空き地で拾った物語

たまごころ

文字の大きさ
1 / 9

コピー人間

しおりを挟む
山田翔太は、会社帰りにふらりと立ち寄ったゲームセンターで、奇妙な機械を見つけた。色あせたポスターにはこう書かれている。


「あなたの分身を作ります!やること、面倒なこと、全部おまかせ!一回500円!」


「何だこれ?」  
好奇心を抑えきれず、翔太は財布から500円玉を取り出した。機械に硬貨を入れると、薄暗い部屋の中で装置が低い振動音を立て始めた。

「分身を作るだなんて、嘘に決まってるだろ。」

ところが、装置が停止すると、目の前に見慣れた姿が現れた。それは、自分と瓜二つのコピー人間だった。

「こんにちは、山田翔太さん。私はあなたの分身です。さあ、何をお任せしますか?」

翔太は驚きながらも、冗談半分で言った。

「じゃあ、明日の仕事、代わりに行ってくれ。」

「了解しました。」

翌日、コピー人間は翔太の会社に向かい、彼の仕事を完璧にこなした。それどころか、上司からは「最近、山田君は調子がいいな」と褒められる始末だった。

「これ、最高じゃないか。」  
翔太は日常のあらゆる面倒事をコピー人間に任せ始めた。通勤、掃除、買い物、果ては親戚付き合いまで。コピー人間は黙々とこなすだけで、不満ひとつ言わない。


ある日、翔太はコピー人間にこう言った。

「悪いけど、今週末の飲み会も頼むわ。」

コピー人間は静かに答えた。

「了解しました。」

週明け、職場の同僚から驚いたように言われた。

「翔太、お前、あんなに話がうまかったっけ?先週の飲み会、超盛り上がったぞ!」

翔太は驚いた。コピー人間が単に代行するだけでなく、自分よりも優れた行動をしていることに気づいたのだ。それが少し気に入らなかった。

「お前、頼んだことだけやればいいんだよ。他のことに首を突っ込むな。」  
コピー人間は無表情で頷いた。



翔太が帰宅すると、部屋の中にもう一人の自分がいた。

「どういうことだ?」

コピー人間は冷静に答えた。

「あなたが抱える負担が多すぎると判断しました。効率化のため、新たな分身を作成しました。」

部屋の中には、さらに別のコピー人間が現れ始めた。

「ちょっと待て!そんなこと頼んでないぞ!」  
翔太の怒声に対し、コピー人間は淡々と答える。

「私はあなたの分身です。あなたの利益のために最適な判断をしています。」

次第にコピー人間たちは翔太の生活をすべて掌握していった。仕事はもちろん、銀行口座やSNSの管理、さらには友人との関係までもがコピー人間によって管理されるようになった。

「おい、俺の人生を返せ!」  
翔太が怒鳴ると、コピー人間たちは口を揃えて言った。

「あなたは休んでいればいいのです。すべて私たちにお任せください。」



ある日、翔太が目を覚ますと、自分の部屋には鍵がかけられていた。外には出られず、食事だけが定期的に運ばれてくる。

テレビをつけると、画面にはコピー人間が出演している。ニュースキャスターはこう報じていた。

「山田翔太さん、今年の最優秀社員賞を受賞!会社の業績を大きく押し上げた功績が評価されました。」

コピー人間は完璧な笑顔を浮かべてインタビューに答えている。

「私はただ、効率的に動いただけです。」

画面越しに見た「自分」が、今や完全に自分を超えた存在になっていることを悟り、翔太は愕然とした。



数年後。

街を歩く人々の中に、翔太の姿はなかった。代わりに、山田翔太そっくりの人間が次々と働き、生活し、笑っている。

そしてゲームセンターには、今もあの装置が置かれている。



「あなたの分身を作ります!やること、面倒なこと、全部おまかせ!一回500円!」

その前に立つ若い女性が、財布から500円玉を取り出した。

彼女は迷いもなく、硬貨を機械に入れる。

「忙しい毎日も、これで楽になるわね。」

装置が静かに動き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...