不幸な平凡メイドは、悪役令弟に溺愛される

おうぎまちこ(あきたこまち)

文字の大きさ
18 / 29
第2章 魔術研究所で令嬢と対決

第17話 人のうわさも三千六百五十日?

しおりを挟む



 わたしと、アーレス様と、女王陛下に剣の守護者様が、魔術研究所の正面玄関前のフロアにいた。
 本当はそこに、わたしのご主人様のテオドール様も一緒にいたのだけど――。

「テオドール様がいない!?」

 わたしが混乱していると、アーレス様が声をかけてきた。

「テオドール伯爵は、おそらくお兄様を見たからいなくなったのだと思いますわ……」

「え……?」

 わたしは、なぜ剣の守護者様を見たら、テオドール様がいなくなるのか、関連性が分からずに戸惑った。

「マリアさんがご一緒に男性は、ピストリークス伯爵よね?」

 女王陛下がわたしに声をかけてきた――。

「なんだ? あの黒い魔術師はピストリークス家のやつか?」

 剣の守護者様が乱暴な口調で、女王陛下に声をかけた。

(しかしながら、大好きだった剣の守護者様が乱暴な口調……夢が崩れていく――)

 だけど、それ以上にテオドール様のことの方が心を支配していた。

「そうよ……彼、あの祝い事の場にいたのよね……」

 彼女は口に手を当てて、考え込みはじめた――。

(祝い事の場――テオドール様のお父様が摘発されたという――? その場にテオドール様もいた――?)

 女王陛下が口を開いた。

「あの時、姫だった頃の私に声をかけてきたご令嬢が、確かテオドール伯爵のお姉さまのはず――」

「ああ、思い出した。姫のあんたに、無礼な口をきいてきた女だろ?」

「ええ、まあ、そうね……マリアさんも事件のことはご存じかしら?」

 女王陛下がわたしに声をかけてきた。

「はい、街の人たちが噂をしている程度の内容ですが……」

 アーレス様が話に入ってくる。

「あなた……アリアではなくマリアというの? まあ、どちらでも良いわ。その時の祝いの場で、テオドール伯爵の姉が、姫様時代の女王陛下に暴言を吐いたのですわ」

(姫様時代の女王陛下に暴言……)

「それで、お兄様と、お義姉様の元婚約者が、テオドール伯爵の姉に対して憤慨しましたの。ちなみに事件の全容が明らかになったのは、テオドール伯爵の姉が、女王陛下の元婚約者に恋をしてしまって、べらべら情報を漏洩してしまったからなのですけど……」

 女王陛下の元婚約者に恋、というアーレス様の発言。それを聞いた時に、女王陛下が苦笑していた。
 気にせずに、アーレス様は続ける。

「その場にいて、父と姉が連行される姿を見たテオドール伯爵は、大衆のいる場に出ることが出来なくなってしまったのです。おそらく、剣の守護者である私のお兄様の顔も見たくないのだと……」

(まだお若いテオドール様にとっては、とてもショックな出来事だったに違いないわ……)

 彼に想いを馳せると、わたしの胸は痛んだ――。

 剣の守護者様が、アーレス様に向かって話す。

「俺は、あの時、特段何もしていないが――」

 その時、その場に別の男性の声が聴こえた――。


「残念ながら、坊ちゃんが剣の守護者様を嫌いな理由って、それだけじゃないんですよね~~」

「ふえっ……!?」

 意味ありげな発言をして現れたのは――。

 朽ち葉色の髪と瞳をした、ピストリークス伯爵家の執事・オルガノさん、その人だったのでした――。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

処理中です...