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第6話 語られる過去
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ベリアルお父様と二人っきりになった。
少しだけ風に当たりたいからと魔界を出て、地上にある湖の畔を二人で歩く。
ちょうど夜半だからか、周囲には誰もいなかったが、お互いの羽は仕舞って人間に擬態した。
湖の中を泳ぐ魚が跳ねて、時折ピチャンと水が跳ねる音が聞える。
湖面には黄金の満月が映り、ゆらゆらと揺れていた。
「セラフィー」
私の隣を歩いていたベリアルお父様がゆっくりと口を開く。
まっすぐ前を向いたままの彼の横顔が見えるが、少しだけ逆光で見えづらい。
「――俺は生まれた頃からの生粋の悪魔じゃあない」
その言葉を聞いて、私ははっと息を呑んだ。
「もう何千年と前の話になるが、元々はお前と同じ存在だった」
「え――?」
私が驚きの声を上げようとも、お父様がこちらを見てくることはない。
「俺は……天界に仕える天使だった」
「お父様が……天使……」
ちょっとギャップが激しすぎて想像がつかない。
とはいえ、のらりくらりと適当な発言をしてくることもあるが、肝心なことをはぐらかしたりはあまりしない性質の男性なのだ。
だから、話していることは事実なのだろう。
「それも、結構位も低くない立ち位置の、な……」
「そんな高位の天使だったのに……お父様はどうして魔王様になってしまわれたのですか?」
すると、ぽつぽつと話しはじめた。
「お前も知っての通り、神が生み出した焔から生まれた創造物である天使しか、元々この世界には存在しなかった。基本的に性別は男の、な。だが、地上に人間が生まれて以来、彼らの誘惑に負けてしまって、人間に子を孕ませた罪で堕天使に身を堕とす者達や、悪魔と成り果ててしまう者達が現われるようになった」
お父様の横顔の陰りがより一層強くなったような気がした。
――地上に人間が生まれて以来、堕天使や悪魔が増えた。
それに、そんな風に話すお父様の言葉を耳にして、なんだか妙に胸がざわざわとざわついて仕方がない。
お父様は続ける。
「自身の創造物である天使を人間に奪われた挙げ句の果てに、堕落していく姿を見るのが悲しくなっていって、神はやがて天使を作らなくなった。そのうち、天使や悪魔達は、稀に生まれてくる女の同種族と交わることで子を成して繁殖する方法を見いだすようになった――ここまでは大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「そうか……お前はやっぱり聡いな、セラフィー」
そう言われるとなんだかむずがゆくて嬉しくてそわそわしてしまう。
「そんな中、堕天に身を滅ぼすことがないようにと、天界から地上への監視が続いた。そんなある日のことだ――」
お父様が過去の話をポツポツと語りはじめたのだった。
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