていた。脱衣する様子を捉えたものだ。想像よりずっと芸術的で、官能性よりも美しさが際立つ写真だった。

「すげえな、カナ。こんな風に撮れるのか」
「マリ、なかなか様になってるだろ?筋肉が綺麗だよね」

「やっぱり、筋肉目当て?」
「まぁ、写真のモデルだから綺麗な身体の方がいい...」
 率直なカナに笑いがこぼれる。

 最後の一枚は、上半身裸で窓際に立つ後ろ姿。顔は見えず、光と影のコントラストが美しく映えていた。

「これ、一番好きだ」
 カナが指さした写真は、服を脱ぎ始める瞬間を捉えたもの。表情に緊張と決意が混在している。

「なんでこれが?」
「お前らしいから。迷いながらも、前に進もうとしている」
 カナの言葉に胸が震える。彼は俺のことをよく見ていた。

「カナ、俺もお前の写真撮りたい」
「え?」

「ドレス姿じゃなくて、素のお前を」
 カナは少し考えた後、頷いた。
「いいよ。でも今じゃない。今は……」

 言葉を切ったカナが、身を寄せてきた。
「今は?」
「もう話さないで」

 再び唇が重なる。今度は先ほどより長く、深いキス。ワインの余韻が舌先に残る。
 キスを終えると、カナの頬が紅潮していた。俺の体も内側から火照っていく。

「カナ」
「なんだよ」
「Do you love me?」

 映画のセリフをそのまま引用してみる。カナは笑った。

「さあ、どうかな?」

 そう言いながら、再び唇を合わせてくる。答えはすでに知っていた。
 彼の唇が俺の首筋を滑るように降りていく。吐息が肌を撫で、それだけで全身が敏感になる。

「カナ...」
 彼の手が服の裾から入り込み、背中に触れる。熱を帯びた指先が肌を這うたび、震えが走る。

「マリ、いい?」

 答える代わりに、俺はカナのシャツのボタンに手をかけた。1つ、また1つと外していく。開いた胸元に触れると、カナの鼓動の激しさが伝わってくる。

 お互いの服を脱がせながら、ベッドへと移動した。肌と肌が、触れ合う感覚が、これまで味わったことのない高揚感を生み出す。初めてのことへの不安と、カナへの想いが胸の中で交錯する。

 カナが俺の上に覆いかぶさり、俺の視線をとらえる。暗い部屋の中で、彼の目だけが異様に輝いていた。月光に照らされた二人の輪郭が、壁に揺れる影を作り出す。

「マリ」
 カナの声が震えていた。
「俺、お前のこと大切にしたい」
 その言葉に心が満たされる。
「俺もだよ」

 キスをしながら、彼の手が俺の身体を探る。まるで大切な芸術作品を扱うように、ゆっくりと、時に大胆に。

「カナ...怖くないのか?」
 今度は俺が尋ねる。
「怖いけど、お前となら...」
「うん、俺も」

 言葉より行動で示すかのように、二人の身体が溶け合っていく。初めての航海に出る船のように、不確かでありながらも確かな方角を目指して。

 カナの吐息で耳元が熱い。彼の手が俺の内腿に触れたとき、思わず声が漏れる。

「あっ……」

「本当にいいのか?触ってもいい?」
 不安そうに尋ねるカナに、俺は頷いた。

 カナの指先が優しく俺の肌を這い、下腹部へと移動する。そのたびに身体が反応し、息が荒くなる。初めての感覚に戸惑いながらも、心地よさに身を委ねた。

「マリ……綺麗だ……」
 カナの囁きが耳を打つ。彼の柔かな唇が俺の胸元から腹部へとゆっくりと移動し、敏感な箇所に触れるたび、稲妻のような快感が駆け巡る。

「カナ……もっと……」
 思わず漏れた言葉に、彼は顔を上げ、俺を観察する。その瞳には欲望と同時に、深い愛情が宿っていた。

「もっと見つめて」
 彼はそう言って、再び俺の唇を求めてきた。

 二人の身体が完全に重なり合う。肌と肌の間に何の隔たりもなく、言葉を超えた対話が始まった。カナの手が俺の背中を優しく撫で、安心感に包まれる。

 触れ合うだけで心が満たされる。カナの腕の中で全ての不安が解け、波の音だけが二人を包み込む静寂の中、官能の波が押し寄せた。

「マリ……本当に綺麗だ」
 カナの囁きに、恥ずかしさと歓びが入り混じる。

 全てを脱ぎ捨てた二人の身体が月明かりに照らされる。カナの指先が俺の肩から胸元へ、そして腰へと滑り落ちていく。その感触だけで、喉から甘い声が溢れる。

「もっと、聞かせて欲しい……」
 カナが耳元で囁く。

 恥ずかしさに頬が熱くなるが、彼の指が敏感な部分に触れるたび、自然と声が出てしまう。カナの手が俺の奥深くまで感じさせ、未知の快感が全身を駆け巡る。

「カナ……もう……」

 限界を感じた俺を、カナは腕の中で強く抱きしめた。彼の温かな手が導くままに、俺は甘美な頂へと昇り詰める。

 絶頂の後、二人は汗ばんだ身体を寄せ合い、同じリズムで呼吸を重ねていた。カナも同様の高みへ導こうとする俺の手を、彼は優しく止めた。

「今日はいい。お前が気持ちよくなってくれたから……」

 その言葉に胸が熱くなる。カナは何も求めず、ただ俺を愛してくれている。

「でも……」
「焦らなくていい。今日は……ここまでにしよう。これからずっと一緒だろ?」

 その言葉に、俺は少し驚いた。

「マリは初めてなんだから。それに、俺……自分を止められる自信がない」

 抑えた声。まるで何かを封じ込めるような、苦しそうな表情だった。

「俺の中にあるのはさ、綺麗な感情だけじゃない。ずっと、マリを狂いそうなほど求めてた……でも、それを見せたら、お前を傷つけるかもしれない」

 胸の奥がじんわりと温かくなった。こんなにも思ってくれている。それなのに――。

 俺はそっと、彼の顔に触れた。

「……だったら、見せろよ。カナの全部を」

 彼の目が見開かれる。

「お前がどんな風に俺を思ってたのか……その気持ち、ちゃんと受け取りたい。怖くないよ」

 少し間を置いてから、俺は言った。

「俺のこと……お前の好きなようにしろよ。覚悟は、できてるから」

 その一言で、カナの瞳に変化が走った。これまで抑えていた感情の堤防が壊れたかのように、静かに揺れていた瞳に明確な意志が灯る。

「……本当に、言ったな?」
「うん。俺を、お前のものにして」

 次の瞬間、カナの掌が俺の頬を包み込んだ。その熱さに驚く間もなく、唇が重なる。今度は躊躇いも、遠慮もなかった。情熱的で欲望を全て俺にぶつけて来るその姿は、写真撮影時に見た捕食者の表情だった。

 舌が深く入り込み、俺の奥まで味わうように絡みつく。まるで魂まで飲み込まれそうな、今までとは違うキスに、思考は白く染まっていく。

 キスは熱く情熱に満ち、彼の指先は渇きを癒すかのように俺の肌をなぞる。

 耳元に落とされた囁きが背筋に電流を走らせた。

「マリ……壊してしまいそうなくらい、お前が欲しい」
「いいよ。壊しても、またお前が直してくれれば」

 カナの手のひらが俺の胸から下腹部へと滑り降りる。内側へ、さらに奥へ。写真を現像する時の繊細さと、波が岸を侵食するような確かさで。
 

「あっ……」

 彼の指が敏感な場所に触れ、声が漏れてしまう。でも、急に動きが止まった。

「待って」
 カナが顔を上げる。困惑した表情。

「どうした?」
「準備……何もしてない」

 その意味を理解するのに少し時間がかかった。ああ、そうか。俺も何も用意していない。今日、ここまでするつもりじゃなかったから。

 沈黙が続く……。でも、ここで止まりたくはない。

「どうする……?」
 俺が聞くと、カナは少し考えてから立ち上がる。
「ちょっと待ってて」

 裸のままキッチンへ向かう、彼の背中を見つめる。何だろ……?
 すぐに戻ってきた彼の手には、小さなガラス瓶が。

「これって……オリーブオイル?」
「うん。さっき料理で使ってたやつ」
 カナが少し恥ずかしそうに笑う。

「昔、映画で見たんだ。こういう時、こういう使い方もあるって」
「映画で?」
 思わず笑ってしまう。物知りなのが、なんかカナらしい。
「試してみる?」

 俺が頷くと、カナが瓶の蓋を開けた。オリーブの香りが部屋に広がっていく。食欲をそそる香りなのに、今はやけに官能的に感じた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

処理中です...