異世界で追放された最弱賢者、実は古代の魔王でした~婚約破棄から始まる最強逆転ハーレム無双譚~

たまごころ

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第4話 眠る魔王の記憶

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死の森の最奥、ルディウスが造り上げた奈落城は、短期間で形を変え続けていた。  
黒曜石の壁、浮遊する魔法陣、そして闇を吸い上げる塔。  
そのすべてが、“魔王の記憶”と呼ばれる何かに導かれているかのようだった。

塔の最上階には、円形の祭壇がある。  
そこに立つルディウスは、両手を広げ、ゆっくりと魔力を放っていた。  
宙に浮かぶ八つの魔導石が回転し、空間がぐにゃりと歪む。

「……封印が近い。だが、まだ半分も解けていない」

彼の額には細かい汗がにじんでいた。  
その魔導石は、彼の中に眠る“古代魔王ルディアス”の記憶を呼び起こす鍵。  
ルディウスは、自身のもう一人の記憶を思い出そうとしていた。

リシェルが階段を上ってくる足音が響く。  
白銀の髪を揺らしながら、彼女は静かに声をかけた。

「また記憶の封印を探しているのですね? でも、そんなに焦る必要はないはず。今のままでもあなたはすでに強大です」

「違う。まだ思い出せない“本当の力”がある。  
俺はそれを知らねばならない。この世界の根底を壊すために」

「根底……?」

ルディウスは石の柱に描かれた文様を指でなぞり、低く呟いた。

「この世界は、神々が作った檻だ。  
魔族も人間も、剣や魔法すら、神々の遊戯として設計されたもの。  
俺がかつて“魔王”として封じられたのは、神の定めに逆らったからだ」

「……そんなこと、信じたくありません。世界そのものが嘘だなんて」

「信じたくなくても、それが真実だ」

彼の声には確信がこもっていた。  
儀式を続けるたび、記憶の断片が脳裏に流れ込んでくる。  
かつて自分が別の名前を持ち、神々と戦っていた時代の情景――

空を焦がす炎。  
人々が祈りながら死ぬ光景。  
その前で剣を構える一人の男、それが“勇者ルシオン”――今の勇者アレンと同じ顔をしていた。

「やはり……アレンは、あの時の転生者か」

リシェルが目を見開いた。

「え? あの勇者が……神々の使い?」

「ああ。神は何度も自分の代理をこの地に送り、世界を循環させている。  
勇者も聖女も、すべてその繰り返しのための駒だ」

「それでは、あなたと彼は何度も戦ってきたということ?」

「そうだ。俺は“滅び”を、奴は“救い”を。だが、どちらも神が決めた筋書き上の役だ。  
だからこそ、今度こそ、俺はこの世界を破壊する」

その瞳が暗く光る。  
リシェルは思わず一歩後ずさったが、次の瞬間、ルディウスの声が少しだけ柔らかくなった。

「……それでも、お前が傍にいるのは悪くない。  
こうして話しかけられる存在がいるというのは、案外心を保つものだ」

彼の言葉に、リシェルは恥ずかしそうに俯いた。  
胸に温かい何かが広がるのを感じる。  
この男は恐ろしいほど冷酷だが、どこか人間らしい寂しさを抱いていた。

静寂が流れる中、祭壇の中央で魔導石がひときわ強く光った。  
次の瞬間、眩い閃光がルディウスを包み込み、彼の意識が異空間へと飛ばされる。

——そこは、果てのない闇の世界だった。

闇の中に一本の階段だけが延々と続いている。  
足音が反響するたび、どこからともなく声がした。

「やっと来たか、ルディウス」

黒い霧の中から青年が現れる。  
彼の姿はルディウスそっくりだった。だが、その顔には邪悪ではない、どこか優しさを残した眼差しがある。

「お前は……誰だ?」

「記憶の一部。お前が“魔王”としての自分を捨てた時に切り離された意識。  
つまり、もう一人のお前自身だ」

「……そうか。では教えろ。俺の記憶の最後に何があった? なぜ、俺は封印された?」

もう一人のルディウスは微笑んだ。

「お前は神の前で叫んだ。『この世界は不完全だ。ならば私が作り直す』と。  
だが、その望みは拒まれ、代わりに“無能”という烙印を押され、転生させられた」

「……あの言葉の意味は、最初から神々の嘲笑だったのか」

「だが、忘れるな。お前にはまだ自由な選択が残っている。憎しみに囚われれば、また同じ輪廻を繰り返す。  
“力を正しく使う”ことでのみ、お前は真の魔王——いや、創造者となれる」

ルディウスは瞳を細める。

「俺に説教か。だが、お前の言う“正しさ”は誰が決める? 神々か? 勇者か? 世界の多数派か?  
俺は、それらすべてを壊した上で、新しい理を見つける」

二人の間に緊張が走り、空間が震え出す。  
記憶の世界が崩れゆく中、もう一人のルディウスが最後に囁いた。

「ならば、次の扉を開け。そこに真実の魔法が眠っている。  
お前が“神々に届く力”を手にする時が来たのだ」

強烈な光が走り、ルディウスの意識は現実へと引き戻された。

——魔導石が砕け、祭壇の床に古代文字が刻まれる。

リシェルが駆け寄る。

「ルディウス! 大丈夫!?」

彼はゆっくりと目を開けた。その瞳の色が、完全に変わっていた。  
昼の空のような青ではなく、深紅と黄金の混じる不思議な輝き。

「目覚めた。ようやく、眠っていた“真の魔法”を理解した」

「本当なの?」

「これから創る。世界を変える魔法だ。“原初魔術”——それは神の力すら凌ぐ根源の術」

リシェルが唇を震わせた。

「でも……そんなものを得たら、本当に人間が敵になってしまう」

ルディウスは短く笑う。

「もう十分に敵だろう? 俺を無能と呼び、追放した時点でな。  
だが、お前だけは違う。だから最後まで見届ければいい。この世界の終焉と再誕を」

そして彼は右手を掲げ、天を仰いだ。  
塔の天井が開き、重い雷雲が渦を巻く。  
稲妻の中心に、金色の紋章が現れた。

「これがその力だ。“神威干渉(ディレクティア)”。  
世界法則に命令し、書き換える魔術。ようやく取り戻した」

それを目にしたリシェルは、震えながら問う。

「本当に……この力で、何をするつもり?」

ルディウスの答えは、ただ一言だった。

「俺を追放した者たちに“真の意味の後悔”を教える」

その声が響いた瞬間、王都の上空にふたたび黒い月が現れた。  
空が割れ、遠くで人々の悲鳴が上がる。

ルディウスは微笑む。

「さあ、始めようか。神々の檻を砕く最初の鐘を」

魔王の記憶が完全に覚醒し、世界の均衡は再び揺らぎ始めた。

(続く)
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